6日、女子サッカーの準決勝が行われ、日本女子代表(なでしこジャパン、FIFAランキング3位)がフランス女子代表(同6位)と対戦した。日本は前半32分、FW大儀見優季(ポツダム)のゴールで先制すると、MF阪口夢穂(日テレ)の得点でリードを広げる。その後、フランスに1点を返されたものの逃げ切り、五輪では男女通じて史上初の決勝進出を決めた。この結果、初のメダルも確定し、決勝(9日)は米国(同1位)と対戦する。

◇準決勝
 宮間、勝利導く決勝アシスト(ロンドン)
日本女子代表 2−1 フランス女子代表
【得点】
[日] 大儀見優季(32分)、阪口夢穂(49分)
[フ] ル・ソメル(76分)
 日本サッカーに新たな歴史が刻まれた。初出場の1996年アトランタ大会は3戦全敗でグループリーグ敗退。そこからベスト8(アテネ)、ベスト4(北京)と階段を上り、ロンドンの地で悲願のメダルを手中にした。歴史的勝利に貢献したのがMF宮間あやとGK福元美穂(ともに岡山湯郷)だ。宮間は精度の高いセットプレーから2点を演出し、福元は好守でゴールを死守した。

 フランスとは本番前の強化試合で0−2の完敗を喫し、18日ぶりの再戦だった。しかし、今回は序盤から主導権を握った。宮間を中心に連動したパスワークでボールを支配し、相手ゴールへと迫る。フランスの中央を固めるコンパクトな守りになかなかシュートまで持ち込めないものの、焦ってボールを失うことはなかった。この点は前回対戦の反省が大きく生かされていた。

 迎えた32分、待望の先制点が生まれる。宮間がゴールを演出した。ゴール正面からのFKをGKがファンブル。こぼれ球に反応した大儀見が倒れこみながら枠の中へ押し込んだ。日本にとってはこれがファーストシュート。幸運なかたちでリードを奪った。

 守りではボールホルダーに素早いアプローチをかけて簡単に前を向かせない。シュートまで持ち込まれる場面もあったが、守備陣が粘り強くはね返した。38分には、GK福元美穂(岡山湯郷)が右サイドからのクロスボールに飛び出し、パンチングで防ぐ。前半終了直前にもDF岩清水梓(日テレ)がFWマリー・ローラ・ドゥリのシュートを体を張ってブロックした。

 1点リードして迎えた後半も日本がボールを支配する状況が続く。そんな4分、またもセットプレーから追加点が生まれた。アシストしたのは宮間の完璧なキックだ。先制した時と同じような位置からのFK。PA内左へ速いボールを入れると、阪口が戻りながらヘディングであわせて、ゴール右へ流し込んだ。「素晴らしいボールが来たので、合わせるだけだった」。阪口は宮間のキックの精度の高さを称えた。頼れるキャプテンが“二蹴り”で決勝進出へ大きくチームを導いた。

 理想的な試合運びに見えた日本だが、その後はフランスの猛攻にさらされる。15分には右CKからファーサイドのDFコリーヌ・フランコにシュートを打たれ、岩清水が体を張ってブロック。26分には、MFルイサ・ネシブにPA内で右足を振り抜かれ、福元が左手1本で防いだ。

 以降もなんとか耐え凌いでいたものの、31分、ついに1点を返される。失点につながったのはミスから。自陣でボールを奪われ、右サイドを崩されると、クロスを途中出場のFWル・ソメルに右足で蹴りこまれた。

 1点差となり、試合は風雲急を告げる。日本はさらなる失点を恐れて裏のスペースを警戒し、DFラインを下げてしまったため、簡単にゴール前までボールを運ばれる悪循環に陥った。そんな33分、最大の試練が訪れる。阪口がPA内で相手を倒し、PKを与えしまったのだ。フランスサポーターの歓声がスタジアムにこだまするなか、キッカーのMFブサグリアはゴール右へシュート。GK福元は逆を突かれたが、ボールは枠の外へ。今度は日本サポーターの歓声がウエンブリースタジアムに響いた。

 九死に一生を得た日本だが、その後もゴール前にロングボールを入れる相手のパワープレーに押し込まれた。しかし、守護神・福元が同点ゴールだけは許さない。PK直後にはゴール前に入れられたFKをパンチング。そのこぼれ球をドゥリに狙われるが、しっかりと押さえた。アディショナルタイムに入ってからはネシブのシュートもセーブ。4分のアディショナルタイムが経過して試合終了の長い笛が鳴るまで、高い集中力でゴールを守り切った。

 激闘の末に決勝進出を決め、喜びの涙を流した宮間は「本当に苦しい戦いだったが、全員がよく戦った」とかみ締めるように語った。佐々木則夫監督が「彼女たちが一生懸命やってきたおかげ」と話したとおり、全員が勝利のために走り、声を出し、体を張った。メダルへの執念が、五輪初出場のフランスを大きく上回っていた。

 決勝の相手は米国に決まった。五輪はアテネ大会から2連覇中で、世界ランクも1位の最強国である。最大の特長はその攻撃力だ。FWアビー・ワンバックは国際Aマッチ通算得点が世界歴代2位(143点)。他にも圧倒的なスピードを誇るFWアレックス・モーガンらをそろえ、相手ゴールに襲い掛かる。フィジカルの勝負になれば、日本の選手が競り勝てる可能性は低い。それを避けるためにも、素早いプレスで前線へのボールの出どころを潰したい。

 ただ、米国の守りは決して固くはない。準決勝のカナダ戦では、3失点と守備が崩壊。なでしことしてはポゼッションを高めることが重要だ。セカンドボールをひろい、波状攻撃を仕掛ければ、相手の人数をかけた守りにも綻びが出る。そのチャンスをモノにできるか。

 宮間は最後に「苦しい戦いが続くが、真のチャンピオンを目指して頑張りたい」と語った。世界最強国の米国を倒せば、文句なしに“真のチャンピオン”だ。昨年、ドイツで咲かせたなでしこの花を、今度はロンドンで満開にしてみせる。

<なでしこジャパン出場メンバー>

GK
福元美穂
DF
近賀ゆかり
岩清水梓
熊谷紗希
鮫島彩
MF
阪口夢穂
→田中明日菜(84分)
澤穂希
宮間あや
川澄奈穂美
FW
大儀見優季
大野忍
→安藤梢(74分)