テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有は25日、本拠地のニューヨーク・ヤンキース戦に先発し、メジャー移籍後最長となる8回3分の1、119球を投げて7安打無失点で3勝目(0敗)をあげた。ダルビッシュは初回から抜群のピッチングをみせ、今季初の2ケタ奪三振(10個)。惜しくも完封は逃したものの、ヤンキースの先発・黒田博樹との日本人対決を制した。黒田は6回3分の2、107球を投げて5安打2失点。先発としての役目を果たしたが、3敗目(1勝)を喫した。
 メジャーリーグ在籍3年間で41勝をあげ、実績十分の黒田と、1億ドルを超える投資額で海を渡り、話題性十分のダルビッシュ。注目の初対決はお互いが持ち味を出した投手戦となった。

 そんななか、勝ち名乗りを受けたのはダルビッシュだ。メジャー4試合目の登板でベストオブベストとも言える内容。マウンドを降りる際、スタンディングオーベーションで迎えるファンの歓声に応えたところに、本人も納得した様子が見てとれた。

 この日のダルビッシュは、メジャーNo.1のチーム本塁打28本を放っている強力ヤンキース打線に立ち上がりからセットポジションでの投球を試みる。初回、先頭打者のデレク・ジーターを初球のストレートでショートゴロに打ち取ると、四球でひとり走者を背負いながら、怖い主砲のアレックス・ロドリゲスを追い込んで外のスライダーで空振り三振に仕留めた。

 一方の黒田が対するのも、ヤンキースを上回る驚異のチーム打率.298を誇るレンジャーズ打線。初回、先頭のイアン・キンスラーに投じたスライダーが甘く入る。今季既に4本塁打をマークしている強打のリードオフマンはこれを逃さない。左中間スタンドへ運ぶ先制ホームランで1点を先行した。だが、黒田は後続の打者にいずれも凡打を打たせ、すぐに立ち直った。

 ここまでの3試合では奪三振は5個以下だったダルビッシュだが、強力打線相手に序盤から三振を重ねていく。2回はマーク・スウィッシャーをアウトコースのフォーク、ラウル・イバネスを同じく外角のカーブで、いずれも空振り三振に切って取る。続く3回は初ヒットを足がかりに無死満塁と大ピンチを招くが、うるさいカーティス・グランダーソンを外角のカーブで見逃し三振。続くA・ロッドをインコースの直球で詰まらせ、サードゴロ併殺打に打ち取った。狙い通りのピッチングにダルビッシュもガッツポーズをみせる。

 黒田もヒットを許しながら、ボールを低めに集めるが、レンジャーズはワンチャンスにつけこんでくる。3回、2死無走者、2ストライクナッシングからエルビス・アンドラスを4球連続ボールで歩かせると、すかさず二盗を決められる。ここで4割を超える打率で好調のジョシュ・ハミルトンに変化球をうまくライト前へ運ばれた。二塁走者が一気に生還し、2点目を許す。

 援護をもらったダルビッシュの奪三振ショーは止まらない。4回は先頭のロビンソン・カノに左中間を破られるも、マーク・テシェイラを3球三振。ニック・スウィシャーも低めに曲がり落ちるカーブで追い込み、間髪入れず、スライダーでバットに空を切らせる。無死2塁の状況を全くピンチと感じさせない投球でスコアボードにゼロを重ねていった。

 対する黒田も内容は良かった。ダルビッシュに負けじと4回はデービッド・マーフィー、マイク・ナポリを連続三振。5回は1死一塁の場面でインローに沈む変化球を打たせて併殺を完成させた。6回はこの試合初の三者凡退に封じ、安定したピッチングをみせる。

 ただ、今日に限っていえば、ダルビッシュのほうが上だった。6回はA・ロッド、テシェイラの中軸に対し、真っすぐでバットをへし折り、凡打に仕留める。7回は先頭のイバネス、続くエリク・チャベスをアウトコースのボールで空振り三振。その後、ヒットで2死一塁となり、打席には2安打を許しているジーターが入った。あっという間に2ストライクと追い込むと、スタンドの観衆は三振を期待して拍手を送る。1球ボールを挟んで、4球目は外へのスライダー。ジーターはバットを出すが、ボールに当たらない。このイニングはすべてのアウトを空振り三振で奪い、スタジアムの歓声は最高潮に達した。

 8回もグランダーソンからこの日10個目の三振を記録するなど、三者凡退。メジャー初完封を目指した9回のマウンドでは、1死からスウィシャーにレフト前へ流し打たれたところで降板となったが、ビッグネームの揃うヤンキース打線相手に文句のつけようがない快投だった。

 10奪三振のうち、左打者(スイッチ含む)から8個をマークした。課題とされていた左打者対策も、カーブ、縦のスライダーなどをアウトコースのボールゾーンに沈め、ここ2試合で打ちとるコツをつかんできた。指にかからない抜け球も前回登板から、さらに減少している。慣れないボールやバッターに、ダルビッシュは開幕から1カ月も経たない短期間で適応しつつある。やはり、この右腕、1億ドルの価値がある。地元テキサスのファンに、そう思わせるには十分すぎる夜だった。