ボクシングのダブル世界タイトルマッチが4日、島津アリーナ京都で行われた。WBC世界バンタム級タイトルマッチは王者の山中慎介(帝拳)が挑戦者の同級3位リボリオ・ソリス(ベネズエラ)を判定で下し、10度目の防衛に成功した。山中は通算成績27戦25勝(17KO)2分。WBC世界ライトフライ級は王者の木村悠(帝拳)が同級5位のガニガン・ロペス(メキシコ)に判定で敗れ、初防衛に失敗した。木村の通算戦績は22戦18勝(3KO)3敗1分けとなった。

 

 “神の左”は不発も原点の地でV10を達成した。

 

 ボクシング人生をスタートさせた京都で節目の防衛戦。山中に挑むのは前WBA世界スーパーフライ級王者のソリスだ。2013年には河野公平、亀田大毅といった日本人を連破した経歴を持つ。

 

 決戦のゴングが鳴らされると、山中は自らの距離感を保ちながらソリスと対峙した。1ラウンド、残り30秒を切ったところで、山中のカウンターの右が炸裂する。いきなりダウンを奪った。

 

 2ラウンドでは開始10秒、ソリスが長いリーチを生かした右ストレートで飛び込んできた。山中は冷静に右のフックで押し倒すように殴って、キャンバスに手をつかせた。2度目のダウン。王者のKOでのV10を予感させた。

 

 しかし、3ラウンドにまさかの展開が訪れる。“神の左”を恐れず距離を詰めてくるソリス。43秒、山中は右ストレートを食らってダウンを許す。猛獣の如く襲いかかるソリス。山中はロープ際に追い込まれた。ラッシュを仕掛けるソリスに山中も応戦しながら、窮地を脱した。

 

 互いに距離をとり、試合が落ち着いたかと思われた2分23秒。山中の左の打ち終わりを狙いすました右ストレートが山中のアゴをヒットした。山中は尻もちをついてダウンを喫した。すぐに立ち上がり、カウント8で戦線に復帰する。残り10秒を知らせる拍子木が鳴り、ソリスが再びラッシュを仕掛けたが、ここはラウンド終了のゴングに救われた。

 

 山中は楽勝ムードから一転、KO負けの窮地に追い込まれた。それでも大きくペースを崩さず手数を当てていく。ソリスの勢いを徐々に刈り取っていくと、自らはペースを上げていく。4ラウンド終了時点での採点は37-36と僅差ではあるものの、3人のジャッジが王者を支持した。

 

 中盤の5~8ラウンドは山中がリズムを取り戻す。8ラウンドを終えると公開採点は3者が77-72。王者が挑戦者とのポイント差を広げた。9ラウンドの序盤にもクリーンヒットではないものの、左を当ててダウンを奪った。その後も危なげなく時計の針を進めていった。最終12ラウンドには左ストレートがソリスの顔面をとらえ、血が噴き出した。KO勝利とはならなかったが、攻め続けて最後のゴングを聞いた。

 

 終わってみれば判定で3-0の完勝だった。ボクシングを始めた高校(南京都)時代に過ごした京都の地。沙也乃夫人の誕生日という記念日を白星で飾った。本人は「いいところを見せようと空回りした」と反省した。

 

 これで長谷川穂積に並ぶ日本歴代3位タイの2ケタ防衛を達成。上には13回の具志堅用高、11回の内山高志の2人だけだ。バンタム級の天下統一に向け、山中は無敗街道をひた走る。

 

(文/杉浦泰介)