いわゆる「点字ブロック」(正式名称は視覚障害者誘導用ブロック)には「誘導ブロック」と「警告ブロック」の2種類がある。恥ずかしながら過日、ブラインドサッカー日本代表の落合啓士との対談で初めて、そのことを知った。

 

 前者は進行方向を示すブロックで、ひとつのブロックに4本の突起状の線が入っている。視覚障害者は足裏や白杖でこれを確認しながら歩く。線の先が進行方向だ。

 

 一方、後者は主に危険箇所を示すブロックで、階段や横断歩道の前、あるいは駅のホームの端に設置されている。視覚障害者にとって、とりわけ危険なのがプラットホームだ。

 

 ところが落合によると、ホーム内の点字ブロックの上に荷物を置く乗降客が後を絶たないという。「駅は危険ですから、僕たちだって注意して歩いている。にもかかわらず、つまずいたことがある。電車待ちしていた人が、そこに荷物を置いていたんです。これだけは気を付けてもらいたい」

 

 最近は“歩きスマホ”の乗降客が増えてきた。「おそらく周りを見ていないんでしょうね。もう、ぶつかったりなんかしょっちゅうですよ」

 

 4年後、東京にオリンピックとパラリンピックがやってくる。政府関係筋は2020年の訪日外国人旅行者を3000万人と見込む。視覚障害者の来日も、史上最多が予想されている。「おもてなし」をうたい文句にオリンピック・パラリンピックの招致に成功した都市・国がこれで大丈夫かという気にもなる。自戒を込めての懸念だ。もちろん目の不自由な方は、国内にもたくさんいる。

 

 手許に社会福祉法人日本盲人会連合が2011年2月に実施した転落事故に関するアンケートの調査結果がある。252人から回答を得ているのだが、それを見て驚いた。約37%の92人がホームからの転落を経験しているのだ。東京の、そして日本の駅は大丈夫か。

 

 では、どうすれば転落事故は防げるのか。アンケートでは約90%の228人が「ホーム柵の設置」を挙げている。

 

 近年、ホームドアを設置する駅が増えてきたとはいえ、まだまだ少数だ。国土交通省によると全国で621駅(15年9月末時点)にしか設置されていない。落合は言う。「都内では地下鉄銀座線、日比谷線などは僕らにとって厳しい環境です」。調べてみるとプラットホームのスペースが狭いせいか、1駅も設置されていなかった。ハード、ソフト両面でのバリアフリー化推進のための知恵が求められている。

 

<この原稿は16年2月10日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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