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(写真:各界のメダリストやレジェンドが参加した)

 リオデジャネイロ五輪女子レスリング53キロ級日本代表・吉田沙保里の壮行会が2日、東京都内のホテルで開催された。女子に限れば五輪史上初となる4連覇がかかる吉田を激励するために1096人が集まり、親交のある女子サッカーの澤穂希、競泳の北島康介ら各界の著名人が駆け付けた。

 

 会の主役である吉田は屈強な男2人に担がれて壇上に上がった。バルセロナ五輪柔道金メダリストの吉田秀彦、総合格闘技イベントRIZINの高田延彦統括本部長を従えての登場。代表選手団の公式ウェアを纏って、胸には3大会での金メダルが飾られていた。

 

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(写真:4連覇を祈願して金ダルマに目を入れた)

 ど派手な入場で会をスタートさせると、元プロレスラーで参議院議員のアントニオ猪木が乾杯の音頭を取るなどして盛り上げた。今年現役を引退したばかりの澤、北島らが激励コメント。俳優の岩城滉一、お笑いタレントの木梨憲武も駆け付け、各界の著名人が吉田にエールを送った。

 

 所属企業や学校、縁のある町や出身校でもない一個人の壮行会は異例のことだ。それだけ吉田の人徳があり、4連覇への期待が大きいともいえる。「たくさんの方に激励や励ましの言葉をいただいた。改めて、こんなに応援されていると知り、力をもらいました。絶対に4連覇をしないといけない」。壮行会を終えて、吉田は気を引き締めた。

 

 4連覇を達成できれば、男子円盤投げで1956年メルボリン五輪から68年のメキシコ五輪を制したアル・オーター(アメリカ)、男子走り幅跳びで84年のロサンゼルス五輪から96年のアトランタ五輪で頂点に立ったカール・ルイス(アメリカ)に次ぐ3人目の快挙だ。女子では初となる偉業に加え、リオではジンクスに挑む。

 

 前回のロンドン五輪では日本選手団の旗手を務めた吉田は、リオでは主将を任されることが決定している。選手団の主将は92年バルセロナ五輪で男子柔道の古賀稔彦が金メダルを獲得して以降はメダルなしと近年は苦戦が続いている。吉田は「言われているだけ。あとは勝てばなくなる。私が金を獲ってなくしたい」と“呪縛”を振り払う気満々である。

 

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(写真:栄監督<左>との二人三脚で偉業に挑戦する>

「いろいろな方の応援の声が吉田選手の力になる」とは、日本レスリング協会の福田富昭会長の談だ。出身校である至学館大学(吉田が在学時は中京女子大)の谷岡郁子学長は「ロンドン五輪では旗手を務めて、“大丈夫だろうか”とヤキモキした。自らハードルを上げて、それを突破するのが沙保里。主将もその勢いで超えると信じています。沙保里は応援を自らの力にできる。本当に偉大な選手」と称えた。

 

「4連覇はそう簡単なことではないと思います。父もいません。3歳から父に習ったタックル。攻める気持ち、攻めるレスリングを出し切って、4連覇を目指して頑張りたいと思います」。元レスリング選手だった父・栄勝と日本代表の栄和人監督に育てられ、世界女王に成長してきた。レスリング界の絶対女王はリオのマットで天国の父に4個目の金メダルを捧げる。

 

(文・写真/杉浦泰介)