“チームの勝利のために貢献したベストプレー”に贈られる「ジョージア魂」賞の年間大賞表彰式が12日、都内ホテルで開催された。この賞は缶コーヒーブランド「ジョージア」がプロ野球12球団と提携、さらにNPBパートナー契約を締結して昨季より創設された。シーズン中、12回に渡ってファン投票で選ばれた「ジョージア魂」賞受賞プレーの中から、さらにファンの支持を集めたものが年間大賞に輝いた。栄えある今年度の年間大賞は田中将大投手(東北楽天)が9月10日(対北海道日本ハム戦)の斎藤佑樹投手とのライバル対決に勝利したピッチングに決まった。また当HP編集長・二宮清純ら6名の選考委員によって「ジョージア魂」賞選考委員特別賞も決まり、こちらも楽天の嶋基宏捕手が4月12日(対千葉ロッテ戦)に放った被災地を勇気づける勝ち越し3ランが選ばれた。
(写真:年間大賞の田中(前列中央)、選考委員特別賞の嶋(前列右)ら)
 今季、沢村賞をはじめとする投手部門のタイトルを総ナメした右腕にまた新たな賞が加わった。年間大賞に輝いた田中のピッチングは斎藤佑樹投手とのプロ初の投げ合いでみせたもの。初回、2回を三者凡退に抑えると、中盤以降は走者を背負いながらもタイムリーを許さなかった。完封こそ逃したものの12奪三振の完投勝利。チームの連敗を止めただけでなく、中継ぎ陣を休ませる意味でも価値ある1勝だった。「プロの先輩として死ぬ気で行った」という田中は「野球ファンが望んでいた試合が、ファンの人の記憶に残る試合になって良かった」と喜びを語った。

 選考委員特別賞に選ばれたのは、その田中とバッテリーを組んだ嶋だ。対象プレーは4月12日の開幕戦の決勝ホームラン。1−1の同点で迎えた7回、2死1、3塁で楽天ファンが待つレフトスタンドに叩き込んだ。嶋といえば開幕前に行われた東日本大震災の復興支援試合での選手会長としてのスピーチも印象的だった。
「見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を」
 まさに野球選手の「底力」をみせた一発を選考委員の高木豊氏は「有言実行のプレーでチームを引っ張った嶋のハートの強さに感動した」と絶賛した。激動のシーズンを終え、嶋は「これは僕ひとりの賞ではない。東北の皆さんに賞をいただいたことを伝えたい」と被災地へ思いを寄せていた。

 また表彰式には中田翔(日本ハム、第2回)、松井稼頭央(楽天、第6回)、阿部慎之助(巨人、第7回)、高橋由伸(巨人、第8回)の各回の受賞者も出席。ウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト、第3回)、岩瀬仁紀(中日、第5回)、西口文也(埼玉西武、第10回)、内川聖一(福岡ソフトバンク、第12回)からはビデオレターが寄せられた。5月3日に右打ちで勝ち越し三塁打を放って受賞した中田は「自主トレ、キャンプからやってきたことが試合で出てうれしかった」と振り返った。選考委員には来季から日本ハムの監督に就任する栗山英樹氏がおり、「中田には試合で負けたら自分のせいだと思うくらいの選手になってほしい」と熱いエールを送られていた。

「ジョージア魂」賞は来季も継続して実施される予定で、日本コカ・コーラ株式会社マーケティング&ニュービジネス、コーヒー・ジュース・チルドカテゴリーの篠原幸治副社長は「震災もあり、人々の絆がクローズアップされ、チームのため、ファンのために熱いプレーが多く見られた」と挨拶した。この賞は、決して派手ではなくともチームに尽くしたプレーをファンとともに評価するところに意義がある。選考委員で来季からは横浜のヘッドコーチに就任する高木豊氏は、「選手からも“どうやったら賞に選ばれるのか”と言われるようになってきた。ただ、(受賞プレーが出る)球団に偏りがある。12球団がしのぎを削って、賞を獲るプレーが見たい」と今後に期待を寄せた。

 なお、「ジョージア ベースボールパーク」のサイトではオフシーズンも、二宮清純の書き下ろしコラム「あのプレーにアンコール!」のコーナーを更新中。年間大賞や選考委員特別賞の受賞プレーはもちろん、惜しくも選ばれなかったノミネートプレーの中から二宮が印象に残ったものをコラムにして掲載する。