28日、競泳男子400メートル個人メドレーで17歳の萩野公介(御幸ケ原SS)が、同種目で3連覇を狙ったマイケル・フェルプス(米国)を上回り、銅メダルを獲得した。タイムは4分8秒94で自らの持つ日本記録を更新。萩野は現在、栃木・作新学院高3年で、男子高校生が五輪メダルを獲得するのは日本競泳史上初の快挙となった。また堀畑裕也(日体大)は4分13秒30で6位に入った。
 伸び盛りの若者が、“怪物”を破った。
 3番手でラストの自由形勝負となり、フェルプスとのメダル争い。過去2大会を制しているスーパースターは泳ぎに力強さがなく、予選もギリギリの8位通過だった。それでも五輪では10個の金メダルを誇る実力者に追いつかれることなく、逆に引き離して3位でフィニッシュした。

「本調子じゃなかったと思うが、(フェルプスに)勝ったことはうれしい」
 萩野は素直に喜びを口にした。本人には、きっと忘れられない1日になったに違いない。予選は4分10秒01で全体の1位で通過。4月の全日本選手権でマークした日本記録を早速、塗り替えた。

 決勝でのレースプランは「前半からしっかり行く」。最初のバタフライでは6番手だったが、得意の背泳ぎで2位に浮上。優勝したライアン・ロクテ(米国)に次ぎ、いい位置で後半を泳いだことがメダルにつながった。

 フィニッシュ後は、電光掲示板で順位を確認するとガッツポーズ。だが、インタビューでは「(2位に)もうちょっとだった(0.08差)ので悔しい。課題を次につなげたい」と謙虚に語った。生後5カ月で水泳を始め、小学校時代から数々の好成績を残してきた天才スイマーだ。高校生でのメダル獲得は男子では、あの北島康介でさえも成しえなかったこと。泳ぐたびに記録も更新し続ける17歳には、新たなる怪物誕生の予感も漂ってくる。

<北島、ヒヤヒヤの決勝進出>

 3連覇を目指して男子100m平泳ぎに出場した北島康介(日本コカ・コーラ)は準決勝敗退のピンチだった。予選で59秒63を記録し、全体の2位で準決勝へ。ところが、準決勝のレースでは前半で他の選手に先行を許したまま伸び悩んだ。タイムは予選を下回る59秒69。同組4位に終わり、もし次の組で北島の記録を上回る選手が5人出れば、その時点でV3の夢が途切れるところだった。

 幸い次の組で北島より速く泳いだのは2人のみで、まさかの事態は回避できた。思わぬ苦戦に「予選でいい状態かと思ったが、泳ぎを確認したい」とレース後の表情は冴えない。準決勝をトップで通過したキャメロン・ファンデルバーグ(南アフリカ)は北島のベスト記録(58秒90)を上回る58秒83を叩き出した。ただ、北島の勝負強さは折り紙付きだ。決勝の一発勝負で、きっと最高の泳ぎを世界に見せてくれるはずだ。

 また同じく出場した立石諒(NECグリーン)は準決勝で全体の10位(59秒93)となり、決勝には進めなかった。