中国電力エネルギア総合研究所の調査によると、広島カープの25年ぶりのリーグ優勝に伴う県内での経済効果は340億円に達するという。

 

 カープ躍進を陰で支えたのが、09年に完成したマツダスタジムである。総天然芝で開放感があることに加え、ウッドデッキや寝ソベリアという遊び心満載の観客席を設けるなどアミューズメント性に満ちている。ポストシーズンゲームも含め、今季の主催試合は過去最高の237万4425人を動員した。

 

 ヒトが集まればモノが動く、モノが動けばカネが回る。球場周りを中心にした消費活動が予想を上回る経済効果をもたらせたのである。

 

 広島の盛り上がりを金沢に――。そう考えている人物がいる。この9月にスタートしたプロバスケットボール「Bリーグ」のB3に所属する金沢武士団(かなざわサムライズ)社長の中野秀光だ。前職はbjリーグの社長で24球団を束ねていた。いわばスポーツ版プロ経営者である。

 

 Bリーグ創設に尽力した川淵三郎は「アリーナ文化の創造」を明確に打ち出した。「日本では3500人以上入る体育館はあまりない。あっても土足厳禁とか物販禁止とか規制が多い。仮に入場者数が1500人で平均入場料金を1500円とすると、1試合の売り上げは200万円くらい。これではスポーツビジネスとして成立しない」

 

 中野の主張も同じだ。スポーツ庁と経済産業省が主催するスポーツ未来開拓会議で早くからアリーナ建設の重要性を訴え、地元ではその根回しに動いている。

 

 久しぶりに中野から電話が入った。「いよいよ金沢アリーナ構想が動き出しそうです」。地元経済界の支持を取り付けつつあるというのだ。「石川には1万人規模のホールやアリーナがない。だから大きなコンサートは福井や富山に持っていかれるのが実情なんです」。もちろんバスケだけで常時、1万人の観客を集めるのは至難の業だ。「NBAのアリーナ稼働実態を見ても約7割がコンサートや会議でバスケは3割くらいなんです」。

 

 言うまでもなく、従来のハコモノとは発想を異にする。老人ホームや介護施設、保育園、ショッピングセンターの併設なども視野に入れる。ワンストップとオールインワン。アリーナ文化が花開きやすいのは雪の多い日本海側の寒冷地だと中野は考えている。

 

<この原稿は16年11月16日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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