1975年のリーグ初制覇は球団創設26年目だった。このシーズンも含め、6度の優勝を経験しているカープだが、それも1991年が最後だ。つまり、昨季まで24シーズンも優勝から遠ざかっていることになる。

 

 カープの主力選手の中に、リーグ優勝経験者はいない。黒田博樹もメジャーリーグ3度の地区優勝はあるが、リーグチャンピオンにはなっていない。

 

 25年ぶりのリーグ優勝を狙うカープにとって、モデルとなるのは生え抜きに優勝経験者のいなかった1975年のシーズンだろう。

 

 当時の主砲・山本浩二は「優勝へのポイントとなった」試合として6月19日のヤクルト戦をあげた。この日までカープは5連敗を喫していた。

「とうとう投げるピッチャーもおらんようになった。試合に負けた帰りのバスやったかな。古葉(竹識)監督が“明日はピッチャーがおらんから、永本(裕章)を投げさす”と言った。

 

 そのとき、全員が“ウォーッ”となったんよ。なにしろ永本は先発での実績がほとんどなくて、まだ1軍では1勝しかしていなかった。そんなピッチャーをバックアップするためには、ワシらが打たないかん。“よし、明日は絶対に勝ってやろう”という気になったな」

 

 今季、永本の役割を担うとすれば3年目の九里亜蓮、6年目の中村恭平あたりだろう。幸い、打力に関しては12球団屈指だ。実績に乏しく、これから一人前になろうとしているピッチャーを援護しようという空気がベンチ内に醸成されつつあることは外から見ていてもわかる。1975年の再現なるか。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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