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(写真:コンディションは決して良くなかったが、抜群のコンビネーションを見せた高橋<奥>と松友)

 24日、世界バドミントン連盟(BWF)スーパーシリーズ(SS)「第35回ヨネックスオープンジャパン」の各種目準決勝が行われた。女子ダブルスは世界ランキング1位の高橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)が同35位の米元小春&田中志穂組(北都銀行)にストレート勝ち。リオデジャネイロ五輪の金メダリスト“タカマツ”ペアは日本人対決を制し、ヨネックスオープン2年ぶりの優勝に王手をかけた。決勝の相手は世界ランキング6位のカミラ・リタ・ユール&クリスティナ・ペダセン組(デンマーク)。リオ五輪ファイナルの再戦となった。

 

 その他の日本勢は女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)と大堀彩(トナミ運輸)がストレート負け。男子ダブルスの園田啓悟&嘉村健士組(トナミ運輸)はファイナルゲームの末、敗れた。

 

 リオ五輪のリマッチが実現

 

 優勝候補の大本命がその実力を発揮した。第1シードの“タカマツ”ペアが、SS8度目の優勝にあと1歩と迫った。

 

“タカマツ”ペアにとって凱旋試合となるヨネックスオープン。リオ五輪の決勝から「バドミントンを始めてから初めて」という10日ほどの休養を経て、調整を進めてきた。今月9日からのナショナルチーム合宿に参加したが、コンディションは戻り切っていない。

 

 それでも周囲からの期待は免れられない。“金メダリスト”“世界ランキング1位”の肩書きは必ずついて回る。「今回はオリンピックに出ているメンバーは少ない。決勝に行くことは最低限だと思っていました」と高橋。“ノルマ”を達成したことで安堵する思いも少なくないだろう。

 

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(写真:松友<左>は巧みなラケットワークで相手を翻弄した)

 一方で松友が「毎回、自分たちがやってきたことを出せるように臨んでいる」と語るように彼女たちがこだわるのは“自分たちらしさ”である。リオで貫いた攻撃的姿勢は、日本に帰ってきても変わることはない。

 

 第1シードの“タカマツ”ペアの準決勝はSS初のベスト4入りを果たした米元&田中ペアと対戦となった。米元とは高校時代から対戦経験も多く、AとBとの違いはあるが同じナショナルチームのメンバーでもある。ノーシードから勝ち上がってきた相手に、高橋の印象はこうだった。「前日(準々決勝)は(リオ五輪の)予選リーグで自分たちも戦ったことのあるタイの選手と接戦で勝っていて、すごく調子良いんだろうなと思っていました」。勢いに乗せないためにも先手を取ることが重要と見ていた。

 

 序盤の点の取り合いから連続ポイントで一気に抜け出した。“タカマツ”ペアは前へ前への姿勢で米元&田中を押し込む。松友が前衛でゲームを作り、高橋が後衛でショットを打ち分ける得意の型を軸に主導権を握った。ラリー戦になっても、先に耐え切れなくなったのは米元&田中ペア。第1ゲームは21-14で先取した。

 

 コートチェンジして臨む第2ゲームは“タカマツ”ペアは苦戦を強いられる。「(風の影響で)シャトルが戻るコートだったので打ちづらかった。相手のリズムに合わせ過ぎました」と松友が反省したように米元と田中に押し込まれる場面も見られた。拮抗したまま試合は進み、19-19となった。ここで高橋がコートに落ちそうなシャトルを連続で拾った。本人が「奇跡に近い」と言うレシーブで食らいつくと、最後は米本の返球がネットに当たる。

 

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(写真:「自分たちがどこまでできるか挑戦したい」と松友<右>は意気込む)

 マッチポイントを掴んだ“タカマツ”ペアは、そのまま21点目を手にした。接戦となった第2ゲームを取って、ストレート勝ちを収めた。松友は「いろいろな経験をしてきていたので、いつもより落ち着いていた。今日は自分たちの方が経験で上回ったから勝てたのかなと思います」と分析する。昨年は松友の試合中のケガにより、初戦突破後に大会を棄権したため、“タカマツ”ペアにとってはヨネックスオープンで2年ぶりの決勝進出だ。

 

 敗れた米元は「昨日までの対戦相手とは全然違う。レシーブしてから攻撃に移るのも早い。高橋のスマッシュの打ち分けがあって、松友のスマッシュ、ドライブ、プッシュの連続攻撃も」と圧倒されたという。ペアを組む田中も「相手が押し返されないようなレシーブを打っても押し返してくる。なかなか崩れてくれなかった」と振り返った。

 

 決勝はリオ五輪ファイナルと同一カード。リタ・ユールとペダセンは長身を生かした強打を繰り出すペアである。高橋が「もし実現するなら戦いたい」と話し、ペダセンは「(“タカマツ”ペアとは)常にタフな試合になるが楽しみ」とコメントしていたリマッチだ。対戦成績は“タカマツ”ペアの8勝4敗。現在6連勝中である。

 

 決勝に向けて、「楽しんで頑張りたい」と高橋と松友は口を揃えた。リベンジに燃えるデンマークペアに対しても、リオ五輪同様に“自分たちらしさ”を貫くつもりだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)