今季、ポスティングシステムで北海道日本ハムから移籍したテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有が10日、ホームのシアトル・マリナーズ戦に先発し、メジャー初登板を果たした。ダルビッシュは立ち上がりから4点を失う内容ながら、味方打線に助けられ、5回3分の2、110球を投げて8安打5失点、5奪三振5四死球で勝ち投手になった。日本人投手がメジャーリーグで初登板初先発で勝利を収めたのは2009年の川上憲伸(当時ブレーブス、現中日)以来、8人目。マリナーズのイチローとの対戦は4打数3安打、川崎宗則とは2打数1安打だった。試合はレンジャーズが一発攻勢で逆転し、11−5で勝利した。
 1億1000万ドルの男が、メジャーの洗礼を浴びながらも白星を手にした。
 注目の初登板、ダルビッシュは制球に苦しんだ。初回、先頭のチョーン・フィギンスにストレートの四球を与えてしまう。続くダスティン・アックリーをスライダーで空振り三振に仕留め、迎えるは3番・イチロー。カウント2−2からアウトローのストレートで詰まらせたものの、打球はサードの後方にポトリと落ちる。ダルビッシュにとっては不運なヒットでピンチが広がった。

 さらに4番ジャスティン・スモークにはボールが先行。3ボール1ストライクからツーシームが甘めに入ったところをライト前へ運ばれた。これですべての塁が埋まる。そして打撃好調のカイル・シーガーには1ボール2ストライクと追い込みながらも、低めのストレートをセンター前へ弾き返された。まさかの3連打でダルビッシュは2点を失う。

 なおも次打者にこのイニング2つ目の四球を与え、再び満塁。ミゲル・オリボはスライダーで打ち取ったが、力のない打球はライトの前に落ちた。タイムリーとなり、さらに1点を追加される。ここで打席には、メジャー2試合目のスタメン出場となる8番・川崎。日本で何度も対戦経験のある相手を意識しすぎたのか、ボールの抑えがきかない。すべて高めに浮き、ストレートの押し出し四球を与えてしまう。結局、ダルビッシュは立ち上がりに4失点を喫した。

 早く立ち直りたいダルビッシュだが、2回もマリナーズ打線につかまる。1死からイチローと2回目の対決。しかし、初球、2球と明らかなボール。ストライクを取りにいった3球目を狙い打たれた。甘く入ったツーシームを叩かれ、ライトの頭上を破る二塁打。2死後、シーガーにもボールが先行して、ストレートをライト線へ運ばれた。イチローが生還し、この回も1点を失う。

 だが、日本から来たスーパー右腕を強力打線が救う。初回、連続四球を足がかりにマイケル・ヤング、ネルソン・クルーズが連続タイムリーで反撃を開始。3点を追う3回にはクルーズがレフトスタンドへ飛び込む同点3ランを放ち、試合を振り出しに戻した。

 ダルビッシュは3回も川崎にヒットを許して走者を背負ったが、2死一、二塁からアックリーの鋭い打球がショートの正面を突き、なんとか無失点で切り抜ける。4回は先頭のイチローに3ボール1ストライクとカウントを悪くしながら、ツーシームを引っかけさせてファーストゴロ。続くスモーク、シーガーに外野に飛ばされたが、いずれもフライに打ち取り、初めて三者凡退でベンチに戻った。

 すると味方打線が、さらに右腕を援護する。直後の4回、ミッチ・モアランドの2ランで勝ち越しに成功し、マリナーズ先発のヘクター・ノエシをKO。さらにジョシュ・ハミルトンのソロアーチも飛び出して、レンジャーズが8−5と試合をひっくり返した。

 最悪の立ち上がりから、勝ち投手の目も出てきたダルビッシュは5回、先頭のソーンダースをスライダーで空振り三振に切ってとる。さらにオリボをインローのストレートで詰まらせ、ピッチャーゴロ。前の打席でヒットを打たれている川崎には3ボールまでいったが、同じくストレートでセンターフライに打ち取った。

 球数が100球を越えた6回は、2死から四球を与え、イチローと4度目の顔合わせ。2ボール1ストライクからストレートで攻めるも、メジャーで2400安打以上を放っているヒットマシンは難なく、これを弾き返す。打球はセンター前へ抜け、直接対決第1Rは猛打賞をマークしたイチローに軍配が上がった。2死一、二塁とピンチを招いたところで、ロン・ワシントン監督がベンチから出てきてピッチャー交代。6回途中5失点ながらデビュー登板を終えた右腕を、レンジャーズ・ボールパークに詰めかけた大観衆はスタンディング・オベーションでねぎらった。

 この日のダルビッシュはボールのリリースポイントが一定せず、右方向へ抜けたり、左に叩きつけるような投球が目立った。ただ、投げるなかでバラツキの幅は小さくなり、中盤の3イニングはイチローのヒット1本に封じ、修正能力があることを示した。決して満足な出来とは言えないなかでもつかんだ記念の1勝。輝く背番号11の新たな伝説がここからスタートする。