7日(日本時間8日)、柔道男子66キロ級は海老沼匡(パーク24)が3位に入り、2大会連続の銅メダルを手にした。決勝は21歳のファビオ・バシレ(イタリア)が、準決勝で海老沼を破ったアン・バウル(韓国)に一本勝ちを収めた。女子52キロ級は中村美里(三井住友海上)が準決勝で敗れたものの、3位決定戦で勝利して銅メダルを獲得した。中村は北京五輪以来、2大会ぶり2度目の銅メダルを掴んだ。優勝はコソボのマイリンダ・ケルメンディ。2位にはイタリアのオデッテ・ジュフリダが入った。

 

 2日続けての悔し涙の銅メダルとなった。海老沼と中村。それぞれ2度目のメダル獲得だが、ほしかったのは金メダルのみ。試合後のインタビューでは目を潤ませた。

 

 海老沼は11年から世界選手権を3連覇するなど、国際大会で結果を残してきた。だが昨年の世界選手権は3回戦敗退。今年の選抜体重別選手権では18歳の阿部一二三(日本体育大)に敗れるなど、不安もないわけではなかった。

 

 2回戦から登場した海老沼は、ブラジルのシャルレス・チバナと対戦した。地元選手相手というやりにくい状況にも、動じず横四方固めで抑え込んだ。3回戦は中国選手を得意の一本背負いで一蹴した。準々決勝でも鮮やかな一本勝ち。オール一本で準決勝まで勝ち上がった。

 

 準決勝は昨年の世界選手権王者アン・バウルとの世界王者対決となった。「気持ちの部分で負けてしまった」と海老沼が振り返る通り、相手への指導をアピールする姿ばかりが目立った。組み手争いも制することができず、両者が決め手を欠いたまま、ゴールデンスコアの延長戦に入った。

 

 海老沼は焦りからか強引な背負いをうつ。十分な体勢でない中で繰り出した技は、相手に返された。有効を取られ、万事休す。海老沼の“ロンドン超え”は叶わなかった。それでも「メダルを獲るのと獲らないとでは違う」と気持ちを切り替えて3位決定戦に臨んだ。

 

 カナダのアントワヌ・ブシャールとの試合では“自分らしさ”を取り戻したようだった。先に指導を取られたものの、積極的に技をうって出た。背負い投げで有効を奪い、リードする。試合時間が残り1分を切ったところで、またしても背負い投げ。ブシャールの背中が畳について、一本勝ちを収めた。

 

 2大会連続の銅メダルにも「力不足」と海老沼は下を向いた。4年後は自国開催の東京五輪が待っている。26歳の海老沼はまだ見ぬ五輪の頂点を目指すのか。まずは国内での熾烈な争いから制さなければいけない。

 

 中村の“3度目の正直”はならなかった。19歳で初出場した北京五輪は3位。「金メダル以外は同じ」と笑顔ひとつ見せなかった。ロンドン五輪ではまさかの初戦敗退に終わり、今回は雪辱を果たすべき舞台のはずだった。

 

 初戦となった2回戦は横四方固めで一本勝ち。準々決勝のナターリャ・クジュティナ(ロシア)には延長戦にもつれる接戦の末、関節技で一本を取った。準決勝の相手はマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)。13年から世界選手権を連覇した実力者だ。

 

 序盤はケルメンディに押されて、受けに回ってしまう。開始26秒で指導を与えられた。ここから攻勢を仕掛けたが、最後までポイントを奪うことはできない。試合終了のドラが鳴らされ、またしても金メダルを手にできなかった。

 

 3位決定戦は敗者復活戦から勝ち上がってきたエリカ・ミランダ(ブラジル)が相手だ。地元の声援を受け勢いに乗ってきている。対する中村は「あと1回。とにかく勝ちにいこう」と気持ちを奮い立たせた。

 

 互いに指導を受けた試合はゴールデンスコアの延長戦に突入した。2分18秒、中村は大外刈りを仕掛けてミランダを畳に叩きつけた。有効が認められ、中村の勝利が確定。2大会ぶりの表彰台を決めた。試合後、中村は「金メダルがほしかった」と語った。3度目の挑戦で、またしても五輪の頂点には届かなかった。

 

(文/杉浦泰介)

 

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