現地時間30日、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねた「AFC U-23選手権」の決勝がカタール・ドーハで行われた。日本代表は韓国代表に3-2で勝利し、大会初優勝。日本は韓国に押し込まれ、前半20分に先制を許す。後半開始早々にも失点し、リードを広げられた。追いかける日本は早めの選手交代で打開を図る。22分に途中出場のFW浅野拓磨が決めて1点を返すと、直後にMF矢島慎也のゴールで追いついた。36分に浅野が決勝点を挙げ、逆転勝ちを収めた。リオ五輪には日本、韓国、イラクがアジア代表として出場する。

 

 決勝点アシストの中島、大会MVP(カタール・ドーハ)

U-23日本代表 3-2 U-23韓国代表

【得点】

[日] 浅野拓磨(67分、81分)、矢島慎也(68分)

[韓] クォン・チャンフン(20分)、ジン・ソングク(47分)

 

 苦しみながらも日本がアジア王者を掴み取った。大会を通じて、初めて先制を許す苦しい展開だった。それでも劣勢を跳ね返し、逞しさを見せつけた。

 

 日本はフィジカルの強い韓国に押し込まれ、何度もゴールを脅かされる。前半6分、12分とゴールネットを揺らされるが、いずれもオフサイドでノーゴールだった。しかし、20分に右サイドを攻め込まれ、クロスを上げられる。FWジン・ソングクが競って落としたところを、クォン・チャンフンがボレーシュート。DF岩波拓也の足に当ったボールに、GK櫛引政敏は反応できず、先制を許した。

 

 グループリーグ3試合と決勝トーナメントの2試合は、日本が先制点を挙げて勝ってきた。初めて先手を取られた。前半はそのままいいところがなく無得点で終了。後半頭から手倉森誠監督はFWオナイウ阿道に代えて、MF原川力を投入する。なかなかボールをキープできない中盤に厚みを増やした。

 

 しかし、後半開始早々に点を奪ったのは韓国だった。2分、右サイドからのセンタリングをジン・ソングクがペナルティーエリア内で受ける。フリーのジン・ソングクは反転して左足でシュートを放ち、ゴールを決めた。日本は2点のビハインドを追いかける展開となった。

 

「韓国に2点とられて、目を覚ませてもらった」と手倉森監督。状況を打破しようと、日本ベンチが動く。15分に浅野をピッチに送り込んだ。矢島が「監督から攻める意志が伝わってきた」と語るように、今大会選手起用が当たっている指揮官の意図は明確だった。スピードのあるストライカーの起用は、チームに推進力を与える。

 

 すると22分、日本は高い位置でFW久保裕也がボールを奪う。MF矢島が韓国DFの裏にスルーパスを送った。抜け出した浅野は、相手GKの肩口を襲うシュートを放つ。ボールはゴール右に吸い込まれた。昨季のJ1リーグで8得点を挙げ、その全ゴールが途中出場という浅野。“スーパーサブ”が見事に仕事を遂行した。

 

 1点を返し、勢いに乗る日本。直後の23分、左サイドを突破したDF山中亮輔がクロスを上げる。ニアサイドで浅野がつぶれたところの裏に矢島が走り込んだ。フリーの矢島は頭で合わせ、ゴール左に突き刺した。日本が韓国に追いついた。

 

 日本と何度も熱戦を繰り広げてきた宿敵・韓国も黙っていない。25分、ジン・ソングクがペナルティーエリアの外から、強烈なシュートを打ってきた。ボールはゴール右を襲ったが、ここはGK櫛引が横っ跳びで弾き出した。日本の守護神が韓国に流れを渡さない。

 

 すると36分、カウンターから久保が浅野へパスを出すが、韓国DFに阻まれる。だが、そのこぼれ球をMF中島翔哉が拾い、ダイレクトでDFの裏へ浮き球のパスを狙う。浅野は体をうまく入れ替えて抜け出すと、GKと1対1の状況となった。浅野は冷静にゴール右に流し込み、ついに逆転に成功した。浅野はベンチにいるチームメイトの元へと駆け寄って、喜んだ。今大会何度も見られた光景である。チーム一丸となっている様子を窺わせた。

 

 リードを奪った日本は、韓国のパワープレーを耐え凌ぎ、3-2で逃げ切った。初戦は苦戦しがらも、グループリーグを3連勝で首位通過。準々決勝、準決勝の接戦をモノにし、リオ五輪行きの切符を掴んだ。最後は宿敵相手に劇的な逆転勝ちで、締めくくった。

 

 手倉森監督が「リベンジの大会」と語るように、今回のU-23世代はアジアで結果を残せていなかった。キャプテンを務めるDF遠藤航は「アジアで勝っていない世代。“リオにいけるのか”という不安は皆さん、持たれていたと思う。その悔しさを糧に頑張ってきた」と振り返る。

 

 6試合に22人が出場し、15ゴール中10人が得点を奪った。選手たちも口を揃えて、チーム一丸となっての勝利だったと胸を張った。総力戦で勝ち取ったアジア王者。リオ五輪に向けて、弾みをつける勲章となった。

 

(文/杉浦泰介)