東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一シニアアドバイザー(SA)は、中日ドラゴンズ、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスとの3つのチームで監督を務め、いずれの球団もリーグ優勝に導いた実績を持つ。監督通算1181勝はNPB歴代10位。2008年には北京オリンピック日本代表の指揮を執った。星野SAは現役時代からボランティア活動に熱心で、地元・岡山の福祉施設への慰問を続けている。肢体不自由児のティーボールを奨励し、障がい者スポーツにも尽力する。プロ野球の監督として、4度のリーグ優勝、1度の日本一に導いた闘将が、勝利へのこだわりと障がい者スポーツについて語った。

 

伊藤: 今回のゲストは、東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一シニアアドバイザーです。星野さんは昨年まで東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を務めていました。

 

二宮: 昨年、腰の手術をされたとお聞きしましたが、お体の方はいかがですか?

星野: だいぶ良くなりましたね。とにかく病院の先生が「歩いてください」ということだったので、スキーのストックのようなものをついて、リハビリを行いました。毎日、朝、昼、晩と歩き、珍しく努力しましたね(笑)。随分と良くなったので、ゴルフをやったんです。しかし、つい負けたくないクセが出てしまった。練習を少しハードにやっちゃったんです。それでラウンドしていて、「あれ、おかしいな。体が重いな」と。まだまだ本調子ではないですね。

 

二宮: 星野さんは勝ち気だから、遊びだけでは気が済まない(笑)。リハビリを超えて、トレーニングになってしまったのかもしれないですね。

星野: そうかもしれませんね。やり過ぎるところが、僕のいいところであり、悪いところでもある(笑)。

 

 オリンピック・パラリンピックの記憶

 

二宮: ところで5年後には、2020年のオリンピック・パラリンピックが日本で開催されます。前回の1964年のオリンピック・パラリンピックはどんなことが記憶に残っていますか?

星野: 当時、僕は高校3年生でした。あの時は「行きたい人」と、クラスで観戦希望者を募った。僕も手を挙げたんですが、希望者が多く抽選になったんですよ。

 

伊藤: 当選すれば、連れて行ってもらえたんですか?

星野: ええ。何の競技だったかは覚えていませんが、とにかく行ける権利はありました。岡山に住んでいた僕は東京に行ったことがなかったので、行ってみたかった。それで、おふくろに聞くと、「行っていいわよ」と認めてくれた。結局、抽選には外れてしまいまして、テレビで見ました。やはり僕は球技が好きなものですから、 "東洋の魔女"の女子バレーボールなどを見ていました。"オリンピックとは、こういうものなんだ"と憧れましたね。

 

二宮: まさか、その頃には、ご自身が野球の監督でオリンピックに出られるとは思っていなかったでしょうね。

星野: 想像もしていなかったですね。僕はプロ野球選手になるということだけ、小さい頃からイメージしていました。ファンだった阪神タイガースに入り、コーチ、監督をすると。子供ながらに自分でビジョンを立てていましたね。

 

二宮: プロ野球選手になるという夢を叶えた後、野球の日本代表監督として、北京オリンピックに出場。小学生の時に憧れた舞台にも立ちました。その時にパラリンピックの試合はご覧になりましたか?

星野: 正直、スタジアム観戦に行くまでの余裕はなかった。ただテレビでは見させていただきました。車いすテニスなどを見て、"ものすごく上半身の力がいる。かなり鍛えているんだろうな"と感心しました。一方で僕たちも"もっと鍛えないとダメだな"と刺激をもらえましたね。

 

伊藤: なるほど。同じアスリートとして、見習う点や勉強になる点があるわけですね。

星野: そうなんです。純粋に応援するというよりは、プレーを見ながら、"どうやって鍛えているんだろう""モチベーションの維持はどのようにしているんだろう"とかと、どうしても僕は自分たちに置き換えて見てしまいますね。

 

(第2回につづく)

 

星野仙一(ほしの・せんいち)プロフィール>

1947年1月22日、岡山県生まれ。倉敷商から明大を経て68年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。74年に沢村賞を獲得。82年に引退するまで通算500試合に登板し146勝121敗34セーブをあげた。87年には中日ドラゴンズの監督に就任し、88、99年とリーグ優勝に導く。2002年から阪神タイガースの監督となり、03年に優勝。同年限りで勇退し、シニアディレクターとして阪神タイガースのフロント入り。北京五輪日本代表監督を務めたのち、11年から東北楽天ゴールデンイーグルスの監督に就任した。13年には球団創設初のリーグ優勝、日本一に導いた。14年より東北楽天ゴールデンイーグルスのシニアアドバイザーを務める。


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