巨人の坂本勇人がショートとしてはセ・リーグで初めて首位打者に輝いた。運動量の多いポジションでの首位打者だけに価値がある。

 

 坂本の戴冠に勝るとも劣らないのが、菊池涼介の自身初の打撃タイトルとなるシーズン最多安打である。181本を記録し、2位・大島洋平(中日)に6本の差をつけた。

 

 シーズン最多安打をマークすると同時に、菊池は2年連続で最多犠打をマークした。2番という制約の多いポジションで181本ものヒットを記録するのは容易ではない。

 

 自らが出塁する。ランナーを進める。2番打者として求められる仕事を完璧にこなしながら、一振りで試合を決めることもできる。まさに、カープ史上最強の2番である。

 

 特筆すべきは、ゲーム差4.5で迎えた8月7日の巨人戦だ。この試合に負ければゲーム差は3.5となり、いよいよ巨人は勢いづく。

 

 6対7で試合は9回裏へ。マウンドには守護神・澤村拓一。2死無走者と敗色濃厚の場面で、菊池は起死回生の同点ホームランをレフトスタンドに叩き込んだ。勢いに乗るカープは4番・新井貴浩がサヨナラタイムリーを放ち、連敗を4で止めた。この逆転勝ちでカープは再び上昇気流に乗った。

 

 守っても4年連続でリーグ最多補殺を記録した。守備での貢献度は、ここで改めて記すまでもない。数人いるMVP候補の中でも、最有力は彼を措いて他にはいない。

 

 25年ぶりの優勝を決めた9月10日の巨人戦。胴上げまでに、しばらく時間があった。ベンチに目をやると黒田博樹の横に菊池がいた。談笑する2人。チームにおける菊池の“格付け”が見てとれた。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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