対阪神3連戦(4月8日~4月10日)は、非常に面白かった。甲子園に行っての、2勝1敗の勝ち越しなので、結果も十分でしょう。

 

 今年の阪神は強いと言われる。その下馬評通りなら、ビジターで互角以上に戦ったのだから、カープも強いと言える。優勝争いをしてもおかしくはない。

 

 いずれも終盤にもつれる大接戦で、結果的には2勝1敗だが、可能性としては3連勝も3連敗もありえたし、1勝2敗でも不思議はなかった。

 

 去年との違いは、なんといっても、菊池涼介、丸佳浩の“キクマルコンビ”である。去年は2人とも打率が上がらずに苦しんだが、今年は2人とも3割打っても不思議ではない状態にある。

 

 それが、エクトル・ルナのタイムリー、ブラッド・エルドレッドの、なんと首位打者にまで踊り出る(あくまで4月中旬の時点で、ですが)高打率を生んで、得点力が大幅にアップしている。

 

 とはいっても、阪神・岩貞祐太には途中まで完璧に抑えられたし、中日・若松駿太を苦手にしているところも変わっていない。エルドレッドの高打率がどこまで続くかを含めて、あくまで打線は水モノ。先発投手陣はなんとかなりそうなので、今後のカギは、いまはうまくいっているセットアッパーのジェイ・ジャクソン、抑えの中崎翔太がどこまでもちこたえてくれるかに、かかっている。

 

 それより阪神3連戦で、ちょっとうらやましいものを見た。

 

 2年目の江越大賀である。金本知憲監督の「バットを強く振る打者」を評価する姿勢にぴったりの豪快なスイングが持ち味で、すでに4本塁打。たしかに、空振りしても絵になるスイングは魅力だ。

 

 それよりも、たとえば4月9日の9回表、カープの攻撃を思い出してほしい。2-2の同点、2死二塁で打者は會澤翼。會澤の打球はセンターバックスクリーンに届こうかという大飛球となって飛んでいく。1点も勝ち越されたくない阪神は、当然、前進守備である。タイムリー二塁打はかたい。ところが、この打球を見たセンター江越は、一直線に背走し、フェンス直前で飛びついてスーパーキャッチ。

 

 これ、抜けていたら、カープにとっては今シーズンの阪神に大きなダメージを与える会心の勝利となるところだった。実際には延長10回に勝ち越したけれども、あのスーパーキャッチはシーズンの流れを左右するほどのものだった。

 

 ついで4月10日。8-4とカープがリードして迎えた9回裏。4点差を考え、中崎を休ませるべくマウンド上がったのは永川勝浩。

 

 先頭打者・江越の当たりは、大きなバウンドのサードゴロ。守備固めで入っていた西川龍馬が慎重に捕球して、一塁へ送球した。これがやや山なりのボールだった。全力疾走の江越は一塁にヘッドスライディングしてセーフ。これをきっかけに無死満塁となり、急遽、中崎が出ていって、8-7でかろうじて逃げ切ったのである。

 

 新人とはいえ、西川も、あの当たりをセーフにしてはいけない。もっと強い送球をしないと(このあと二軍降格)。西川はオープン戦で結果を残し、開幕一軍をつかみ取った。プロ初打席の三塁打も見事だった。ただ、たとえば黒田博樹が完封勝利をあげた4月2日の巨人戦でも、途中出場し9回に強い当たりのサードゴロを好捕しながら一塁へ大暴投してピンチを招いている。スピードも打力も見るべきものはあるので、ファームで鍛錬してほしい。

 

 江越に戻る。ここにあげた2つのプレーで光るのは、爆発的なスピードである。バットを思いきり振りきる力と、このスピードをあわせて、きわめて爆発力のある新戦力といえる。

 

 カープにも、こういう新戦力がほしいなあ、とうらやましく思った次第。もちろん、現在の江越の好調が、1年間続く保証はどこにもないのだが。

 

 しかし、たとえば2013年を思い出すとよい。途中加入したキラ・カアイフエの爆発力が何をもたらしたか。カープ球団史上初のクライマックスシリーズ進出である。

 

 爆発する新戦力の台頭を期待したい。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

 


◎バックナンバーはこちらから