第78回 水中と地上でスイマーを支える三種の神器
4月に行われた第92回日本水泳選手権で、リオデジャネイロ五輪・競泳日本代表が決定した。
山本化学工業の練習用やレース用のスイムウェアを着用する選手の中からは、小関也朱篤、藤森太将、高橋美帆、清水咲子、松本弥生、五十嵐千尋が選ばれた。
山本化学工業では記録向上を目指すスイマーを、今後3つのアイテムでサポートしていく。
◆水の抵抗を極限まで小さく
まず高機能水着の「マリーン・マッハ」。他の水着よりも優れているのは、その圧倒的に低い摩擦抵抗係数だ。一般的な水着の抵抗係数は1.8cdf、それに対してマリーン・マッハは0.021cdf。cdfは液体と物体の間の抵抗を表す数値で、もちろん小さい方が水中での抵抗が少ない。コンマ何秒を争う競泳では水の抵抗が勝負を分けることもある。
マリーン・マッハの圧倒的な高機能の秘密は親水性の素材にある。
「一般的な水着は撥水性の素材で水を弾いて水着表面の抵抗を少なくしますが、マリーン・マッハは親水性素材で水をなじませることで、水との抵抗を減らしています」
山本富造社長はこう説明する。
さらにマリーン・マッハでは水着表面だけでなく、肌に触れる裏面にも親水素材を使っている。
「最近、スイマーはより体にフィットさせようと、小さいサイズの水着を選ぶ傾向にあります。しかしそうすると腕などを自由に動かせなくなる。動かせてもストレスを感じてしまう。小さめのサイズの洋服を選ぶと腕を上げたりするときになんか具合が悪い。そう感じることはありませんか? 泳いでいるときに同じことが起きるのです」
体にフィットする水着は欲しいが、動きにくさでストレスは感じたくない。そうしたスイマーの声に応えて、マリーン・マッハでは裏面にも親水素材を採用した。肌と水着の間の抵抗を限りなくゼロに近づけることで、ストレスフリーで泳げるのだ。
◆正しい水中姿勢が自然と身につく
練習用水着「ゼロポジションスイムウェア」は、水中の姿勢(ストリームライン)を正しくとることを目的としたウェアだ。
正しいストリームラインは、頭から足までが水面に対してまっすぐなのが理想的だ。足が下がってしまうと、水面と足の間の三角形のスペースには約1tもの水の抵抗がかかる。これではタイム向上は望めない。
「水中で正しいストリームラインをとると、人間の体は飛行機の翼を横から見たような形状になります。おなかの方、下側がまっすぐで、お尻の方は丸みを帯びている。これで体の上と下で水流に速度差が生じて、結果浮力となるわけです」
山本社長は練習用水着の効果をこう説明してくれた。正しいストリームラインをとれれば、より高速に泳ぐことが可能なのだ。
ちなみに練習用水着の効果的な使い方はこうだ。まず1日の練習距離の半分を練習用水着を着用して泳ぐ。そして練習後半は普通の水着で泳ぐ。このトレーニングを続けると、体が自然に理想的な水中姿勢を覚えるという。
◆他社にはないアドバンテージ
さてスイマーに限らずアスリートのパフォーマンスアップには、骨盤バランスの正常化も重要である。山本化学工業の「ゼロポジションスポーツベルト」は、骨盤のズレを治し、体の正中線を整えることでアスリートを支援するアイテムだ。
「骨盤のバランスが正常でない場合、日頃の歩き方にも影響が出ています。親指がまっすぐに踏み出されるのが理想ですが、現実には違います。そのままでは手や足の力がきちんとした推進力にはなりません。左右でバラバラになったり、後ろに力が逃げてしまったりします。せっかくトレーニングで鍛えたとしても骨盤のバランスが悪いと、その能力をフルには発揮できないのです」
この骨盤のバランスを整えるのが、ゼロポジションスポーツベルトだ。類似商品も目にするが、山本化学工業のベルトは背中側がふたつに分かれているのがポイントである。
「骨盤は左右別に動くものです。それを1本のベルトで固定してしまっては意味がありません。後ろがセパレートになっていることで、左右の骨盤の動きを妨げないのです」
ちなみに左右セパレートになったスポーツベルトは山本化学工業の特許である。
水中、そして地上でもアスリートをサポートする山本化学工業。リオデジャネイロ五輪ではサポートされた選手たちの活躍に注目が集まる。