6年目を迎えたBCリーグはレギュラーシーズンの全日程を終え、29日からは上信越、北陸に分かれて地区チャンピオンシップが行なわれる。上信越地区では初の前後期完全優勝を達成した新潟アルビレックスBCと初のチャンピオンシップ進出となる信濃グランセローズが激突する。一方、北陸地区は前期覇者の石川ミリオンスターズと、後期覇者の福井ミラクルエレファンツという昨季と同じ顔合わせとなった。果たして、リーグチャンピオンシップに進出する2球団は――。
<新潟vs.信濃 〜上信越地区〜>

 切れ目のない打線は貫録十分

 前期6割1分8厘、後期8割6厘――今季の新潟の勝率だ。後期は2位・信濃に10ゲーム差をつけての優勝と、今季の新潟は「強い」のひと言に尽きる。この驚異的な強さの要因を村山哲二代表は今季、プレーイングマネジャーに就任し、指揮官として1年目の高津臣吾監督のマネジメント能力、それによって高められた選手自身の意欲だと分析する。

「新潟の強さの根底には、昨季1年間かけて選手の意識改革を行なった橋上秀樹前監督(現・巨人戦略コーチ)の指導があります。そこに高津監督の指導がうまく上乗せされている。彼は人一倍勝利への執念、そして『どうせやるなら、緊張をプラスにして楽しもう』という考えを持っている。それが選手にも浸透しているんです。また、新潟の選手を見ていると、支配下登録27人全員に役割が与えられ、それぞれの能力が最大限に生かされている。だからこそ、選手全員のモチベーションが高く保たれている。これは高津監督のマネジメント能力の賜物です」

 特に打線は強力だ。チーム打率2割8分5厘、705安打、379打点、104盗塁は全てリーグトップの成績を誇る。野呂大樹(堀越高−平成国際大)、佑紀(日本文理高−平成国際大)、池田卓(相洋高−神奈川大)をはじめ、俊足の選手が複数いることに加え、稲葉大樹(安田学園高−城西大−横浜ベイブルース)、平野進也(東福岡高−)、福岡良州(流通経済大学付属柏高−流通経済大)の上位打線は一発もあり、警戒しなければならない。また、クリーンアップの後ろには内山友希(京都成章高−龍谷大)や青木智史(小田原高−広島−シアトルマリナーズ−サムライベアーズ)といった警戒しなければならない打者が控えており、相手投手にとっては息つく暇もない。

 投手陣も安定している。最多勝(14勝)の寺田哲也(作新学院高−作新学院大)、成長著しい2年目の阿部拳斗(中越高−新潟証券)、中継ぎから先発へと転向した間曽晃平(横浜商業高−神奈川大)の先発3本柱が試合をつくり、中継ぎの羽豆恭(中央学院高−中央学院大)、清水一樹(富士見高)から抑えのロバート(八王子実践高−亜細亜大−ロサンゼルスドジャース<マイナー>)への継投が必勝パターンとして確立している。

 守護神・篠田につなげられるか!?

 一方、信濃はリーグトップの防御率1.25、そしてリーグ新記録の18セーブを達成した抑えの篠田朗樹(春日部共栄高−武蔵大)にどうつなぐかがカギを握る。先発の柱は今季カムバックした高田周平(関西創価高−創価大−信濃−阪神)だ。緩急を使ったピッチングは、「ベンチからも非常に安心して見ていられる」と指揮官からの信頼も厚い。

 打線は突出した選手はいないものの、どこからでも長打が出るため、勢いに乗れば大量点につながることも少なくない。ただ、チーム一のポイントゲッターであるマルコスがプレーオフ前にチームを離れたのは痛い。マルコスの穴をどう埋めるかがカギを握りそうだ。レギュラーシーズン最終戦には主砲の大平成一(波佐見高−日本ハム)が2本塁打を放っており、プレーオフでの活躍も期待は大きい。指揮官イチオシの成長著しい19歳新人の宮澤和希(東海大三高)の非凡な打撃センスにも注目したい。

 1勝6敗1分と全く歯が立たなかった前期から一転、後期は4勝4敗と新潟と五分に戦っている。佐野嘉幸監督も「内容的には信濃が上回った試合も少なくない」と自信を見せている。次のステージに上がるには、3戦全勝と厳しい条件ではあるが、ミスさえなければ、可能性は十分にある。

<石川vs.福井 〜北陸地区〜>

 1、2番コンビが打線を牽引

 2010年、11年と3年連続で同じカードとなった北陸地区。昨季までは石川が連勝している。3回目の対決となる今回の見どころは、“石川の打線vs.福井の投手陣”だ。リーグ設立以来、投手を中心とした守備のチームだった石川が今季は一転、打撃のチームとなった。中心は俊足巧打でチームトップの打率3割2分を誇る小倉信之(国士舘高−国士舘大−茨城ゴールデンゴールズ−フェデックス)とリーグ2位タイの59打点を誇る謝敷正吾(大阪桐蔭−明治大)の1、2番コンビだ。この2人を勢いに乗せるか否かがポイントなる。

 投手陣は防御率1.85と安定感が光るハモンド(米国)、球種が豊富な180センチの長身サウスポー松田翔太(金沢学院高−広島<育成>)、そして08年からチームの大黒柱として君臨している南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)がどこまで踏ん張ることができるか。昨季まで堅守を誇っていた石川だが、今季はリーグ最多の92失策と守備でのミスで崩れたことも少なくなかった。短期決戦でのミスはレギュラーシーズン以上に大きく響くだけに、守備でのミスは避けたいところだ。

 ロースコアでの接戦に持ち込めるかがカギ

 リーグ一の投手王国・福井は、チーム防御率2.56を誇る。20歳の若きエース森本将太(福井高)は今年10月のNPBドラフト候補でもある。今季、台頭してきた森本について村山代表はこう評している。
「身長174センチ、体重65キロと小柄なのですが、150キロ台のストレートBCリーグでは見たこともないほどキュッと曲がるスライダーを投げます。この2種類のコンビネーションはピカイチ。負けん気も強く、いい時の森本のピッチングは、リーグの打者ではお手上げ状態です」
 短期決戦でも実力を発揮することができるか。

 また、中継ぎの福泉敬大(神港学園高−明石レッドソルジャーズ−神戸9クルーズ−巨人)が安定していることも大きい。福泉は前期途中、先発陣に疲れが見えた時期には先発を任された。そのことで、ベテラン高谷博章(北海高−浅井学園大)が危機感を抱き、復活するなど、福泉はまさにチームの救世主と言える。また、7月に復帰した藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)も健在だ。

 一方、打線はレギュラーシーズン最終戦の富山サンダーバーズ戦でノーヒットノーランを喫し、屈辱を味わった。大量点は見込めないが、投手陣は1、2点差を守り切る実力はある。少ないチャンスをいかにモノにするか。そのためには、4番・西川拓喜(三島学園三島高−白鴎大)の前にランナーをスコアリングポジションに置くことができるかがカギとなりそうだ。