今季から米大リーグのドジャースでプレーするマエケン(前田健太)は、これまで4試合投げて3勝0敗、防御率0.36(日本時間4月25日現在)の好成績を残しています。メジャーデビューとなったカブス戦は6回を無失点に抑えて初登板初勝利を挙げました。しかも打ってはレフトスタンドにソロホームラン。あの試合で一発を打ったマエケンは、やはり“持っている選手”だと思います。

 

 さて、マエケンの武器はコントロールの精度の高さです。ストレート、カーブ、スライダーなど球種のすべてが安定している。これが海を渡っても好成績を残せている一番の要因でしょう。特に彼の投球の軸となるストレートが低めに集まっているので、メジャーの強打者もそう簡単には打てません。

 

 そして、マエケンの活躍の裏には万全な準備も隠されていると思います。先日のピッチングを見ていて、踏み出した時のステップの形やタイミングが日本でプレーしている時と若干違いました。メジャー移籍が決まる前に彼と話す機会がありましたが、やはり野球に対する考え方が素晴らしい選手です。恐らく、マエケンはアメリカに来ることを見越して、随分前からメジャーを研究してきたんでしょうね。

 

 今後も好調を維持するためには、コンディション管理に気をつけることです。メジャーは移動も多い上に、プロ野球に比べて登板間隔が短い。投げた後のケアは特に大切です。ドジャースは3年連続で地区優勝している強いチームなので、コンディション管理さえきちんとできれば1年目から2ケタ勝利する可能性はかなり高いと思います。

 

 マエケンをメジャーの選手に例えると、流石に通算355勝の技巧派投手のグレッグ・マダックス級とまではいきませんが(笑)、通算213勝154セーブを挙げたジョン・スモルツ級でしょうね。スモルツはサイ・ヤング賞1度(96年)、最多勝2度(96、06年)、最多奪三振2度(92、96年)など数々のタイトルを獲得した大投手です。彼とはストライク先行で攻めていく姿勢が似ています。

 

 チームには6年連続2ケタ勝利を挙げているエース左腕のクレイトン・カーショーがいます。MLB歴代5位タイの3度のサイ・ヤング賞(11、13、14年)投手がいるので、すぐにチームのエースになるのはなかなか難しいと思いますが、いつかはそこを目指して欲しいですね。今はローテーション3番か4番目なので、コンスタントに良い結果を残して「エース級」に成長することを期待しています。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。

 


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