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(写真:男子の新指揮官について「日本でのプレー経験も重要なポイントだった」と語る岩渕GM)

 10日、日本ラグビーフットボール協会は男女7人制(セブンズ)の日本代表新ヘッドコーチ(HC)を発表した。男子はニュージーランド出身のダミアン・カラウナ氏。同代表のコーチを務めるなど経験豊富で、日本のサニックス(現宗像サニックスブルース)でもプレーした。任期は今月1日から2018年5月末迄。一方の女子は外国人指導者と交渉中で、当面は昨年女子セブンズ代表のコーチを務めた稲田仁氏がHC代行として指揮を執る。

 

 東京五輪へ向け、セブンズは新たなスタートを切った。12年からリオデジャネイロ五輪までHCを任された瀬川智広氏、浅見敬子氏は10月31日付で退任。男女ともに体制を新たに臨む。

 

 日本ラグビー協会の本城和彦セブンズディレクターは「東京五輪でのメダル獲得という新たなステージに大きなチャレンジをしていく。そのステップとしての新しい視点、知見を取り入れていくタイミングにきている」とHC交代に至った理由を述べた。

 

 男子はリオ五輪で4位入賞。ニュージーランド、フランスと強豪国を撃破する快挙だった。女子も浅見氏が指揮を執るまでは「アジアで5、6番手だった」(本城ディレクター)という位置から、アジアのトップとしてリオ五輪への出場権を獲得してみせた。本城ディレクターは「目標とするメダルには届かなかったものの、2人が残した実績は十分評価に値するもの」と称える。

 

 リオ五輪本戦でも結果を残した男子の瀬川前HCは「本音を言えば、自分としてはHCを続けるつもりでいました」と口にする。一定の成果をあげた指揮官交代はリスクも伴うだろうが、ラグビー協会としては「更なるステージへ行くため」の判断だという。

 

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(写真:ダミアンHCの任期は約2年。本城ディレクター<左>は「総合的な判断」でその後の契約を進めるという)

 本城ディレクターは現状を相撲の番付で例えて表現した。

「セブンズにおける日本は幕内筆頭。本場所で優勝することもあるかもしれないが、常にメダルを狙える可能性のある大関ぐらいに持っていきたい」

 

 つまり日本を“大関”へと昇進させるために招聘したのがカラウナ氏だ。選手としてはニュージーランド代表でプレーした実績を持ち、コーチとしての経験値も高い。同代表のスキルコーチ、ディフェンスコーチ、分析などを担当した。本城ディレクターも「良い時、悪い時のニュージーランドを分かっていて、世界の潮流を認識している。日本のセブンズを任せられる数少ない指導者」と胸を張る。

 

 岩渕健輔ゼネラルマネジャーによれば、新HCのダミアン氏についてはニュージーランド代表HCの候補にも挙がるなど、他国との競争もあったという。岩渕GMは「自主性を重んじて選手に考えさせるタイプ」と評し、「4年前に比べると、選手たちがより自分たちで主体的に動いていかなければいけない。そういった部分で力を発揮してくれる指導者なんじゃないかなと考えました」と選考理由を語った。

 

 11月1日付でHCに就いたダミアン氏も新たなタスクへ向かって意欲を見せる。日本ラグビー協会を通じて、「男子セブンズ日本代表に参加できることなり、とても光栄に思っています。日本代表は人を興奮させるようなプレースタイルで知られており、東京五輪に向けて突き進むチームの手伝いができることを楽しみにしています。リオデジャネイロ五輪の躍進後も、私たちのチームは、新しい選手たちを育成し、また、ワールドラグビーセブンズシリーズで一貫性のある結果を出して、成長していかなければなりません。日本のラグビーは今、ワクワクする時を迎えています」とコメントを寄せた。新体制のスタートは17日の合宿になる見通しだ。

 

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(写真:退任会見後、日本ラグビー協会スタッフから花束を贈られた浅見氏<左>と瀬川氏)

 一方、女子の新体制はまだ決まっていない。本城ディレクターは「外国人指導者と進めているところ。時間がかかるかもしれないが、ベストな選択をしたい」と明かした。候補に挙がっている外国人指導者については「いわゆるナショナルレベルでのコーチ実績はない」という。「本人のコーチとしての力を見極めないといけないし、日本との相性もどうなのかも見ていかなければいけない」と本城ディレクター。2月末迄に正式決定にこぎつけたいと考えている。

 

 この日、瀬川氏、浅見氏の退任会見も行われた。2人の知見もこれからの強化に生かしていく必要がある。瀬川氏は「セブンズに専念できる環境づくりが急がれる」と語れば、浅見氏は「アスリート力を上げていって、タフな選手をこれから育てていく必要がある」と課題を挙げた。リオ五輪の出場によってセブンズの認知度は確実に上がった。東京五輪までは、あと4年を切っているが、その勢いまでは切らせてはいけない。

 

(文・写真/杉浦泰介)