4日、ボクシングのWBOスーパーフライ級タイトルマッチが行われ、王者の井上尚弥(大橋)が同級1位のペッチバンボーン・ゴーキャットジム(タイ)を10ラウンド3分3秒KOで下した。井上は3度目の防衛に成功し、通算戦績は11戦11勝(9KO)となった。またロンドン五輪バンタム級銅メダリストの清水聡(大橋)は李寅圭(韓国)に5ラウンドKO勝ちで、プロデビューを飾った。

 

“怪物”は16連勝中の挑戦者を歯牙にもかけなかった。

 

 井上は日本タイトルを奪取した以来の地元・神奈川県座間市での試合。世界チャンピオンとなっての“凱旋”興行となった。序盤から左ジャブでリードしながら、相手の反撃は冷静にかわす。王者の風格さえ感じさせる圧倒的な立ち上がりだった。

 

 しかし、5ラウンドでローブロー気味のパンチを浴びると、ペッチバンボーンに連打を食らう。足が止まったところを詰められた。そこまでは冷静に戦っていたように見えた井上。闘争心に火がついたのか、一気に畳み掛けるが、打たれ強い挑戦者に踏ん張られた。

 

 その後も井上がダウンこそ奪えなかったものの、相手を圧倒した。そして10ラウンドで試合を決めた。ラウンド終盤にロープ際に追い込むと、残り20秒でよろめかせる。井上はここぞとばかりにラッシュを仕掛ける。ワンツーでぐらつかせて、フィニッシュは右ストレート。パンチが顔面をとらえると、ペッチバンボーンはキャンバスに崩れ落ちた。

 

 挑戦者はなんとか立ち上がったが、レフェリーが両手を振って試合を止めた。3度目の防衛成功にも井上に笑顔はなく、セコンドの父・真吾もリングでの祝福はなかった。井上は「家に帰ったら(父から)お説教ですね。リングに上がってきてもらえないほどの出来だった」と反省した。

 

 本調子ではなかったとの質問にも「言い訳にはならない。これが今日の僕の実力です。最後は意地で出ましたけど、それまでの過程が全然ダメでした。これでビッグマッチなんて言えない。どんどん練習するのみです」と納得はできない様子だった。

 

 所属ジムの大橋秀行会長は9月10日に行われるローマン・ゴンサレス(ニカラグア)対カルロス・クアドラス(スペイン)のWBCスーパーフライ級タイトルマッチ視察を明言した。ロマゴンとの“軽量級最強決定戦”実現へと動き出す。

 

(文/杉浦泰介)