現地時間2日、イングランド・プレミアリーグ第36節が行われ、2位のトッテナムが敵地でチェルシーと2-2で引き分けた。これにより首位のレスター・シティーと2位トッテナムとの勝ち点差は7。残り2試合での逆転は不可能となったため、レスターのプレミアリーグ優勝が決定した。レスターは創設133年目でリーグ初制覇。1992年よりスタートしたプレミアリーグで6クラブ目の優勝チームとなった。

 

 レスター・ラニエリ監督の古巣、Vをアシスト(スタンフォードブリッジ)

チェルシー 2-2 トッテナム

【得点】

[チ] ガリー・ケイヒル(58分)、エデン・アザール(83分)

[ト] ハリー・ケイン(35分)、ソン・フンミン(44分)

 

 サッカー史に残るジャイアントキリングだ。開幕前、イギリスのブックメーカーの予想ではレスターの優勝オッズは5000倍だった。豊富な資金力と豪華なタレントを揃えるビッグクラブが隆盛をきわめるプレミアリーグである。レスターの選手の総年俸は20クラブ中17位。さらには昨シーズンまで降格争いをしていたのだから、それも当然といえば当然である。

 

 選手にビッグネームはいない。それでも今シーズン、レスターのカウンターサッカーは面白いように機能した。エースストライカーのジェイミー・ヴァーディーは11試合連続得点のプレミアリーグ新記録を打ち立てるなど22得点。8部のクラブから成り上がった29歳の苦労人は、イングランド・サッカー記者協会(FWA)が選出する今シーズンの年間最優秀選手賞(MVP)も獲得した。攻撃の中心、MFリヤド・マフレズは繊細なボールタッチから数多のチャンスを演出。17得点11アシストと獅子奮迅の活躍を見せた。アルジェリア人アタッカーはイングランド・プロサッカー選手機構(PFA)が発表する今シーズンのプレミアリーグMVPに選ばれた。

 

 リーグ3位の得点力を支えるのが上記の2人なら、堅守を誇る守備陣での貢献が著しいのはMFエンゴロ・カンテだ。中盤の底でプレーする彼のボール奪取能力はすさまじく、元フランス代表クロード・マケレレを彷彿とさせる。守護神カスパー・シュマイケル(デンマーク)も最後の砦としてゴールマウスを死守した。他にも日本代表のFW岡崎慎司をはじめとしたメンバー全員の守備意識が高く、総合力でプレミアリーグを制覇。今や彼らの市場価値はうなぎ上りだと言われている。

 

 今シーズンから指揮を執るクラウディオ・ラニエリは、これまでリーグ優勝経験はなかった。チェルシー、ユベントス、ASローマ、インテル・ミラノなどのビッグクラブを率いても届かなかったリーグタイトル。イタリア人監督が“シルバーコレクター”を返上したかたちとなった。

 

 奇跡とまで呼ばれる快進撃。タイ人の富豪ヴィチャイ・スリヴァッダナプラバが2010年8月に経営権を取得してから序章が始まった。オーナーが経営する『キングパワー』の名を冠したキングパワー・スタジアムを本拠地とし、ユニホームの胸にもキングパワーの文字は刻まれている。“王の力”が後押しとなり、レスターのシンデレラストーリーは完結した。

 

(文/杉浦泰介)