6日、ロシアW杯アジア最終予選の第3節が各地で行われた。グループBの日本代表(FIFAランキング56位)はイラク代表(同128位)と埼玉スタジアムで対戦し、2-1で辛くも勝利した。日本は前半26分にFW原口元気の得点で先制する。後半に入りセットプレーからイラクに同点に追いつかれたが、アディショナルタイムに途中出場のMF山口蛍が勝ち越しゴールを決めた。日本は11日、メルボルンでのオーストラリア代表(同45位)戦に臨む。

 

 ハリルホジッチ監督、選手起用が的中(埼玉)

日本代表 2―1 イラク代表

【得点】

[日] 原口元気(26分)、山口蛍(90+5分)

[イ] サード・アブドゥルアミール(60分)

 

 日本は“ドーハの悲劇”での引き分け後、イラクには6連勝中だった。相性の良い相手をホームに迎えての一戦に、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は調子の良し悪しに関係なく起用し続けていたMF香川真司をベンチに座らせ、MF清武弘嗣をトップ下で起用した。

 

 開始早々、イラクの左コーナーキックからFWサード・アブドゥルアミールにヘディングシュートを許す。このシュートはポストに助けられて日本はヒヤリとさせられた。

 

 スタメン平均23.3歳の若いイラクに流れを渡さないとばかりに日本もイラクゴールに襲い掛かる。ゴール前でMF柏木陽介がFW岡崎慎司に縦パスを入れた。岡崎がポストプレーで落とすと、ペナルティーアーク付近でボールを受けた清武はワントラップ後に左足を振り抜いた。強烈なシュートは惜しくも相手GKに阻まれたが、清武がイラクゴールを脅かした。

 

 26分、日本が先制点をあげる。ハーフライン付近でボールを持った清武が相手をドリブルで1人かわし、右サイドに開いたFW本田圭佑にスルーパスを送った。本田は相手DFと対峙しつつ時間を作る。その間にFW原口元気が猛然とゴール前へ。起点となった清武もスプリントで本田追い越す動きを見せて、右サイドをえぐる。本田から再度ボールを受けた清武がグラウンダーでゴール前へ入れた。ニアサイドに飛び込んだ原口が、右足ヒールで合わせたシュートは相手GKの股下をすり抜けてゴールラインを割った。

 

 代表戦2戦連発となった原口は「キヨ(清武)と圭佑君(本田)が良いコンビネーションで崩してくれた。いいところに入れたし、決まってよかった。得点シーンは落ち着いていた。あれだけ速い攻撃ができればどういう相手でもチャンスはできる。ああいうプレーを増やしたい」と振り返った。

 

 ホーム初戦のUAE戦で先制後すぐに追いつかれたことを踏まえ、日本は冷静にゲームを組み立てる。「(チーム全体で)焦らずいこうという意識があった」(MF柏木陽介)。ペースを落とし、ボールを落ち着かせた日本は無失点で試合を折り返す。

 

 しかし、日本は後半に入り、決定機らしい決定機を作れずにいると、一瞬のスキを突かれる。15分に左サイドで相手にFKを与えると高いボールを放り込まれた。アブドゥルアミールがヘディングで合わせると、GK西川周作は手を伸ばすが無情にも届かない。ボールは日本ゴールに吸い込まれた。

 

 失点後、即座にハリルホジッチは中盤のてこ入れを図る。司令塔役の柏木に代えて、運動量が豊富なMF山口蛍をピッチに送り出した。この采配がのちにズバリ的中する。

 

 その後も指揮官は得点を奪おうと、FW浅野拓磨、FW小林悠を投入。終盤にはDF吉田麻也を最前線に置き、パワープレーで相手ゴールをこじ開けようと試みた。

 

 引き分けが濃厚と思われたアディショナルタイム。前線にポジションを移した吉田が左コーナー付近で相手のファールを誘う。このFKを清武が蹴り、ゴール前へ送った。一度は相手にクリアされてしまうが、落下地点に構えていた山口がペナルティーアークで右足を振り抜く。地を這う弾道でボールはゴール左隅を捉え、値千金の勝ち越しゴールが決まった。

 

 このまま日本は逃げ切ってゲームセット。ギリギリの戦いを制した日本はこれで勝ち点6に積み上げて、首の皮一枚つながった。試合後、日本を窮地から救う勝ち越しゴールを決めた山口は「とりあえず、ふかさず、思い切り振り抜こうと。(シュートを打たないとボールが)相手に渡っていたと思う」と述べた。

 

 1-1の状況で山口を送り出したハリルホジッチ監督は「高い位置でプレスをかけてシュートを打ってほしかった」と起用の意図を明かし、次のオーストラリア戦について「2、3人の変更はあると思う。フィジカル面を充実させないといけない」と語った。貴重な先制点を挙げた原口は「今日の勝利を意味のある勝ち点3にするためには次の試合が大事」と気を引き締めた。

 

 後半の早い時間に追加点を奪えなかった反省点はあるものの、弾みをつけてオーストラリアへ乗り込める。アジア最強であり、日本の苦手な肉弾戦を得意とする相手に指揮官はどうタクトを振るうのか。劇的な勝ち方に気をよくするのも理解できるが、綱渡り状態であることに変わりはない。

 

(文/大木雄貴)