フランスで開催されているEURO2016は、グループステージが終了した。決勝トーナメントに進む16カ国が決定し、25日の夜から熾烈な一発勝負がスタートする。前回王者スペインがD組2位通過となったため、1回戦からイタリア対スペインの前回大会決勝カードが実現。その他にもクロアチア対ポルトガルなど、好カードが目白押しだ。

 

 スペイン、イングランドがともにグループステージを2位で通過した影響で、その2カ国に加えドイツ、イタリア、フランスが決勝までに潰し合う“死の山”が今回のEURO2016の見どころである。EURO2連覇中のスペインとて、そう易々と3連覇は実現できないだろう。

 

 そこで優勝候補筆頭にはブラジルW杯を制したドイツを挙げたい。生粋のCFがマリオ・ゴメス(ベジクタシュ)しかいなくとも、ゼロトップシステムが相手ゴールを脅かす。EURO予選からの勢いをそのままにグループCを首位で駆け上がってきた。MFメスト・エジル(アーセナル)、MFトニ・クロース(レアル・マドリード)ら豪華な攻撃陣に加え、グループステージでは無失点と安定した守備も光る。スロバキアを破れば、準々決勝でイタリア対スペインの勝者とぶつかる。5大会ぶりの欧州制覇へは険しき道が続くが、総合力の高いドイツなら乗り越えられるはずだ。

 

 同じく“死の山”に入ったフランスは、自国開催とあって、意地を見せたいところだ。3トップの両翼を担うディミトリ・パイエ(ウェストハム)とアントワーヌ・グリエーズマン(アトレティコ・マドリード)が鋭く切り込んでくる攻撃に、中盤からポール・ポグバ(ユベントス)が積極的に絡む。身体能力、テクニックを兼ね備えたポグバを止める術は、複数でボールを奪いに行くしかなさそうだ。守備に若干の不安は残すものの、“レ・ブルー”が上位に食い込んでくる可能性は高い。

 

 逆の山に目を移すと、クロアチアとウェールズがダークホースとして面白い存在だ。グループリーグでスペインに苦杯をなめさせたクロアチアは、1回戦でポルトガルと対戦する。3大会ぶりにEURO本選でスペインに土をつけたクロアチアの粘り強い守備からの速攻は、ポルトガルを相手にも発揮されそうだ。一方のウェールズもチーム全体がサボらずに守備意識を高く持ち、攻撃陣にはMFガレス・ベイル(レアル・マドリード)とMFアーロン・ラムジー(アーセナル)らタレントを揃えている。中でも3戦連発のベイルにはFKという飛び道具もあり、一発で勝負を決められる力がある。

 

 どこの国が勝ち上がってきても、トップレベルのプレーを堪能できる。サッカーファンにとって、決勝までラグジュアリーな時間を過ごせるはずだ。

 

(文/大木雄貴)