6日、競泳のリオデジャネイロ五輪日本代表選考会を兼ねた「第92回日本選手権水泳競技大会」3日目が東京辰巳国際水泳場で行われた。男子200メートル自由形決勝は萩野公介(東洋大)が1分45秒50で4連覇を達成。派遣標準記録(1分46秒10)を突破し、400メートル個人メドレーに続き五輪代表入りを決めた。また萩野と2位・松田丈志(セガサミー)、3位・江原騎士(自衛隊)、4位・小堀勇氣(ミズノ)の4人の合計タイムが男子800メートルフリーリレーの派遣標準記録(7分11秒88)をクリアしたため、同種目でのリオ行きの切符を手にした。女子100メートル平泳ぎ決勝は渡部香生子(JSS立石)が1分6秒57で3連覇を達成。0秒15差で2位の鈴木聡美(ミキハウス)と共に派遣標準記録(1分6秒87)を突破し、五輪代表入りした。

 

 男子100メートル背泳ぎは、優勝した入江陵介(イトマン東進)、2位の長谷川純矢(ミキハウス)が揃って五輪代表入り。女子200メートル自由形決勝は池江璃花子(ルネサンス亀戸)が1分57秒39の高校新で、100メートルバタフライに続く2冠を成し遂げた。池江は200メートル自由形の派遣標準記録(1分56秒82)には届かなかったが、2位・五十嵐千尋(日本体育大)、3位・持田早智(ルネサンス幕張)、4位・青木智美(ATSC.YW)と800メートルリレーでの代表入りを果たした。

 

 1レースでW代表取り

 

 萩野が男子200メートル自由形を制し、2つ目のタイトルを獲得した。この種目は800メートルフリーリレー代表選考も兼ねており、一気に2種目での代表入りも決めた。

 

 スタート前、萩野は自らの身体を何度も叩いた。胸には赤い手形がくっきりついており、気合十分と感じさせた。予選、準決勝とタイムを上げて、トップ通過を果たした。第4レーンで号砲を待った。

 

 勢い良く水面に飛び込むと、熾烈な先頭争いを演じた。江原、松田らを引き連れて、50メートルのターン。24秒42は自身の日本記録を0秒29上回るペースで泳いだ。ここから独泳状態を築くかと思われたが、江原が食らいつく。

 

 2日前、江原は萩野不在の400メートル自由形を制しながら、派遣標準に届かず悔しい思いをしていた。そのリベンジに燃える江原が100メートルのターンでは萩野を追い抜く。依然として日本記録を更新するペースでレースは進んだ。

 

 150メートルのターンは江原が先頭で折り返す。後半型の萩野は、ここから勝負をかける。ドルフィンキックで江原をかわすと、身体半分リードを奪う。最後のスパートでもう身体半分差を広げて、ゴール板にタッチした。1分45秒50でフィニッシュし、4年連続の“定位置”に立った。狙っていた日本記録には届かなかったが、「尻上がりに身体の調子が良くなっている」と手応えを窺わせる。8日に控える200メートル個人メドレーで、自己ベスト更新を目指す。

 

 萩野が選ばれた800メートルフリーリレーのメンバーには、五輪4大会連続出場となる松田、初出場の江原、2大会連続の小堀が入った。4人の合計タイムは7分6秒54。派遣標準記録を5秒以上クリアした。エース格の萩野は「4人で世界と勝負できることが証明できたと思う」と力強く語った。

 

 日本は4年前のロンドン五輪、0秒10の差で決勝進出を逃した。その時のメンバーである小堀は「今回はメダルが狙える位置にいる」と手応えを感じたようだ。ロンドン五輪で銅メダルを獲得した中国のタイムは7分6秒30だ。個々のタイムをここからさらに削り出せば、その可能性は十分ある。

 

 復活のメダリスト

 

 3年ぶりの優勝はならなかったが、鈴木に笑顔が戻った。プールから上がると、両手で力強いガッツポーズを作り、声を上げた。女子100メートル平泳ぎで、2大会連続の五輪出場を決めた。

 

 ロンドン五輪では同種目の銅メダリスト。鈴木は200メートルで銀メダルを獲得するなど、一躍競泳界のヒロインへと躍り出た。しかし以降は不調が続いた。レース後、涙する場面も度々見られた。100メートル平泳ぎで、昨年は決勝にすら残れなかった。

 

 これまでメダリストという重圧が、水面での推進力すらも奪ったかのように泳ぎの伸びを欠いていた。その間、平泳ぎは6学年下の渡部がリードしていた。今井月(本巣SS)ら10代の選手の台頭もあり「世代交代」と囁かれることもあった。

 

 準決勝を2位で通過した鈴木。迎えた決勝は鬱憤を晴らすような泳ぎを見せた。のびやかなストロークで先頭に躍り出た。50メートルのターンは31秒08と渡部が持つ日本記録より0秒33速いペースで折り返した。

 

 ラスト50メートルの直線で、鈴木はペースを落としたが粘って2番手を死守した。渡部には0秒15及ばなかったが、派遣標準記録は0秒15秒クリアした。鈴木は「本当にホッとしています」と安堵しつつも、「リオにつなげられるように200メートルもチャレンジしていきたい」と次を見据える。8日には200メートル平泳ぎの予選を控えている。彼女は連覇中の渡部や日本記録保持者の金藤理絵(Jaked)らに挑み、4度目(2011年は中止のため、国際大会代表選考会を実施)の優勝を狙う。

 

 3日目の決勝結果は次の通り。

 

<男子100メートル背泳ぎ・決勝>

1位 入江陵介(イトマン東進) 53秒26

2位 長谷川純矢(ミキハウス) 53秒49

3位 古賀淳也(第一三共) 53秒57

 

<男子200メートル自由形・決勝>

1位 萩野公介(東洋大) 1分45秒50

2位 松田丈志(セガサミー) 1分46秒88

3位 江原騎士(自衛隊) 1分46秒89

4位 小堀勇氣(ミズノ) 1分47秒27

 

<女子100メートル平泳ぎ・決勝>

1位 渡部香生子(JSS立石) 1分6秒57

2位 鈴木聡美(ミキハウス) 1分6秒72

3位 金藤理絵(Jaked) 1分6秒79

 

<女子200メートル自由形・決勝>

1位 池江璃花子(ルネサンス亀戸) 1分57秒39

2位 五十嵐千尋(日本体育大) 1分58秒06

3位 持田早智(ルネサンス幕張) 1分58秒58

4位 青木智美(ATSC.YW) 1分58秒80

 

※選手名の太字は五輪代表に内定。萩野、松田、江原、小堀、池江、五十嵐、持田、青木は800メートルリレーの代表。

 

(文/杉浦泰介)