福岡ソフトバンク3軍を相手に14日は6-2、15日は8-3と2連勝を収めました。投手陣が序盤から流れを作ってくれたので、バッターも良いリズムで攻撃に移れたことが勝因だと思います。

 

 初戦の先発ピッチャーを務めたウィスリー・エドワーズは、持ち味の強気な投球で5回4安打1失点とソフトバンク打線を抑えてくれました。同じチームと連戦する場合、チームを勢いづけるためには、初戦の先発投手がかなり重要になります。彼は今年安定しているピッチャーのひとりですが、この試合もボールが暴れることなく、ストライクゾーン内を中心に収まっていました。彼の好投が2連勝に繋がったと思うので、2試合のMVPに値するでしょう。

 

 2戦目の先発は4年目の竹田隼人。彼は初回の先頭打者に四球を与え、そこから3失点を喫したので、ゲームを壊さないためにも早々にマウンドから降ろしました。竹田はコントロールに不安があったため、新人右腕の石田哲也を初回から準備させておきました。これが当たり、2番手の石田は2回からの3イニングを投げて1安打無失点とこちらの期待に応えてくれました。

 

 石田は身長188センチで手足が長いため、左足が地面に着いてからボールを離すまでの時間を普通のピッチャーよりも長くすることができます。ボールはさほど速くはありませんが、独特なフォームをしているのでバッターはタイミングが取りづらいはずです。シーズン当初はコントロールが課題でしたが、4月後半からは徐々に球が低めに集まるようになってきた。変化球でカウントを稼げるようにもなり、打たせて取るピッチングができるようになったことも大きいです。

 

 打線も2戦合計で28安打14得点と好調でした。9番に起用した沢坂弘樹は2試合連続猛打賞の活躍でした。彼は打てない時はストライクをも見逃すなどバットが出ない傾向にありましたが、この連戦ではストライクゾーンにきたボールを積極的に振っていました。その積極性が、2連戦での活躍に繋がったのでしょう。

 

 そして、4番・宗雪将司にもようやく待望の今季1号が出ました。今季、彼はチャンスで打てない場面が多く、それがチームの敗因のひとつになっていたので、本人もプレッシャーに感じていたと思います。やはり4番が打つとチームに勢いが生まれるので、これを機にどんどん打って欲しいですね。

 

先頭打者にはストライク先行で!

 投手陣の課題は、味方が点を取ってくれた次の回の先頭打者を全力で抑えることです。先頭打者に対して理想はストライク先行で攻めること。ヒットは結果論なので仕方ないですが、フォアボールは絶対にダメです。打者のヒザ元付近に投げ込めば、打ち取れる確率が上がるので、ストライク先行でボールを低めに集めることを意識して欲しいと思います。

 

 試合中も投手には積極的に声掛けをするようにしていますが、選手によってはそれがプレッシャーに感じてしまうこともある。「普段通り先頭は全力で行ってみよう」と声を掛ける選手もいれば、「絶対先頭を出すなよ!」と鼓舞する場合もあります。そこは選手によって言葉を使い分けることを心掛けています。

 

 大半の選手にとって、最大の目標は「NPBに行くこと」です。選手たちはそのことを大いに意識してプレーしてくれていいです。ソフトバンクを相手に2連勝を飾れたことは、今後の自信にも繋がったでしょう。いつどこでNPBの球団スカウトが見に来ているか分かりませんので、ここで満足することなく、選手たちは常に見られている意識を持ちながらプレーして欲しいと思います。

 

 現時点でNPB入りの可能性が高いのは、原田宥希と太田圭祐のサイドスローの2投手です。原田は球のスピードはあるので、コントロールの精度を上げる必要があります。思い通りのボールをどんどん投げられるようになればNPB入りの可能性は十分高いでしょう。太田の場合は反対にコントロールが良いので、課題は真っすぐの球威を上げることです。

 

 前期もそろそろ終盤に入りますが、いま選手たちに求めることは、気持ちの切り替えを大切にすることです。チーム全体として、失敗するとそれをズルズル引きずって、さらにミスをしてしまう傾向があります。たとえ失敗をしてもすぐに切り替えられるスイッチを持って、残り8試合を全力で戦い抜いて欲しいと思います。

 

伊藤秀範(いとう・ひでのり)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1982年8月22日、神奈川県出身。駒場学園高、ホンダを経て、05年、初年度のアイランドリーグ・香川に入団。140キロ台のストレートにスライダーなどの多彩な変化球を交えた投球を武器に、同年、12勝をマークして最多勝に輝く。翌年も11勝をあげてリーグを代表する右腕として活躍し、06年の育成ドラフトで東京ヤクルトから指名を受ける。ルーキーイヤーの07年には開幕前に支配下登録されると開幕1軍入りも果たした。08年限りで退団し、翌年はBCリーグの新潟アルビレックスBCで12勝をマーク。10年からは香川に復帰し、11年後期より、現役を引退して投手コーチに就任した。NPBでの通算成績は5試合、0勝1敗、防御率12.86。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


◎バックナンバーはこちらから