「神ってる」男と呼ばれる鈴木誠也が大ブレークした理由のひとつとして、福岡ソフトバンクの主砲・内川聖一との自主トレがあげられる。内川の横浜時代の先輩・石井琢朗打撃コーチのセッティングによるものだと言われている。

 

 内川は独自の打撃観を持つ。「審判の決めるスットライクゾーンと僕のストライクゾーンは同じではない」。これなどは、その典型だろう。

 

 内川は続けた。「要は野球というスポーツをつくった人が勝手に“ここがストライク”と決め、審判がそれに従っているだけでしょう。僕がそれに従うかどうかは別問題。よく“ボール球を打ってもヒットにはならない”という人もいるけど、それはウソ。“そこは自分のストライクゾーンだ”と思えるなら打ってもいいんです。

 

 ただ、ボール球に手を出した以上は、きちんと自分の言葉で説明できなければいけません。こう思ったから、このようにして打とうと思いました、と自分の言葉でね」

 

 鈴木が内川から感化されたことは想像に難くない。それが証拠に、昨年までは「振らされる」場面が目立ったが、今年は自らの意思で、「振っている」。内川のように“自分のストライクゾーン”をつくりつつあるのではないか。

 

 2009、13年とWBCに2回出場した内川は通算3割4分1厘の高打率を残している。自分のストライクゾーンを持っているため、審判のジャッジに左右されないのだ。

 

 そう考えると、“内川流”の鈴木も国際試合や短期決戦には強いはずだ。気の早い話だが、ポストシーズンゲームでも“神ってる”シーンが見られそうだ。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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