2日、柔道男子100キロ級、女子78キロ級が行なわれ、穴井隆将(天理大職)は1回戦で地元英国のジェームズ・オースティンに優勢勝ちをおさめたが、続く2回戦でルカシュ・クルバレク(チェコ)に横四方固めで一本負けを喫した。一方、緒方亜香里(筑波大)も2回戦でマリンド・フェルケルク(オランダ)に敗れた。
 エースが早くも姿を消した。2010年世界選手権で優勝し、今大会でも金メダル候補の一人として大きな期待を寄せられていた穴井。1回戦では地元選手への大きな歓声の中、しっかりと優勢勝ちをおさめて見せた。

 そして迎えた2回戦、相手は198センチと長身で成長著しい21歳の新鋭。穴井は貫録を見せるかのように、積極的に前へ前へと突き進む。立ち上がりから足技で、相手を脅かした。先に仕掛けにいく穴井に対し、両手をついて極端な防御の姿勢をするクルバレク。開始1分もしないうちに指導が与えられた。

 その後のクルバレクは一転、動きが激しくなり、技をかけにいくも、穴井はこれを落ち着いてさばき、全く動じた様子はうかがえない。残り約3分、穴井は右手でクルバレクの袖をしぼると、内股をかける。惜しくもポイントとはならなかったが、完全に試合の主導権を握っていた。

 ところが、その矢先、残り約2分半のところで、クルバレクが巴投げをかけてきた。穴井もなんとか体をうまく回転させ、凌ぎ切る。しかし、そのままクルバレクは寝技に持ち込もうと、穴井の両足の間に無理やり自らの左足を入れ、穴井の体を回転させた。

 穴井はクルバレクの左足を挟み込み、押さえこませないようにするも、耐えきることができない。クルバレクの左足がスルリと抜け、横四方固めで押さえこまれた。

「逃げろ! 体をひねろ!」
 井上康生コーチの声に応えようとする穴井だったが、ガッチリと押さえこまれた状態からはなす術もない。25秒後、無情にも一本負けを知らせるブザーが鳴った。

 すぐには現実を受け入れられなかったのだろう。何が起きたのかわからないといった様子で、しばらくは天井を見上げたまま、動くことができなかった。むっくりと起き上がると、うなだれるように礼をした穴井。クルバレクと力なく握手を交わすと、悔し涙とともに静かに会場を後にした。

 これで男子は明日の100キロ超級に出場する上川大樹(京葉ガス)を一人残して、金メダルは0。上川が金メダルを逃せば、過去ワーストの1個に終わったソウル五輪を下回り、史上初の金メダルなしという結果となる。果たして、最終日に日本柔道の意地を見せることができるか。