NPBもアイランドリーグも各球団が2月1日に新チームが始動し、開幕に向けた実戦も増えてきた。今シーズン、リーグからは過去最多の7名が新たにNPBの門をくぐり、計23選手が1軍の檜舞台で活躍するべくキャンプで汗を流している。リーグの行方ともに、彼らの動向も気になるところだ。NPB入りというひとつの夢を叶えた選手たちは、新たなシーズンにどのように臨もうとしているのか? その今を追いかけた。
 再び3拍子揃った内野手へ――大原淳也

「スタートでつまづいたのがすべてでしたね」
 ルーキーイヤーの昨季を大原はそう総括した。1月の新人合同自主トレで右ふくらはぎを肉離れ。キャンプインからアピールするはずが、まずはケガの治療から始めなくてはならなかった。

 故障が癒えたと思ったら、今度はNPBの壁にぶち当たった。2軍で89試合に出場したものの、打率はわずか.173、2本塁打、2盗塁。一昨年は香川のリードオフマンとして打率.314、10本塁打、29盗塁と活躍した姿は見る影もなかった。本人も「かなり不本意です」と苦笑するしかない成績だった。

「アマチュア時代から、これまでやってきたことを根底から否定されました。“NPBで生き残るには直すしかない”と……。それに対応するのに時間がかかりましたね」
 打撃に関しては1からやり直した。横浜に来るまでは「ボールは待っていれば来る。だから、それをしっかり打ち返す」というイメージで打席に立っていた。だが二軍の監督、コーチからは「それだと振り遅れるし、詰まる」と指摘を受けた。「待つ」のではなく、こちらから「打ちに行く」。投球に対して体を入れていく打ち方を徹底された。頭では理解しても体は思うように動いてくれない。葛藤の日々が続いた。

 守っても失策は11個。慣れないセカンドのポジションでのミスが多かった。
「香川でも基本的にショートでしたから、セカンドとなると打球に対する感覚が全く違う。1歩目の動き出しや予測の部分で戸惑いがありました」
 走塁に関しては、そもそもふくらはぎを痛めたことで、首脳陣に足が速いという印象を与えられなかった。シーズンに入っても盗塁のサインは滅多に出ない。

 走攻守3拍子揃った内野手――今季は入団前の評価を取り戻し、さらに高めるシーズンとなる。新たな船出を果たしたチームにおいて、自らを売り込む機会は必ず巡ってくるはずだ。
「夏過ぎからトレーニングの成果で、50メートルを6秒を切って走れるようになりました。まず今季に向けて“走れる”というアピールはできたと思います」
 秋季キャンプでは、連日の特守で守備の基本を繰り返し、巻き返し体に叩きこんだ。ぎこちなかったセカンドの守備にも安定感が出てきた。

 苦労した打撃も秋には固め打ちが増えてきた。宮崎フェニックスリーグではホームランを放つなど、ツボにはまればスタンドインできるパワーがあることも示した。
「まだ僕に対しては“バッティングが弱い”というイメージが強いと思います。それを覆してパンチ力のあるところも見せたいですね」

 昨季は貴重な経験もした。ファームで調整していた埼玉西武の西口文也ら一線級のピッチャーと対戦できたのだ。
「西口さんは同じスライダーでも2種類ありました。カウントを取りにくるスライダーと、空振りをとるスライダー。対戦した時には両方投げてきましたが、球筋が違うので全く対応できませんでした。しかもシュートを投げて内角もえぐってくる。こういうピッチャーを打たなくてはいけないんだなと強く思いました」

 俊足、堅守、強打。1年間の周り道を経て、一軍で勝負をかけるための武器は整った。174センチと小柄な体が新生球団の新星となる。 


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(石田洋之)