元日、第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が東京・国立競技場で行なわれ、FC東京が京都サンガF.C.を4−2で下し、初優勝を収めた。先制されたFC東京は直後に追いつくと、前半36分、DF森重真人のゴールで逆転。さらにFWルーカスの2ゴールでリードを広げた。この結果、FC東京がクラブ史上初のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得した。

  森重、日本一導くミドル弾!(国立)
京都サンガF.C. 2−4 FC東京
【得点】
[京都] 中山博貴(13分)、久保裕也(71分)
[F東] 今野泰幸(15分)、森重真人(36分)、ルーカス(42分、66分)
 2012シーズンからJ1復帰を決めているFC東京が新年を最高のかたちでスタートさせた。勝因は2011シーズンのJ2リーグ戦で見せた堅守、そして圧倒的な攻撃力だ。怒涛のゴールラッシュで京都を圧倒した。

 スイッチが入ったのは前半13分に先制されてからだ。「いきなりの失点で負けがよぎった」。キャプテンマークを巻いたDF今野泰幸が振り返ったように、立ち上がりは決してよくなかった。流れを取り戻したのが、直後の今野の同点弾だった。

 失点のわずか2分後、左のショートコーナーからのMF石川直宏のクロスに、ファーサイドでヘディングシュート。「京都は大きな選手がいないし、マークがあいまいになることはスカウティング済みだった」。冷静なポジショニングが光り、ボールはゴールネットに吸い込まれた。

 早々に追いついたFC東京はサイドチェンジなどでピッチを大きく使い、サイド攻撃から活路を見出していく。すると36分、逆転ゴールが生まれる。ゴールから約30mの位置で得たFK。キッカーの石川が右にずらしたボールに森重が右足を振り抜く。ブレ球のミドルシュートがゴールネットに突き刺さった。その6分後にはルーカスがDFラインの裏に抜けてゴールを決め、3−1とリードして前半を折り返す。

 後半になってもFC東京の勢いは止まらない。サイドを使ったカウンター攻撃から何度も京都ゴールを脅かす。後半21分のダメ押しゴールは、そのカウンターから。自陣左サイドでボールを奪い、DF椋原健太が抜け出して低いアーリークロスを入れる。これに反応したルーカスが相手DFをひとりかわし、前に出ていたGKの位置を見てゴールに流し込んだ。

 失点はしたものの、昨季J2最少失点を誇った守りも粘り強かった。後半26分には京都の若きFW久保裕也に1点を返され、相手に押し込まれる時間帯が長くなる。しかし、GK権田修一がFKをファインセーブで防ぐなど、更なる失点を許さない。ひとたびボールを奪えば、鋭いカウンターを見せ、京都を勢いに乗せなかった。

 キャプテンとして1年間、チームを引っ張ってきた今野はJ2でのシーズンを振り返り、「チーム力」の向上を感じている。
「チームの輪を大事にするようになった。今までは個人、個人でただ頑張っているだけだった。今は組織的になったし、悪い時にもみんなで話し合いながら変えていけるようになった」
 この試合も先制を許しながら素早く立て直し、京都に主導権を渡さなかった。

 大熊清監督は「選手も“自分たちのサッカーがJ1で本当に通用するのかは分からない”という言葉があって、どん底を経験したところから謙虚さが良い意味で蘇ってきた」とJ2での経験がチームを良い方向に変えたと明かす。
「(天皇杯で)J1相手にこれだけ勝ち続けたということは、当初の目標であった“強くなってJ1に戻る”ということが証明できたと思う」
 1年でのJ1復帰、そして天皇杯制覇。だが、すでに大熊監督の来季の続投はない。試合後に涙を見せた指揮官は優勝会見で選手たちにエールを送った。
「この結果については、カップ戦だとかJ2同士の戦いだとか色々なことを言われるかもしれないが、来年(J1)リーグで活躍していることを心から願っているし、天皇杯を目指すことを願っている。このチームには自分が見た選手が多く、彼らをアジアに連れていきたいと思っていたので、それを達成させてくれたことを感謝している」

 来季は、監督交代に加え、今野の移籍なども取りざたされ、チームが変化していく中での戦いが求められる。それでも今季、J2から1年で優勝を果たした柏レイソル同様、天皇杯でのパフォーマンスはFC東京の実力がJ1相手でも通用することを示した。降格の悔し涙から1年。FC東京が「強さ」と「謙虚さ」を持ってJ1、そしてアジアの舞台に挑む。

 INAC神戸、無敗で2冠達成! 〜全日本女子サッカー選手権〜

 天皇杯決勝に先立ち、同競技場では全日本女子サッカー選手権大会決勝も行われた。なでしこリーグを無敗で制したINAC神戸が、新潟相手に3対0の快勝。2年連続2度目の優勝を収めた。INAC神戸は今季公式戦を無敗で終える快挙を達成した。

  なでしこ高瀬、田中が存在感(国立)
INAC神戸レオネッサ 3−0 アルビレックス新潟レディース
【得点】
[INAC] 南山千明(44分)、高瀬愛実(51分)、田中明日菜(70分)