11日、ロシアW杯アジア最終予選のグループB第4節が行われ、日本代表(FIFAランキング56位)はオーストラリア代表(同45位)に1-1で引き分けた。敵地オーストラリア・メルボルンでの試合は、日本が前半5分にMF原口元気(ヘルタ・ベルリン)のゴールで幸先よく先制した。このまま逃げ切りたい日本だったが、後半8分にPKを決められ、追いつかれた。勝ち点1を分け合った両軍は日本が勝ち点7、オーストラリアが同8となった。

 

 原口、W杯予選3戦連続ゴール(メルボルン)

日本代表 1-1 オーストラリア代表

【得点】

[日] 原口元気(5分)

[オ] ミル・ジェディナク(53分)

 

「勝ち点1というより、勝ち点2を失った」

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は先制点を奪いながら、勝ち切れなかったことを悔やんだ。

 

 この試合まで3節を終えて勝ち点6の日本は、前節は土壇場に決勝ゴールが生まれて2連勝中だった。対するオーストラリアは勝ち点7のグループBの首位に立っていた。日本はオーストラリアとはW杯予選に限れば、4分け2敗と一度も勝ったことがない。“天敵”とも言えるアジアのライバルを叩いて勢いに乗りたいところだった。

 

 ハリルホジッチ監督は「サプライズを起こそうと思った」とFW本田圭佑(ACミラン)をワントップで起用。数年ぶりに最前線でプレーする本田の脇を固めるサイドアタッカーには、右にMF小林悠(川崎フロンターレ)、左に原口を置いた。トップ下には香川真司(ボルシア・ドルトムント)を復帰させ、攻撃的な布陣を敷く。一方で、ボランチ長谷部誠(フランクフルト)の相棒に、前節に劇的な決勝弾を決めた山口蛍(セレッソ大阪)を選んだ。

 

 開始早々、オーストラリアに先制パンチを見舞ったのは原口だ。ハーフウェーライン付近でボールを奪うと、長谷部にパス。自らは前線へと駆け出すと、長谷部は前線の本田にボールを預けた。ゴールに背を向けていた本田は反転して左足でスルーパスを送った。DFラインの裏を狙っていた原口はGKと1対1になり、冷静にゴール右へ流し込んだ。

 

 縦に速いサッカーを標榜するハリルホジッチ監督の理想のかたちだった。お膳立てをした本田は「あのかたちは非常に良かった」と胸を張る。ゴールを決めた原口が「何度も監督から言われていた」と語るように、狙い通りの得点だったと言えよう。原口はこれでタイ戦、イラク戦に続いてW杯最終予選3試合連発だ。敵地での先制点はチームに勢いを生んだ。原口は28分には左サイドからカットインして、ミドルシュートを放った。ゴールの枠は外れたが、彼のアグレッシブさが表れたプレーだった。

 

 原口はさらにチャンスを演出する。29分には左サイドの深い位置で本田の縦パスを受けて、ペナルティーエリア内に切り込んだ。一旦、切り返してパスを送ると、本田が左足で合わせた。しかし、シュートはゴールキーパーのほぼ正面を突いた。

 

 追加点を奪うチャンスもありながら、得点が入らない嫌なムードが立ち込めてくる。オーストラリアもホームで易々と勝ち点3をプレゼントするわけにはいかない。すると後半6分、左サイドで存在感を出していたMFブラッド・スミス(ボーンマス)がクロスを入れる。ファーサイドに流れたボールをフリーで受けたFWトミ・ユリッチ(ルツェルン)。スイスでプレーする長身FWは右足でトラップし、ボールをコントロールしようとしていた。そこに帰陣していた原口が後ろからユリッチを倒してしまう。

 

 主審はペナルティースポットを指差し、PKを宣告。ユリッチは足元に収めていたわけではなかっただけに痛恨のファウルだった。PKを獲得したオーストラリアはMFミル・ジェディナク(アストン・ビラ)がキッカーを務める。32歳のキャプテンは落ち着いてGKの動きを見極めて、ゴールほぼ正面に蹴り込んだ。日本は後半すぐに追いつかれてしまった。

 

 オーストラリアは24分に、ユリッチに代えてティム・ケーヒル(メルボルン・シティ)を投入する。地元チームに所属する“日本キラー”の登場にスタジアムが大いに沸いた。

 

 これで俄然、勢いに乗るオーストラリアに対し、日本も反撃する。右サイドバック酒井高徳(ハンブルガーSV)が上げたボールに、小林が頭で合わせた。ここは相手GKに弾き出され、ゴールネットを揺らすことはできなかった。ハリルホジッチ監督も重い腰を上げて、36分には小林に代えて清武弘嗣(セビージャ)、39分には本田に代えて浅野琢磨(シュツットガルト)をピッチへと送り出した。

 

 40分には原口のクロスに浅野が飛び込んだが、伸ばした足はボールに届かなかった。このまま1-1でタイムアップ。日本とオーストラリアが勝ち点1を分け合ったかたちとなった。キャプテンの長谷部は「もっとうまく試合を運べれば勝ち点3を取れた」と唇を噛んだ。早い時間に1点を奪っていただけに試合を優位に進めたかった。だが、どちらかいえば押し込んでいたのはオーストラリア。そのあたりにゲームマネジメントの拙さを感じさせる。追いつかれた後の交代策にしても、最初の1枚目は残り10分を切ってから。39分からピッチに立った浅野はオフサイドに何度かかかったものの、そのスピードは相手守備陣には脅威だったに違いない。

 

 グループB最大の強敵ともいえるオーストラリア相手に敵地で勝ち点1。まずまずの出来だととらえることもできるかもしれないが、指揮官の言葉通り「勝ち点2を失った」印象が強い。次節は上位のサウジアラビアとホームで戦う。「勝ち点3はマスト」。そう長谷部が口にしたように、最終予選の折り返し地点で、是が非でも勝ち点を10に乗せたい。

 

(文/杉浦泰介)