実は、暗澹たる気持ちになりかけたJリーグ関係者も多かったのではないか。先週末、エコパで決まった浦和レッズのセカンドステージ優勝についてである。

 

 10月31日付のコラム「十字路」には「これほど味気ない優勝セレモニーは初めて見た」という牧野真治記者の一文があった。確かに、監督の胴上げもなく、アウェーながらゴール裏を埋めつくしたレッズ・ファンが歓喜を叫ぶこともなかった。

 

 だが、もっとひどいことだってありえた。

 

 あの日、レッズと年間優勝を争っていたフロンターレは、同時刻にキックオフされていたレッズよりも先に、相手ゴールをこじ開けていた。そして、ジュビロを圧倒し続けたレッズには、明らかな攻め疲れが見え始めていた。

 

 つまり、フロンターレが勝ち、レッズが引き分けるという展開は十分にありえた。するとどうなるか。レッズは年間首位の座から転落し、にもかかわらずセカンドステージの優勝が決まるという事態が起きていたのである。試合後の優勝セレモニーは、「味気ない」どころでは済まず、村井チェアマンに飛んだブーイングはより盛大なものになっていただろう。

 

 導入時にも書いたが、わたし個人の2ステージ制に対する見解は、「好きではない。ただ、何かをやらなければという意志は買える」といったところだった。確かに欧州の主要リーグはシンプルな1シーズン制で争われるが、ベルギーでは以前からプレーオフ制度が導入されており、また、メキシコやアルゼンチンでは「年間王者」という概念自体と決別している。野球の大学リーグのように、春の王者と秋の王者はそれぞれ独立した存在なのである。

 

 従って、2ステージ制度は日本だけに存在する珍制度、というわけではない。Jリーグに対する批判に関しては、いささか気の毒に思う部分もある。

 

 ただ、こうも反発が強いのであれば、「この制度は日本人のメンタリティーには適合しなかった」と認めておいた方がいい。今後、Jリーグには幾度となく「改革のため何かをしなければならない時」が訪れるはずだが、その「何か」が現行と同じ2ステージ制であってはならない、ということである。

 

 それでも、前例踏襲が常になりつつあったJリーグが、反発を恐れずに「何か」に挑んだこと自体は、高く評価していい。たった2年だけで新制度と決別することになったのも、そもそも新しい「何か」を探すことをやめなかったからでもある。パフォーム・グループとの提携は、硬直化しつつあったJリーグではありえないことだった。

 

 とはいえ、きょう3日、私がどの試合に注目するかといえば、年間優勝がかかったレッズやフロンターレではなく、正真正銘「運命の一戦」を迎えるグランパスやアルビレックスの試合なのだが。

 

<この原稿は16年10月20日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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