ハズレだからといってがっかりすることはない。プロ野球で “ハズレ”が“当たり”を凌駕することが、ままある。

 たとえば昨年、トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を達成し、東京ヤクルトの14年ぶりのリーグ優勝に貢献した山田哲人。彼は6年前のドラフト1位だが、実は“ハズレのハズレ”である。

 

 

 最初にヤクルトが指名したのが早大の斎藤佑樹(北海道日ハム)。クジにはずれるや大学球界屈指の左腕である八戸大の塩見貴洋(東北楽天)に乗り替えた。だが、これも失敗。将来性を見込んで指名したのが大阪・履正社高の山田だった。

 

 プロ9年で通算1234安打を記録している巨人の坂本勇人も“ハズレ1位”である。

 

 06年の高校球界ナンバーワン内野手は愛知・名電で通算55本塁打の堂上直倫だった。父・堂上照は元中日のピッチャー。兄・堂上剛裕(現巨人)もドラフト1位で中日に入団していた。

 

 直倫は中日、巨人、阪神の3球団が競合し、抽選の結果、中日が交渉権を得た。大型内野手として期待されたが、プロでは伸び悩んでいる。

 

 翻って、坂本は2年目からショートのレギュラーポジションを獲得し、今では押しも押されもしない巨人の中心選手だ。

 

 古くは巨人・斎藤雅樹の例が思い出される。沢村賞3回、最多勝5回、最優秀防御率3回。

 82年のドラフトで巨人が1位指名したのは甲子園5大会連続出場を誇る早実のエース荒木大輔だった。しかし、当たりクジを引き当てたのはヤクルト。2回目に巨人が指名したのが市川口の斎藤だったのである。

 

 故障に見舞われながら通算39勝をあげた荒木の奮闘も光るが、通算180勝の斎藤に比べると影が薄い。

 

 15年ドラフトのハズレ1位はオコエ瑠偉(関東一・東北楽天)、小笠原慎之介(東海大相模・中日)、原樹里(東洋大学・東京ヤクルト)の3人。ハズレハズレ1位は上原健太(明治大学・北海道日ハム)。最後に笑うのは当たり組か、ハズレ組か……。

 

<この原稿は『週刊大衆』2015年11月16日号に掲載された原稿を一部再構成したものです>


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