今年のカープをどのように位置づけるか。一言でいえば、転換期にあると言える。

 

 端的な例は、前田健太の不在である。毎年確実に2ケタ勝利を挙げてきたエースが抜けたのだ。否応なしに、投手陣は再編を迫られている。

 

 その中で、多くの人がエース格に、と期待するのが大瀬良大地である。ただ、キャンプ序盤は、フォームの修正中ということで、ブルペンに入らず、フォーム作りに取り組んでいる。

 

 慌てることはない、のかもしれない。しかし、大瀬良が確実に2ケタ勝てる先発投手に成長できるかどうかは、いま転換点にあるチームがどっちに転ぶか(クライマックスシリーズに進めるか、下位に沈むか)を、大きく左右するカギになっていることは間違いない。しかも、今季だけでなく、これから数年のカープの浮沈を握るカギだといえる。

 

 もちろん、フォーム作りが完成することを祈るが、もう2月も10日をすぎましたからね。

 

 野手のほうでも、キーマンが転換点に立っている。丸佳浩である。

 昨年、打率が落ち込んだことを受けて、大胆な打撃改造に乗り出した。

 

 3番・丸が固定できるかどうかで、打線の力はまるで変ってくるはずだ。3割2分、20本塁打くらいの成績を残してくれれば、上位進出も十分期待できる。しかし、丸の成績が昨季のような状態だと、再び得点力不足に悩まされることになるだろう。

 

 これまで、すり足だった右足のステップを上げるようにして、バットの構えも変え、いわば背水の陣である。

 

 チームが転換点を迎えている今季、その投打のキーマンがそれぞれに選手としての転換点に立っている、というのが今年のカープの特徴と言える。

 

 では、2人の取り組みは成功するのか。こればかりはキャンプだけでは判断がつかない。開幕してからの楽しみ、と言っておこう。

 

 大瀬良や丸だけではない。

 

 例えば、野村祐輔も背水の陣で迎えるシーズンと言っていい。

 彼はオフに、往年の名投手、金田正一や江夏豊、東尾修、江川卓らの動画を参考に、フォーム作りに取り組んだという(「デイリースポーツOnline」2月5日)。

 

 いずれも足をあげてからテイクバックに行くまでに、ある種の脱力と、はねるようなリズム感があった投手だ。そういう往年の投法と、たとえば現在のダルビッシュ有や大谷翔平のフォームでは(あるいは田中将大や前田健太と言ってもよいが)、微妙に変わってきている。とはいえ、かつての大投手のフォームが魅力的であったことも事実だ。

 

 昨年5勝に終わった野村の、新たな挑戦が成功すれば、それこそチームは去年の東京ヤクルトのように躍進できるかもしれない。

 

 いずれにせよ、転換点の選手たちに注目したいシーズンである。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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