ドジャースの前田健太が敵地ペトコ・パークでのパドレス戦に初先発し、初勝利をあげた。

 

 6回5安打無失点4奪三振。四死球はひとつも与えなかった。球数も84球でマウンドを降りており、疲れもないだろう。

 

 安定したピッチングにも増して驚いたのが第2打席で飛び出したレフトスタンドへのホームランである。

 

 パドレスの先発アンドリュー・キャッシュナーが投じた3球目のスライダーを見逃さなかった。「まさか打てるとは思っていなかった」と本人は語ったが、マエケンのバッティングの良さは日本でも証明済みだ。

 

 ちなみにメジャーリーグで最もホームランを打っている日本人ピッチャーは野茂英雄の4本である。4本ともドジャース時代のものだ。

 

 パ・リーグの近鉄出身の野茂は日本時代、ほとんどバッティング練習をしたことがない。ドジャースに移籍してバットを握るようになったが「気分転換みたいなものですよ」と語っていた。

 

 その割によく打った。メジャーリーグ通算485打数65安打。通算打率1割3分4厘はピッチャーとしては上々だ。目方があるため、芯に当たるとよく飛んだ。フリーバッティングでは何本もレフトスタンドに運んでいた。

 

 しかし、センスとなるとマエケンの方が上ではなかろうか。広島市民球場の最後の試合でもホームランを記録している。「今日、打ちたいなと思っていた。完璧でした」と語っているくらいだから、狙っていたのだろう。狙ってスタンドまで運べる選手は、野手でも、そうはいない。メジャーリーグではピッチングのみならずマエケンのバットにも注目したい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


◎バックナンバーはこちらから