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(写真:NHK杯8連覇を達成した内村<左>と2位加藤)

 5日、リオデジャネイロ五輪の日本代表選考会を兼ねた「第55回NHK杯体操」が東京・代々木第一体育館で開催され、男子は代表に内定している内村航平(コナミスポーツ)が184.650点で、史上初の8連覇を達成した。2位には加藤凌平(コナミスポーツ)が180.100点で、3位の田中佑典(コナミスポーツ)を0.1点上回り、ロンドン大会に続き2大会連続で五輪代表に入った。リオ五輪代表の残り3枠は、全日本種目別選手権(6月、東京)後に3つの選考大会の成績を選考対象として決定する。

 

 リオの代表権を懸けて、白熱した2位争いが繰り広げられた。内村を除く個人総合最上位に与えられる五輪切符。全日本選手権の成績で白井健三(日本体育大学)がトップにつけ加藤と田中が続いた。

 

 1班はゆかから始まった。加藤は大きなミスなく安定した演技で15.500点を叩き出す。田中は3本目の技「後方宙返り2回半ひねりから前方宙返り1回半ひねり」でラインオーバーがあったものの、15.200点とまずまずのスタートを切った。ゆかを得意とする白井は、G難度の「リ・ジョンソン」(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)を易々と決めて16.150点のハイスコアで内村に次ぐ2位をキープする。

 

  ゆかで高得点を出した白井だったが、次のあん馬でミスが出た。終末技に入る前に倒立姿勢に持っていけずに落下してしまう。得点は12.950点。一方、加藤と田中はともに安定した演技を見せ、加藤は15.000点、田中は14.850点だった。第2ローテーションが終わった時点で、総合順位を4位に下げた白井はリオの切符が遠のいた。

 

 3種目目のつり輪は、全体的に得点がのびなかった。1班で15点台に乗せたのは、15.350点を出した神本雄也(日本体育大学)のみ。折り返し点で総合順位は、1位の内村が137.300点と完全に抜け出した。2位の加藤が134.350点、3位の田中が133.800点と2位以下は団子状態が続いていた。すると、4種目目の跳馬で加藤が賭けに出る。

 

 最終演技者の加藤はDスコア6.0点の「ロペス」(伸身カサマツ2回ひねり)に挑んだ。「ゆかから(田中との)点差を離せずにいた。跳馬でロペスを跳ばなければいけないと思った」と加藤。着地でラインオーバーがあったものの、田中を0.650点上回る15.000点の高得点をマークした。リスクもあった加藤の作戦は見事に功を奏す。第4ローテーション終了時点で3位との差を広げた。

 

 続く5種目目は、田中の得意とする平行棒だ。2位の加藤になんとか食らいつきたい田中は、G難度の「ヤマムロ」をはじめ、高度な離れ技を次々と成功させた。着地もピタリと決めて15.950点を叩き出す。田中は第5ローテーション終了時点で合計164.100点。得意の平行棒で加藤に0.4点差に詰め寄った。加藤と田中の勝負は、最終種目の鉄棒にもつれることになった。

 

 鉄棒のトップバッター・田中はプレッシャーを物ともせずミスなく演技を終え、15.900点のハイスコアを出す。この時点で加藤は15.500点以上を出さなければ、田中を超えることができない。加藤は「15.600点が必要なのは演技をする前から分かっていた。練習でも試合でもなかなか取れる点数ではないので、開き直った」と明かす。加藤は絶対に失敗が許されない状況の中、4度の離れ技を悠々成功させる。「個人的にしびれる着地だった」と、加藤はフィニッシュをピタリと決めた。

 

 スコアボードに表示された数字は、15.600点――。田中を総合計で0.1点上回り、見事にリオ五輪の代表権を掴んだ。試合終了後の会見で、加藤は「プレッシャーの中でもこのような演技ができて自信がついた。今回は自分の力で勝ち取った代表の座」と喜んだ。

 

 熾烈な2位争いは、一か八かの勝負に出た加藤に軍配が上がる形となった。しかし、3位の田中の演技も素晴らしい出来栄えだった。今後の代表入りに向けて大きなアピールになったことは間違いない。3大会ぶりの五輪団体金メダル獲得に向けて日本の布陣は整いつつある。


<男子個人総合結果>

1位 内村航平(コナミスポーツ) 184.650点
2位 加藤凌平(コナミスポーツ) 180.100点
3位 田中佑典(コナミスポーツ) 180.000点