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(写真:スペシャリストとユーティリティープレーヤーの招集を発表した霜田代表ダイレクター)

 14日、日本サッカー協会(JFA)は都内で会見を行い、リオデジャネイロ五輪に出場するU-23日本代表のオーバーエイジ(24歳以上)枠2人を発表した。最大3枠ある内のDF塩谷司(サンフレッチェ広島)とDF藤春廣輝(ガンバ大阪)が内定し、3人目に関しては未だJリーグクラブと交渉中だという。塩谷と藤春を含む最終メンバー18人とバックアップメンバー4人は7月1日に決定する。

 

 JFA霜田正浩ナショナルチームダイレクターは「選考に関しては手倉森誠監督がコーチングスタッフと相談して、現有戦力の中で誰をオーバーエイジで呼んだらチーム力が上がるか。どこのポジションに、どんな選手を入れれば戦力がアップするのかという議論を重ねて、この2人の名前が出てきた」と選考に至った経緯を説明した。3人目に関しては「決まり次第、速やかに発表する」と煙に巻いた。残り1枠を協会として使いたいかどうか、という質問に対しては「使いたい」と答えた。

 

 議論を重ねる中で、やはり相次ぐU-23代表DF陣の怪我人続出の影響は大きかった。3つまで使えるオーバーエイジ枠のうち、2つを最終ラインで使うことになった。

 

 霜田ナショナルチームダイレクターは藤春をこう評す。

「日本ではなかなか左サイドバックは(人材が)豊富なわけではない。藤春のスピード、突破力というのは、十分世界に通用すると思っています。左サイドバックのスペシャリストが少ないということもあるので、藤春が左サイドバックを主な活躍の場として、チームに貢献してくれると思っている」

 

 一方の塩谷に関しては「センターバックだけでなくサイドバック、ボランチもできるような攻撃的な能力を兼ね備えています。いろいろなポジションでユーティリティーさを発揮してくれるのではないかなと思っている」と語った。

 

 JFAとしては、この2人に国際舞台で成長の場を与え、A代表に還元する狙いもあるようだ。霜田ナショナルチームダイレクターが「(ヴァイッド)ハリルホジッチ監督ともいろいろ話をした」と言ったあとに、「リオだけでなく、ロシアに繋がる戦力だという事で、この2人には大きな期待をかけています」と話した。

 

 U-23代表の手倉森監督もJFAを通じて「日本代表にはまだ定着しきれていませんが、これからの伸びしろがすごくある選手たちです。U-23日本代表のレベルを引き上げてくれると共に、2018年のロシアを見据えているこのチームで、彼らも成長する可能性があると思う」と、似たような趣旨のコメントを残している。

 

 リオ五輪で日本の初戦は8月5日、その約1カ月後にはA代表のロシアW杯出場を懸けたアジア最終予選がスタートする。オーバーエイジでA代表の主力を派遣し、怪我をされてはハリルホジッチ監督が困るのは容易に想像がつく。A代表との事情も絡んでの人選だったのだろう。

 

 Aマッチ出場試合数は塩谷が2、藤春が3。2人ともアジアチャンピオンズリーグ、塩谷に関してはクラブW杯とクラブ単位での国際大会の経験はあるが、国を代表しての試合出場は少ない。アンダーカテゴリーとはいえ、この2人が国際舞台で日の丸を背負うことは、A代表を指揮するハリルホジッチ監督にとってもメリットとなる。

 

 2人の経験の乏しさが露呈して、チームのプラスアルファではなく穴となるか。それとも後輩たちを引っ張り、ロンドン五輪時のDF吉田麻也のようにリーダーとしての自覚が芽生え、急成長するのか。後者であることを強く願いたい。

 

(文/大木雄貴)