160327hand

(写真:表彰式後に優勝を喜ぶ北國銀行のメンバー)

 27日、東京・駒沢体育館で「ANA CUP 第40回日本ハンドボールリーグプレーオフ」の男女決勝が行われた。女子は北國銀行ハニービー(レギュラーシーズン1位)がオムロンピンディーズ(同2位)を31-17で下し、連覇を達成。北國銀行は全日本社会人選手権、国民体育大会、日本選手権と合わせてシーズン4冠を成し遂げた。男子はレギュラーシーズン1位の大崎電気オーソルが、同2位のトヨタ車体ブレイヴキングスと対戦。試合は大崎電気が25-24で逃げ切り、5年ぶり3度目の優勝を決めた。プレーオフ(PO)の最高殊勲賞(MVP)には男女ともに決勝で好セーブを連発した木村昌丈(大崎電気)、寺田三友紀(北國銀行)と優勝チームのGKが初受賞した。大崎電気と北國銀行は4月の東アジアクラブ選手権(韓国・ソウル)に出場する。

 

 無敗で連覇。他を寄せ付けぬ圧勝

 

 今シーズン無敗の北國銀行は、プレーオフでも他を圧倒。準決勝をダブルスコアで突破すると、決勝も14点差をつけて勝利した。

 

 まずは開始46秒に北國銀行が先制する。決めたのは日本代表の塩田沙代だ。「ここ(PO)まできたら思い切りやるだけ。最初から飛ばして行こうと思っていました」と塩田。オムロンのシュートがポストに当たると、こぼれ球を拾った寺田からカウンターを仕掛ける。自陣からボールを運んだ塩田は、相手の陣形が整わないうちにミドルシュートを放った。これがゴール左に突き刺さり、北國銀行が幸先よくリードを奪った。

 

 一度は同点に追いつかれたが、4分26秒に横嶋かおるが右サイドから中へと切り込む。左に展開すると、八十島智美は大外へパス。フリーでボールを受けた河田智美が絶妙なループシュートを投じる。緩やかな軌道で弧を描き、相手GKを嘲笑うかのようにネットに吸い込まれた。

 

160327hand2

(写真:攻撃陣をリードした横嶋姉妹<左から姉のかおる、妹の彩>)

 再び勝ち越すと、横嶋かおるが横嶋彩のパスから連続得点。日本代表の横嶋姉妹のセンターラインでリードを広げると、八十島が右サイドからゴールを決める。中外と多彩な攻めで相手に的を絞らせない。守っては塩田や、高卒3年目の永田美香を中心に体を張ったディフェンス。GK寺田のセーブでゴールを許さない。前半はコートプレーヤー7人が得点を決めた北國銀行が、17-9と8点リードして終える。

 

 後半に入っても北國銀行が優位に試合を進めていく。1分17秒に横嶋彩が個人技で得点を奪う。巧みなステップワークで相手をかわすと、ゴール右へジャンプシュートを決めた。2分10秒には7mフリースローも着実に決め、19-9と後半の立ち上がりに10点差をつけた。ベンチ入り選手を余すことなく起用しながらも、得点をコンスタントに重ねた。守ってはレギュラーシーズン3冠女王(得点王、フィールド得点賞、7mスロー得点賞)に輝いたオムロンの吉田起子に5点をとられたが、3点は7mスロー。その他の選手も含め流れの中では多くの仕事をさせなかった。

 

 終わってみれば31得点の圧勝。守っては前半を9点、後半を8点と失点を1ケタずつに抑えた。荷川取義浩監督が「ディフェンスの安定」を勝因に挙げると、キャプテンで守護神の寺田も「守って走るゲームが60分間できた」と胸を張った。高卒3年目で身長180センチの永田を起用し、守りに高さを加えたのが功を奏した。寺田は「上からのシュートを守ってくれた」と21歳の後輩に感謝した。

 

160327hand3

(写真:4冠を支えた鉄壁の守備陣<左から永田、塩田、寺田>)

 POのMVPに輝いた寺田は「(MVPを)獲れたのはディフェンス陣が頑張ってくれたから。(シュートコースを)防いでくれたから、私の場所は明確だった」とチームメイトを称えた。中でも活躍が光ったのは塩田だ。「チームの中心となって体を張ってディフェンスをしてくれた」と荷川取監督。その信頼の高さはスタートから後半10分近くまでの約40分間休まずコートに立ち続けたことからも見て取れる。

 

「ディフェンスで体格だけではなく運動量で守れるのが自分の武器」。塩田本人の言葉通り、献身的なプレーが目立った。リーグ戦では2年連続ベストディフェンダーにも選ばれ、チームメイトからの信頼も厚い。終始、声を出して守備陣を統率。寺田も「若い永田のフォローもしっかりしてくれた」と頭を下げた。

 

 北國銀行は今シーズン、リーグ戦全勝。社会人選手権、国体、日本選手権を含め、26試合中1試合も落とさなかった。長年、チームの指揮を執る荷川取監督は、この日の出来を「120点」と称えながらも「まだまだ到達点ではない。勝ち続けるチームにしたい」と口にする。キャプテンの寺田も「ここが終わりではなくスタート」と力強く語った。

 

 チームの強さを荷川取監督は「誰1人おごることなく、一生懸命練習をして一生懸命ハンドボールをする真面目さ」と評する。個々の真摯な姿勢がチーム力を支える。攻撃の中心であるベテランの横嶋かおるは「下の子もコートで強くプレーしてくれるので、上も負けていられない。それがチームのレベルアップにつながっていると思う」と言う。目指すのは、誰がコートに立っても質が落ちない全員ハンド。最強の称号を得てもなお進化の歩みを止めるつもりはない。

 

(文・写真/杉浦泰介)