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(写真:2大会連続の五輪出場に近付いた寺本)

 4日、リオデジャネイロ五輪の日本代表選考会を兼ねた「第55回NHK杯体操」が東京・代々木第一体育館で開催され、女子は寺本明日香(中京大/レジックスポーツ)が115.050点で3年ぶりに優勝した。2位に全日本選手権優勝の村上茉愛(日本体育大)、3位には昨年の優勝者・杉原愛子(梅花高/朝日生命)が入り、リオデジャネイロ五輪代表候補に決まった。女子の代表候補は7枠。全日本種目別選手権(6月、東京)後に4名が追加され、強化合宿や試技会を経て7月に5名に絞られる。

 

 抜群の安定感を見せた寺本が3年ぶりにNHK杯を制した。

 

 今大会はリオ五輪日本代表選考会を兼ねており、上位3名が代表候補に決まる。ロンドン五輪の主力だった田中理恵、鶴見虹子らは引退し、メンバーで残っているのは寺本だけだった。4年前は手がしびれるほど緊張したという寺本だが、第一線を走り続けてきた経験値は伊達じゃない。「あまり緊張せず、ひとつひとつ丁寧にできた」と冷静に臨むことができた。

 

 4月の全日本選手権では村上次ぐ2位。その差はわずかに0.1点だった。第1ローテーションの跳馬で難度を表すDスコアで6.2点のチュソビチナ(転回前方伸身宙返り1回半ひねり)を実施。出来栄えを示すEスコアは9.1点と高得点をマークした。15.300点を叩き出した寺本は、15.050点だった村上を抜き去り、トップに躍り出た。

 

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(写真:得意の平均台では「ひねり過ぎたくらいの気持ちでやりました」という寺本)

 第2ローテーションの段違い平行棒でもミスのない演技を見せた。14.050点を加算し、村上との差を0.6点に広げる。続く平均台は寺本の得意種目である。「不安がない限りは守りの演技をしない」。勝つために演技構成を落とすという選択肢はなかった。幅10センチの細い台上で躍動した。フィニッシュは「私の代名詞」という3回転ひねり下りで、決めた。出場24選手中唯一の14点台をマークする14.350点でリードをさらに広げ、優勝をほぼ決定付けた。

 

 最終ローテーションの床運動(ゆか)は村上が得意とする種目である。だが、寺本と村上との差は2.5点まで開いていた。よほどの大過失がない限り逆転はあり得ない。先に演技を実施した寺本は、音楽に乗って優雅に舞った。ここでもミスなくまとめた寺本は14.050点。大トリで演技をした村上に差を詰められたものの、トップは譲らなかった。

 

 寺本は4種目ほぼノーミスの演技で3年ぶりの戴冠を果たした。全種目で14点以上と安定感は抜群。昨年の世界選手権ではキャプテンを務めた彼女だが、体操NIPPONの柱としての自覚も十分だ。「ここは通過点」。20歳のエースが女子を牽引する。

 

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(写真:代表候補入りを果たした村上、寺本、杉原)

<女子個人総合結果>

1位 寺本明日香(中京大/レジックスポーツ) 115.050点

2位 村上茉愛(日本体育大) 113.300点

3位 杉原愛子(梅花高/朝日生命) 112.350点

 

(文・写真/杉浦泰介)