4年目にして打撃開眼の“二刀流”大谷翔平(北海道日本ハム)。5月4日の福岡ソフトバンク戦から5月17日の福岡ソフトバンク戦にかけて5試合連続ホームランを記録した。
6月6日現在、打率3割5分9厘、ホームラン9本。非の打ちどころのない成績である。
大谷を野放し状態にしているパの投手たちに大御所の野球評論家・張本勲が噛み付いた。
「もっと遠慮しないで近めを攻めなきゃ」
「安心してバッターボックスに立たせちゃダメ」
TBSの人気番組「サンデーモーニング」でのひとコマだ。
張本の目には「大谷は甘やかされている」と映っているようだ。
そこで調べてみると、確かに大谷の死球数は少ない。1年目がひとつ、2年目以降はゼロだ。
14年まで巨人の投手コーチを務めていた川口和久も「バッターボックスに立つ彼に対しては、ほとんどインコースを攻めていない印象」と語っていた。
内角さえ攻めておけば安全、というほど野球は単純ではない。狙ったところより一つ甘いコースにくれば、確実にフェンスオーバーするだけの力を今の大谷は持っている。安易な内角攻めは、むしろ危険である。
とはいえ、9本のホームラン中7本がセンターから左ということからも分かるように、長いリーチをいかして外のボールにスピンをかけ、打球を高く上げる技術を大谷は身に付けつつある。このままいけば“広角ホームラン打者”の誕生である。
果たして“パ高セ低”の交流戦にあって、セのバッテリーは、大谷を封じられるのか。
あるセ出身の元捕手が語る。
「“3番投手・大谷”あるいは“5番投手・大谷”に打たれるのはリーグの恥。興行の面からパには“大谷に当ててはいけない”という暗黙の了解を感じますが、セにそれはない。強打者の洗礼を大谷は初めて受けることになるかもしれません」
張本御大の口からセの投手たちに向けて“あっぱれ”は飛び出すのか……。
<この原稿は『週刊大衆』2016年6月13日号に掲載された原稿を一部再構成したものです>
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