19日、東京・有明コロシアムでbjリーグ2011−2012ファイナルズが行われた。イースタンは浜松・東三河フェニックスが横浜ビー・コルセアーズを、ウエスタンは琉球ゴールデンキングスが京都ハンナリーズをそれぞれ下した。この結果、明日のファイナルは2季連続で浜松対沖縄、3位決定戦は横浜対京都の組み合わせとなった。
(写真:浜松対横浜のティップオフ)

◇イースタン・カンファレンス ファイナル
 前半リード許すも逆転勝利
浜松・東三河フェニックス 87−78 横浜ビー・コルセアーズ
【第1Q】10−21【第2Q】15−17【第3Q】31−24【第4Q】31−16
 王者・浜松が、後半から本来の力を発揮し、逆転勝利を収めた。第1Qは10点、第2Qでは15点しか奪えなかったものの、後半は2ピリオドともに31得点をマークした。

「横浜と手をつないでいるようなバスケだった」
 浜松の河合竜児ヘッドコーチ(HC)が、こう語るとおり、前半は横浜のテンポの遅い攻撃に対して受け身になった。リードを許した主な要因はディフェンス(DF)が機能していなかったこと。河合HCが、浜松が本来のアグレッシブなDFをできていないことに気が付いたのは、ハーフタイムでスタッツを確認した時だ。
「チームのファウル数を見た時、一番多かったのは仲西翔自の2。あとの選手は1もしくはゼロだった」
 指揮官は「DFが機能していない証拠だ! 何をやっているんだ!」と選手に檄をとばした。

 ただ、苦戦は予想の範囲内でもあった。
「横浜がリーグ最少失点を樹立した理由は、オフェンス(OF)の回数が少ないから。ここが、(同じDFを売りにしている)浜松と違う。なので、大きく点差が離れることは絶対にないと思っていた」

 だからこそハーフタイムでは、「我慢してくれ。絶対に流れはくるから、その瞬間まで耐えろ」と選手に指示を出した。河合HCが思い出していたのは、カンファレンスセミファイナルのアルビレックス新潟BB戦での敗戦だ。この試合、浜松は第3Q残り1分の時点で16点をリードしていたものの、逆転を許した。この苦い黒星を例に出し、「一瞬で開いた点差は、一瞬で追いつける。我慢して流れが来るのを待ち、来た瞬間に掴んで放すな」と選手たちを後半のコートへ送り出した。
 
 指揮官の思いが届いた浜松の選手たちは、第3Q開始から横浜にプレスをかけ続けた。ファウル数は前半を終えて7であったのに対し、第3Qだけで8を記録している。相手のスローテンポに、浜松の選手が受け身にならなかった証拠だろう。激しいDFから速攻をしかける浜松本来の戦い方が戻っていた。

 第3Q中盤では、今季のイースタンカンファレンスのベスト5に選出されたジャメイン・ディクソンが魅せた。速攻からスピードに乗ってゴール前まで駆け上がり、ボールを持ってジャンプ。DFに入った横浜の選手をダブルクラッチでいなして、ゴールを奪った。第3Qを終えて、56−62。6点差にまで詰め寄り、最後の10分間に突入した。
(写真:強引な突破を見せるジャメイン・ディクソン)

 迎えた最終Qは、点の奪い合いになった。一時、仲西がフリースローを2本決め、これまでで最少の5点差まで詰め寄るが、粘る横浜にあと一歩届かない。逆に、5分を過ぎて与えられたオフィシャルタイムアウトの時点では、点差は8点に広げられていた。このまま横浜が逃げ切るのか。しかし、タイムアウト後が浜松のハイライトだった。ジーノ・ポマーレのゴールをきっかけに、5連続で得点を重ね、逆転に成功。河合HCの「一瞬で開いた点差は、一瞬で追いつける」という言葉が現実となった。

 その後は、ファウルゲームに出てきた相手にも動じず、フリースローを着実に決めるなど、リードを広げた。DFでは前線からの激しいプレスで相手のミスを誘った。王者の底力を見せた戦いぶりに、河合HCは「プレスをかけたことで、ゆっくり攻めたい横浜を追い込んだと思う。守られているという意識を植え付けることができた」と納得の表情をみせた。

「(新潟戦と今日の前半を例に)もう2度死んでいる。明日は浜松のバスケをして、悔いの残らないようにしよう」
 試合後のミーティングでは、選手にこう語りかけた。浜松は決勝でもアグレッシブなバスケで、大阪エヴェッサ以来の3連覇に挑む。

 一方、敗れた横浜のレジー・ゲーリーHCは、「35分までは素晴らしい試合ができた。しかし、バスケは40分ある」と試合を総括した。前半を終えた時点で、ペースを握っていたのは明らかに横浜だった。しかし、後半は浜松の激しいプレッシャーに圧倒され、攻守において後手に回った。
「3位決定戦では、(受け身にならず)思いっきり戦う」
 負けはしたものの、王者を苦しめたのもまた事実だ。参戦1年目でカンファレンスファイナルに進出したシーズンをいい形で締めくくり、来季につなげる。

◇ウエスタン・カンファレンス ファイナル
 京都、後半の追撃及ばず
琉球ゴールデンキングス 79−74 京都ハンナリーズ
【第1Q】21−12【第2Q】15−14【第3Q】17−20【第4Q】26−28

 沖縄がG山内盛久とG並里成のルーキー2人の活躍で2年連続ファイナル進出を果たした。第1Qから主導権を握ると、一度もリードを許さない。後半は京都の粘りに合ったものの、振り切った。
(写真:チームを牽引した並里)

 チームを勢いに乗せたのは並里だ。第1Q、コート左からドライブで仕掛けて、レイアップシュートを決め、両チーム最初の得点をたたき出す。速攻からのゴールも奪うなど、のっけからエンジンは全開。さらに長短織り交ぜたパスで攻撃を組み立てた。ルーキーに引っ張られるように、沖縄はFアンソニー・マクヘンリーのアリウープあり、G与那嶺翼のブザービーターありと主導権を完全に握った。沖縄からやってきたブースターが大熱狂する中、第1Qは21−12で終えた。

 続く第2Qは、山内がスリーポイントシュートを2本決めて輝きを放つ。プレーイングタイムも第2Qではチーム最長。DFでもルーズボールへ素早く反応し、体を張ってボールをキープした。この試合で山内は10得点を記録。攻守において並里とともに決勝進出に大きく貢献した。予想以上の活躍に、指揮官も「今日はルーキー2人が素晴らしい働きをしてくれた。特に山内はシンデレラボーイといえる」と笑顔を見せた。
 
 沖縄はこのピリオドもFデイビッド・パルマ―がブザービーターを成功させ、これ以上ないかたちで前半を折り返す。桶谷大HCも「前半はイニシアチブをとれた」と試合後に振り返った。

 だが、後半に入ると沖縄の勢いが落ち始める。第3Qは最初の得点を奪われると、連続でスリーポイントシュートも決められた。OFで流れを取り返したかったが、桶谷HCが「すべてにフタをされた」と語った京都のオールコートDFに、スピーディーで流れるような攻撃は鳴りを潜めた。最終Qもバスケットカウントやスリーポイントを決められ、オフィシャルタイムアウト直後には2点差にまで詰め寄られた。

 しかし、そこから踏ん張った。桶谷HCが「2点差になっても、チームメイト同士で“DFをやれ!”などと鼓舞しあっていた」と明かしたように、沖縄は終盤になればなるほど前線からプレスに行っていた。その粘りに相手も根負けしたのか、最後はパルマーから4連続で得点を重ね、点差を一気に10点に広げた。
「この試合のために1週間かけて準備してきた。それを選手たちがしっかりと遂行したからこそ、DF勝ちできたと思う。よく我慢した」
 指揮官は選手たちへの賛辞を惜しまなかった。
(写真:試合中に指示を出す桶谷HCとそれを聞く並里)

 ファイナルで対戦するのは、昨年と同じ浜松だ。
「明日はどれだけ相手の嫌がることをできるか。それを考えて、試合までに選手に刷り込ませる」
 桶谷HCは、その上で「ラストゲームのつもりで戦う」と強い決意を口にした。沖縄を率いて今季で4年目。1年目は王者に輝いた。だからこそ準優勝では意味がないことをわかっている。ファイナルも有明に駆け付ける大観衆とともに、浜松にリベンジを果たす。