9日にペナントレース全日程が終了したプロ野球は、日本シリーズ進出をかけたクライマックスシリーズ(CS)が開幕する。13日からのファーストステージでは、パ・リーグは4年ぶりの日本一を狙う埼玉西武(2位)と昨季、8年ぶりに日本シリーズを制した福岡ソフトバンク(3位)。一方、セ・リーグは3年連続日本シリーズ進出を狙う中日(2位)と、実に11年ぶりの日本シリーズ進出を目指す東京ヤクルト(3位)が、それぞれ対戦する。果たしてリーグ覇者の北海道日本ハム、巨人が待つファイナルステージに進むのはどのチームか。
<勝敗のカギを握る若手の活躍 〜パ・リーグ〜>

 3年連続CS進出となった西武は、先発は岸孝之、牧田和久、中継ぎは長田秀一郎、ランディ・ウィリアムス、岡本篤志、そして抑えには涌井秀章と投手陣は盤石だ。今季、先発ローテーション入りした野上亮磨やルーキー十亀剣も控えており、層は厚い。それだけに、勝敗のカギを握るのは、打線にありそうだ。

 秋山&浅村の1、2番コンビに注目!

 ポイントはリーグ2位の打率3割1分1厘をマークした中島裕之、2年連続の本塁打王に輝いた中村剛也の強打者の前に、どれだけランナーを出すことができるかだろう。そこで、キーマンとなるのがシーズン途中から1、2番コンビを組んでいる浅村栄斗と秋山翔吾だ。

 高卒4年目の浅村は、思いきりのいいフルスイングが持ち味の1番打者として大阪桐蔭高時代にも活躍したことは記憶に新しい。超攻撃型のリードオフマンとして、チームを活気づけた。一方、大卒2年目の秋山は、オープン戦で故障し、開幕は2軍スタートとなった。しかし、4月末に一軍復帰し、後半戦からは不動の2番となる。浅村同様、積極性が持ち味で、走攻守そろった好打者だ。チームでは中島に次ぐ打率2割9分3厘をマークした。

 四球や犠打でコツコツではなく、長打力も兼ね備える浅村と秋山の若手1、2番コンビがかみ合えば、確実に得点力はアップするはずだ。中島が左脇腹痛を抱え、万全の状態ではないだけに、ソフトバンクの好投手を、この2人がどう攻略するかに注目したい。

 走力&ルーキー武田に期待

 今季は和田毅(オリオールズ)、杉内俊哉、デニス・ホールトン(ともに巨人)、川崎宗則(マリナーズ)が移籍したことで、戦力ダウンがささやかれたソフトバンク。加えて馬原孝浩、松田宣浩、小久保裕紀など主力が相次いでケガに見舞われ、苦しいシーズンとなった。それでも8月から3位をキープし続け、リーグでは東北楽天を除いた4球団に勝ち越すなど、安定した成績を残した。

 その要因のひとつにあげられるのが、12球団一の盗塁数144を誇る走力だ。チームトップの34盗塁をマークした本多雄一を筆頭に、明石健志(25)、松田(16)、長谷川勇也(16)、城所龍磨(10)と2ケタ盗塁を記録した選手が5人も揃っており、相手投手にとっては気が休まる暇がない。右手甲の骨折から1軍に復帰したばかりの松田が本来の力を発揮すれば、西武投手陣にとっては手強い打線となることは間違いない。

 投手陣は最多勝(17勝)の摂津正が西武戦5勝と相性の良さを誇っている。また、森福允彦、金澤健人とリリーフ陣も西武には防御率0点台とめっぽう強い。気がかりは、摂津に続く先発陣だ。今季、4年ぶりの2ケタとなる12勝を挙げた大隣憲司だが、終盤にきて調子を落としている。8月24日以来、白星を挙げておらず、自身4連敗でレギュラーシーズンを終えた。

 そこでソフトバンク投手陣に、救世主として現れたのが高卒ルーキーの武田翔太だ。11試合で8勝1敗、防御率1.07という輝かしい成績を残し、チームに大きく貢献。CSでも先発は十分にありそうだ。この武田のピッチングがCSの流れを決める重要なポイントとなる。

 西武とソフトバンクの今季の対戦成績は、ソフトバンクの13勝11敗。加えてファーストステージの会場となる西武ドームでは、ソフトバンクが7勝4敗と大きく勝ち越している。それでもやはりホームの西武に有利に働くのか、それともペナントレース同様に、ソフトバンクが相性の良さを出すことができるのか――。

<3位ヤクルトが2位中日をカモに!? 〜セ・リーグ〜>

 今季のセ・リーグは、大型補強を敢行した巨人が、貯金43の荒稼ぎでぶっち切りの優勝を果たした。そのリーグ王者との挑戦権をかけて戦うのは、中日と東京ヤクルトだ。今季の成績は2位・中日が75勝53敗16分け、3位・ヤクルトが68勝65敗11分けと、両チームのゲーム差は9.5にも及ぶ。シーズンの数字だけを見れば、中日の優勢かのように見えるが、直接対決に絞ると形勢は逆転する。

 対戦成績は13勝8敗3分けでヤクルトが5つの貯金を作っている。中日が勝率6割7分8厘を誇り、CSファーストステージの舞台となるナゴヤドームに限っても6勝3敗1分けと、今季の燕は竜を“お得意様”としているのだ。

 中日の最大の不安は“エース不在”

 短期決戦で、鍵を握るのは柱の存在である。まずピッチャーにおいては、ヤクルトに分がある。ヤクルトはエースの館山昌平を軸に、石川雅規、村中恭平の両左腕で3本柱を形成。対中日の成績は、館山が4勝2敗、防御率1.84、石川が1勝1敗、防御率2.05、村中が3勝1敗、防御率2.18と、チーム同様に相性が良い。計算のできる三枚看板を揃え、初戦の先発が予想される館山で先手を取れば、ヤクルトのファイナルステージ進出はグッと近づく。

 一方の中日は、今季チーム防御率2.58(リーグ2位)の投手力が自慢のチームだ。しかし、13勝をあげているエース吉見一起が9月に右ヒジのケガで戦線離脱。CS出場は絶望的と言われ、絶対的柱は不在となった。その穴を埋めるべく山内壮馬、岩田慎司ら若手右腕を起用するか、川上憲伸、山本昌の両ベテランに加え、中田賢一などポストシーズン経験豊富な投手に託すか、高木守道監督の用兵術にも注目が集まる。

 勢いのヤクルトvs.経験の中日

 攻撃の柱は、ヤクルトでは外国人コンビだ。2季連続本塁打王のウラディミール・バレンティンは中日戦で打率3割4分5厘、6本塁打、17打点と当たっている。さらに3割2分1厘、7本塁打、20打点のラスティングス・ミレッジもケガから復帰し、CSに間に合う見込みだ。竜を好物とする助っ人コンビのバットが火を噴けば、チーム打率リーグトップ(2割6分)の打線が爆発する可能性は大だ。ミレッジを含め、シーズン中はケガ人が続出し、野戦病院と化していたヤクルト。ここにきて宮本慎也、相川亮二ら主力打者も戻ってきていることも好材料だろう。1位、2位とは大差の3位で臨むポストシーズンだが、CS版“メークミルミル”の可能性は十二分にある。

 対する中日は、チーム打率こそリーグ3位(2割4分5厘)だが、1試合平均2.94点と大量点を望める打線ではない。1点を争うような展開に持っていくことが勝利への突破口だ。そこでキーとなるのは大島洋平、荒木雅博の1、2番だ。俊足の2人が塁に出て、ヤクルト投手陣をかき回し、トニ・ブランコ、和田一浩ら中軸で得点を奪って逃げ切りたい。中日は、ヤクルトをポストシーズンの経験値で上回る。これまでCS全5回に出場し、うち3回は日本シリーズに進出している。過去2度出場したヤクルトの行く手を阻んだのは、いずれも中日なのだ。

 果たして、燕の3度目の正直となるか、竜が三度(みたび)立ち塞がるのか。尾張決戦がいよいよスタートする。