8シーズン目を迎える四国アイランドリーグPlusから、昨年は7選手が10月の育成ドラフトで指名を受け、NPB行きの夢を叶えた。本ドラフトでの指名はなかったとはいえ、これは人数だけでみれば過去最多である。東京ヤクルトの貴重なスーパーサブとして1軍定着した三輪正義(元香川)や、千葉ロッテのクリーンアップも任された角中勝也(元高知)など元アイランドリーガーのNPBでの活躍も増えてきた。彼らに続き、近い将来、1軍でのプレーが期待される新人選手たちを紹介する。
(写真:「練習したい時に練習できるのがうれしい」と巨人の充実した環境に笑顔をみせる土田)
<目指すはダルビッシュスタイル 〜巨人育成2位・土田〜>

 当初の見込みからすれば、廻り道をしたと言えるだろう。地元・鎮西学院高からアイランドリーグの長崎に入団した4年前、土田瑞起は近い将来のNPB入りを期待されていた右腕だった。
「総合力で勝負できるタイプ。NPBで勝てるピッチャーになる可能性を秘めている」
 1年目のキャンプで同部屋になり、シーズン途中から監督代行も務めた前田勝浩は高く評価していた。

 早くも2年目に可能性はあった。この年から投手コーチに就任した元巨人・谷口功一のアドバイスでフォームを修正。クロスステップで前の肩が入りすぎ、腕が振れなくなる点を改善し、ストレートのMAXが147キロにアップした。加えて谷口の現役時代の武器でもあったフォークボールを伝授された。33試合に投げて5勝4敗、防御率はリーグ3位の2.16。チームの前期優勝にも貢献した。
「でも、最後のアピールの場であるフェニックスリーグで調子を落としてしまいました。まだ若いから、指名されなくても来年があると思っていました。今から考えると考えが甘かったですね」

 チャンスの神様に後ろ髪はないと言われる。翌年は3勝10敗と大きく負け越し、アピールできないまま球団は解散。救済ドラフトで愛媛に拾われた。リーグでのプレーも4年目となり、同級生は大学を卒業する年齢だ。「今年こそやらなくては」。昨季は今までにない危機感を持って臨んだシーズンだった。

 土田は原点に戻って、「ストレートのスピードアップ」と「しっかり腕を振る」ことをテーマに取り組んだ。25試合に登板し、5勝4敗1セーブ、防御率4.35。決して満足のいく成績ではなかったが、決め球のフォークボールは浅く握るかたちに改良し、さらにストンと落ちるようになった。「決め球のフォークの落ちが良く、三振がとれる」。スカウトから成長を認められ、ようやくNPB入りの念願が叶った。

 アイランドリーグの4年間で学んだことはそれだけではない。実戦のなかで打者と対戦するなかで、マウンドさばきも身につけた。
「最初は“打たれたらどうしよう”という焦りがあったのですが、登板を重ねることで、気持ちの余裕が生まれてきました。もし打たれても、次のバッターに対して切り替えができるようになりましたし、2ストライクと追い込んでも慌てて勝負しない。大崩れはしなくなったと思っています」
 
 また先発、中継ぎ、抑えとさまざまな役割をこなしてきた点も他の選手にはない強みだ。本人も「投げる体力、連投できる力は他の新人と比べればあるはず」と語る。交流戦やフェニックスリーグで既にNPBの打者と対戦していることもプラスに働くだろう。一方で1年間、土田を見てきた愛媛の星野おさむ監督は「いいボールを悪いボールがはっきりしている」と課題を指摘する。たとえアイランドリーグの打者は打ち損じてくれても、NPBの打者は失投を逃しはしない。昨季はコントロールを気にするあまり、ボールを置きに行って痛打を浴びるケースも目立った。

 巨人は近年、育成選手を多く採用しているが、飛躍が見込めないと判断されると1〜2年で戦力外になっている。昨オフにも7選手が支配下選手になれないまま、巨人のユニホームを脱いだ。当然のことながら、土田も昨季の投球内容では育成選手から抜け出すことは厳しくなる。だからこそ、このオフもさらなる高みを目指してフォームの微調整に取り組んできた。
「去年のフォームはボールに勢いをつけようと体をひねって後ろに担ぎすぎていました。だからストレートが真っスラみたいに曲がっていたんです。やはり同じストレートでもバッターから空振りを奪いたい。ボールの伸びを追求した投げ方をキャッチボールから意識しています」
(写真:腕をしっかり振ったうえでの制球力も強化ポイントのひとつ)

 当面の目標は「7月末までの支配下登録」。そして、将来的にはテキサス・レンジャーズに移籍したダルビッシュ有のような投手を理想に描いている。
「三振もとれるし、ピンチでは打たせてゲッツーもとれる。どういうかたちでも抑えられるピッチャーになりたいです」
 長崎と愛媛での4年間が廻り道ではなかったことを証明し、完全無欠の道へ――。その第一歩をキャンプ地・宮崎で踏み出すつもりだ。

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(石田洋之)