4日、男子サッカー競技の準々決勝が行われ、U-23日本代表が同エジプト代表(アフリカ3位)と対戦した。日本は前半14分、FW永井謙佑(名古屋)のゴールで先制。その後、2点を追加してエジプトを突き放した。日本のベスト4進出は銅メダルを獲得したメキシコ大会以来、44年ぶり。準決勝は7日に行われ、メキシコ(北中米カリブ海1位)と対戦する。

◇準々決勝
 清武、快勝導く2アシスト(マンチェスター)
U-23日本代表 3−0 U-23エジプト代表
【得点】
[日] 永井謙佑(14分)、吉田麻也(78分)、大津祐樹(84分)
 会心の勝利だ。中田英寿ら“黄金世代”がシドニーで越えられなかったベスト8の壁を軽々と突破し、日本サッカー史に残るメキシコ五輪の“レジェンド”に肩を並べた。攻撃では確実にチャンスを生かして3ゴール。守備陣は4試合連続で無失点に抑えた。快勝劇を演出したのはMF清武弘嗣(ニュルンベルク)。2アシストを含めて全ゴールに絡み、献身的なプレッシングで守備にも貢献した。

 序盤から主導権を握った。前半1分、清武がPA内中央でヘディングシュート。7分には、MF東慶悟(大宮)がPA内左サイドに抜け出してクロス。これはDFにクリアされたものの、立て続けにチャンスをつくってエジプトを押し込んでいく。

 待望の先制点は14分に生まれる。清武が永井のゴールをアシストした。右サイドで相手DFにプレスをかけてボールを奪うと、すかさずアーリークロス。反応した永井が飛び出してきたGKをかわし、ゴールに流し込んだ。清武の高い守備意識、そして味方の位置を正確に把握する視野の広さが光った。

 しかし、先制を喜ぶ日本にアクシデントが起こる。永井がシュートを打った際にDFと接触して左太ももを痛めたのだ。一度はテーピングを巻いてピッチに戻ったが、20分、自らベンチに向かって×印を示し、MF齋藤学(横浜FM)と交代。歓喜が一転し、日本を嫌な緊張感が包みこんだ。

 この交代を機に日本はエジプトにボールを支配され、守勢を強いられる。ゴールを許せば完全に主導権を握られかねない状況だった。だが、日本は全員サッカーでそれを許さない。前線からプレスをかけてゴール前にボールを入れさせず、シュートに持ち込まれても守備陣が粘り強く体を寄せて簡単に打たせなかった。

 すると41分、清武が日本に流れを引き戻す。ピッチ中央で相手からボールを奪うと、右サイドを抜け出した東にパス。そこから齋藤にPA手前でスルーパスが通る。日本の速攻にたまらず、エジプトのDFサラデルディン・サードは斎藤を後ろから倒した。このプレーでサードが一発退場。日本はリードを保ち、さらには数的優位に立つという願ってもない展開で試合を折り返した。

 後半は10人のエジプトに対してポゼッションを高め、じっくりと追加点を狙いにいく。順調に試合を運んでいたかに見えた日本だが、19分、再びアクシデントが起きた。東が左足を痛めてピッチに倒れ込み、担架で運び出される。いったんはプレーに復帰したが、26分、DF酒井高徳(シュツットガルト)と交代。またしてもケガによる選手交代で嫌な空気が日本サイドに流れた。

 しかし、主導権を渡さなかった。35分、追加点を奪い、突き放す。貴重な2点目をアシストしたのはまたも清武だ。右サイドからのFKをDF吉田麻也(VVV)にピタリと合わせた。精度の高いセットプレーでチームの勝利を、ほぼ確実にした。

 波にの乗る男の活躍はまだ終わらない。39分には、ダメ押し点の起点となる。左サイドでボールを受けると、タメをつくってからオーバーラップしたMF扇原貴宏(C大阪)にパス。ゴール前に上がったクロスをMF大津祐樹(ボルシアMG)が頭で叩き込んだ。清武は直後にMF宇佐美貴史(ホッフェンハイム)と交代。全得点に絡んだ背番号17に、7万人以上が詰め掛けたスタンドから賞賛の拍手が降り注いだ。

 守っては90分をとおして決定機をつくらせず、完封勝ち。攻守がかみ合い、見事、準決勝への扉を開いた。

「チーム全体で勝ち取った勝利」
 関塚隆監督は試合をこう総括した。負傷によるトラブルでペースが乱れそうになりながらも、交代した選手を含めた全員がハードワークを惜しまなかった。誰が出ても戦い方は変わらない。メンバー選考に紆余曲折があったのがウソのように、これが関塚ジャパンの強みになりつつある。

 準決勝の相手はメキシコに決まった。同国とは7月に親善試合で2−1で勝利しており、相性は悪くない。また、奇しくも両国はメキシコ五輪の3位決定戦で顔を合わせ、その時は日本が勝利して銅メダルを獲得した。44年の時を経て、ヤングブルーが日本サッカー史に銀メダル以上という新たな歴史を刻み込む。

<U-23日本代表出場メンバー>

GK
権田修一
DF
酒井宏樹
鈴木大輔
吉田麻也
徳永悠平
MF
扇原貴宏
山口螢
清武弘嗣
→宇佐美貴史(84分)
東慶悟
→酒井高徳(72分)
大津祐樹
FW
永井謙佑
→齋藤学(20分)