第313回 ゴロフキン対カネロ戦、メイウェザー復帰戦は実現するのか ~2016年後半のボクシング界、3つの見どころ~

(写真:カネロが絶対有利のカードだが、カーンとの一戦は国際色豊かなビッグイベントになる Photo By Hogan Photos/Golden Boy Promotions)
2016年の世界ボクシング界は好カードが少ないと言われてきたが、現地5月7日にラスベガスで行われるサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)対アミア・カーン(イギリス)戦をきっかけとして一気に加熱しそうな気配がある。
今週末の一戦の勝者と、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)のビッグファイトは実現するのか。また、ヘビー級戦線はさらに盛り上がっていくのか。そして、カムバックが噂され始めたフロイド・メイウェザー(アメリカ)は今年中にリングに戻るのか。今回は今後の3つの見どころをピックアップし、2016年中盤以降のボクシング界を占っていきたい。
今週末のWBC世界ミドル級タイトル戦は、体格で上回るカネロ有利の声が圧倒的である。恐らくは中盤ラウンドあたりで、ウェルター級以上で戦った経験のないカーンをカネロが沈める可能性が高い。
ただ、例えワンサイドマッチになったとしても、ベガスに新オープンしたT-モバイルアリーナで開催される大イベントは素晴らしい雰囲気になるはず。そして、この一戦の勝者には、WBA、WBC(暫定)、IBF世界ミドル級タイトルを保持するゴロフキンとの指名戦が義務付けられる。その試合交渉の行方に、カネロ対カーン戦と同様、あるいはそれ以上の注目が集まることになりそうだ。

(写真:ビッグファイトを望み続ける34歳のゴロフキンは近い将来に大舞台に立つのか)
22連続KOと無敵の進撃を続けるゴロフキン。カネロがカーンを下したとして、“全階級を通じて最も恐れられている選手”と呼ばれる通称GGGとの統一戦を望むかどうか。オスカー・デラホーヤ(アメリカ)が率いるゴールデンボーイ・プロモーションズは、“金のなる木”である25歳のカネロをあえてカザフスタンの怪物にぶつけるのか。
ゴロフキン対カネロは、早ければ9月のメキシコ独立記念日ウィークに開催される可能性もある。対戦を避け続ければファンからの尊敬も失うだけに、カネロと、その陣営は遅かれ早かれ決断するだろう。
ただ、その前にカネロはWBCタイトルを返上し、もう1試合挟み、実現は来年春になるのではないかという見方が最も有力だ。いずれにしても、現在考えられる中で最大のビッグファイト。いつ、どこで実現するかが、今後のボクシング界で最大の注目ポイントである。
加熱するヘビー級戦線
向こう3カ月の間に3つの重要なヘビー級タイトル戦が開催される。

(写真:ワイルダーの破格の強打は魅力だが、ポヴェトキンは難敵だ)
まず5月21日には、WBC 王者デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)が元WBA王者アレクサンダー・ポヴェトキン(ロシア)と指名戦を行う。この試合の興行権は入札になり、ポヴェトキン側が落札。おかげでワイルダーは過去最高の400万ドル以上の報酬を受け取るが、引き換えに正念場のファイトをロシアで行うことになった。36戦全勝(35KO)という見栄えの良い成績のパンチャーは、敵地で難敵を倒せるか。これまで常に真価が疑われてきたアメリカ期待の星は、ここでキャリアの分岐点を迎える。
続いて6月25日には、IBF世界ヘビー級新王者アンソニー・ジョシュア(イギリス)が地元ロンドンでドミニク・ブリージール(アメリカ)と初防衛戦で対峙する。ロンドン五輪で金メダルも獲得したジョシュアの母国での人気は凄まじく、短期間に未来のスーパースター候補と呼ばれるようになった。30 歳のブリージールも2012年のロンドン五輪に出場した選手だが、極めて荒削り。ジョシュアの圧勝が予想され、結果だけでなく内容も問われる一戦と言って良い。
WBA、WBO世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(イギリス)と前統一王者ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)のリマッチは、7月9日にイギリスのマンチェスターアリーナで開催されることが決まった。両者は昨年11月にドイツで対戦し、フューリーが大番狂わせの判定勝利。40歳のクリチコは、文字通り進退をかけてリマッチに臨むことになる。
最近は最重量級戦線が一気に加熱しはじめている中で、これらの3試合が持つ意味は極めて大きい。クリチコ、36歳のポヴェトキンといった古豪が勝ち残ってしまえば、せっかくの盛り上がりもすぐに立ち消えになりかねない。それだけに、ワイルダー、ジョシュア、フューリーといった次代の主役候補たちが、どんな充実ぶりを見せてくれるかに視線が注がれる。
メイウェザー復帰?
49勝無敗のまま昨年9月に引退表明したフロイド・メイウェザー(アメリカ)の復帰の噂が流れている。4月30日、ワシントンDCで行われた興行時にテレビのインタヴューに応え、カムバックについて言及したのだ。
「CBS、Showtimeといったテレビ局と話はしてきたし、どうなるかはわからない。復帰するなら報酬は9桁(1億ドル)だ」
プロモーターとしての現状に満足していると前置きしながら、ビッグマネーが動くであろう復帰戦の可能性を否定しなかった。対戦相手候補として、ゴロフキン、6月25日のキース・サーマン(アメリカ)対ショーン・ポーター(アメリカ)の勝者、ダニー・ガルシア(アメリカ)らの名前が挙げられ、ゴロフキンには興味を示さなかったが、ガルシアには好意的な意見を残していた。
さらに翌日には、メイウェザー陣営はすでに「TMT 50(The Money Team)」「TBE 50(The Best Ever)」というトレードマークを商標登録したという報道も飛び交った。こんな動きを見れば、節目の50戦目を巨大ビジネスにしたい本人の思惑が見えてくるようでもある。
アメリカ国内では、無敗王者がこのまま大人しく引退するとはもともと考えられていなかった。そんな背景もあり、本人が決断すればカムバック戦への歯車がすぐに動き始めるだろう。早ければ11月頃に再びリングに立つことも考えられる。対戦相手はガルシア、エイドリアン・ブローナー(アメリカ)か、あるいはパッキャオ、カネロとの再戦ではないか。
もっとも、ある関係者は、「テレビ局の重役はメイウェザーが本当にカムバックするとは思っていない」と語っていたことも付け加えておきたい。
本人、周囲ともに50勝目に色気はあり、一応準備はしているが、まだどうなるかわからないというのが真実かもしれない。いずれにしても、カムバック戦が決まれば今年最大級のイベントになることは言うまでもない。それだけに、今後もメイウェザーの一挙一動に周囲は振り回されることになりそうだ。
杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。
※杉浦大介オフィシャルサイト>>スポーツ見聞録 in NY
