二宮: お久しぶりです。今回はお酒を酌み交わしながらの対談です。
北澤: よろしくお願いします。そば焼酎は飲んだことがないですね。どんな味なのか楽しみです。


二宮: まず1杯目はそば焼酎「雲海」。ソーダ割りでどうぞ。
北澤: かわいいグラスですね(笑)。では、いただきます。あ、スーっと飲める感じがいいですね。芋焼酎はもっと匂いがありますけど、これは全然ない。はじめてだなぁ、この感覚……。

 お酒の力でコミュニケーション

二宮: 最近、お酒を飲む機会は多いですか?
北澤: うーん、どちらかというと子供のサッカーの合宿などで、他の保護者と一緒に飲んだりすることが多いですね。僕の子供が少年団に入っていたので。

二宮: 北澤さんと飲むのを楽しみにしている人は多いでしょうね。
北澤: 合宿などに行く機会があると、僕から「飲みに行きましょう!」と誘うようにしていました。そうしないと、いつまで経っても距離が縮まりませんからね(苦笑)。酒を飲みながら、腹を割って話すというか。今までにはないお酒の力の借り方だなと思います。

二宮: 保護者同士の飲み会ではどんな話をするんですか?
北澤: 「どうやれば日本代表になれますか?」という質問はやっぱり多いですね(苦笑)。

二宮: 答えは?
北澤: 「練習するしかないよね」としか言えないですよ(笑)。ただ……実力が飛び抜けている子がいるのも確かなんですけどね。

二宮: 「この子は将来、日本代表に入る」と?
北澤: 行くだろうな、という子供はいますよ。あとは家庭環境であったり、所属チーム、指導者などとの巡りあわせで、変わっていく可能性もありますけどね。

 日本の少年サッカーは世界トップクラス

二宮: 育成年代の選手を見る時に、プロが注目するのはどういう点でしょう?
北澤: やっぱり、“次”が読めているかどうか。それと身のこなしですね。前方だけではなくて、後ろにも横にも、全方向へスムーズに動けることは、上へ行ける選手とそうでない選手の違いだと思います。あと一瞬のスピード。これもあまり変えられないですね。

二宮: スピードは鍛えれば速くなりますか?
北澤: もちろん、肉体の持っているスピードという意味もありますが、それに伴った“次”を読むスピードが一緒になっているかどうかなんです。子供の頃から先を読むことができるか、できないかは大きな違いだと思います。レベルの高い選手は相手と対峙した時、相手の嫌なところ、嫌なところに入っていきますよね。

二宮: それらは教えてできるものですか、それとも天性のものですか?
北澤: 教えても簡単にはできませんね。まあ、だからといって、センスがすべてでもない。子供の頃に全然、可能性を感じなかった選手が日本代表に入ってくることもありますからね。それにポジションもひとつではありません。いくつも選べるポジションがあって、その数だけ可能性があるのがサッカーの良さだと思うんです。たとえば子供の頃、FWの選手を目指したけど、なかなかうまくいかないからMFに移ろうかなとか。実はそのポジションが自分に合っていて、成功する可能性も十分にあると思いますけどね。

二宮: 子供たちには大きな可能性があるというわけですね。その意味で北澤さんは育成年代の様々なアンバサダーに就任していて、海外にもよくでかけていらっしゃいますね。
北澤: この間も、アンバサダーを務めているダノンネーションズカップを視察してきました。これは12歳以下の年代では唯一の世界大会なんですが、今回なんと、日本のチームが2位になったんです!

二宮: それは素晴らしい。
北澤: 決勝で韓国のチームと当たり、PK戦の末に敗れたんですが、それでも快挙ですよね。準決勝では、強豪のアルゼンチンに逆転勝ちを収めましたから。今や日本の少年サッカーは世界でトップクラスですよ。

二宮: 現在、11歳の久保建英君がバルセロナのカンテラ(下部組織)に在籍しています。彼のように、日本人が小学生年代で海外クラブに引き抜かれるケースは今後、増えるでしょうか?
北澤: 可能性は高いと思いますね。本当にクオリティのある選手がいたら、とりますよ。A代表の選手の多くが海外でプレーしていて、U-23代表も五輪でベスト4。女子はなでしこがW杯で優勝し、五輪では銀メダル。ヤングなでしこもU-20W杯で3位に入りました。国際舞台のあらゆるカテゴリーで成果を挙げているわけですから、もう世界からは強豪国という見方をされているんじゃないでしょうか。

二宮: 隔世の感がありますね。昔はミャンマー(旧ビルマ、世界ランク184位)のほうが日本より強かったわけですから。
北澤: 若い人は知らないでしょうね(笑)。1920年代の日本代表はミャンマー人のチョー・ディンさんという方にサッカーを教わっていたそうです。でも、チョーさんは代表選手でもなんでもない留学生。それぐらい、日本よりもミャンマーのサッカーは発展していたということでしょうね。チョーさんの指導が実を結んで、日本は1930年の極東選手権大会で優勝。この功績が認められて、日本サッカー殿堂入りされています。

 ザックジャパンの不安要素

二宮: さて、現在の日本代表はブラジルW杯に向けて順調に勝ち点を重ねています。3勝1分で勝ち点10。3位との差は8もあります。これはもう当確と言ってもいいのでは?
北澤: うーん、どうですかねぇ(笑)。

二宮: あえて不安材料を探すとすれば……?
北澤: レギュラーと控えの選手の差が大きくなりつつあると感じているんです。ザッケローニ監督は起用する選手を固定していますからね。イラク戦(9月11日)は清武が直前に負傷した香川の代わりにプレーしました。彼はこれまでもある程度、出場機会を得られていたので、問題なく試合に入れたと思います。ただ、「じゃあ清武に代わって入る選手は?」となったら、「うーん」となってしまう。

二宮: 中村憲剛もいますが、その後は……。
北澤: 2列目にはタレントが揃っていると見ていましたが、実はあまりいないんじゃないかなと……。もちろん、同じメンバーで戦うことが間違いではありません。連係は時間をかけないと高められないですからね。今月は欧州遠征でフランス、ブラジルと戦います。選手もチームもいい経験にしてもらいたいですね。

二宮: イラクは想定していたよりもディフェンシブでしたね。
北澤: 聞いたところによると、ジーコとコーチのエドゥ(ジーコの兄)は日本に大差で負けたくなかったみたいです。得失点差が明暗を分けることも少なくないですからね。07年のアジア杯で優勝した時のメンバーが主力だったんですが、コンディションが少し悪いので彼らをスタメンから外した。思い切って起用してうまくいけば日本に3−0、4−0で勝てるかもしれない。でも、0−5で負ける可能性もある。だったら、負けたとしても0−1に抑えられるというメンバー構成だったようです。それだけ、ジーコは日本を強いと見ていたんだと思います。

二宮: 北澤さんは“ドーハの悲劇”のメンバーですからね。
北澤: うまくて、体格もでかい。嫌な相手でしたね(苦笑)。中東の国は堅守からのカウンターを仕掛けてきますが、イラクはちょっと質が違いますね。イランも強かったですけど、イラクのほうが技術は数段上でした。また、イランがファウルで試合を壊してくるのに対し、イラクは無駄なファウルをしない。この辺も、他の中東諸国とは違う点でしたね。

二宮: ジーコ・イラクのW杯出場の可能性は?
北澤: 2位に入れば自動的に本大会出場権を得られますし、3位でもプレーオフを勝ち上がれば出場できる。そう考えるとチャンスは十分。また日本と2強の一角とされていたオーストラリアがヨルダンに敗れましたからね。イラクは国家情勢が不安定ですから、本大会へ行けば状況が好転するかもしれない。日本サッカーを育ててくれたジーコもいるし、そう考えると、イラクにもW杯へ行ってもらいたい気持ちはありますね。

 なぜ、僕を起用しなかったんだ!?

二宮: 古い話になりますが、私は“ドーハの悲劇”のオフトジャパンから、日本サッカーの近代化が始まったと考えています。
北澤: オフトは3つのキーワードで最初から最後まで掲げていました。アイコンタクト、3ライン、トライアングル……。何をやってもこの3つに結びつくんですよ。勤勉な日本人の性格上、必ずこれらに行きつくというのは素晴らしくわかり易かったですね。ムカついていたのはラモスさんだけです(笑)。「そんなサッカーやってられるかよ!」という感じで。

二宮: でも、ラモスとオフトは途中で仲直りしましたよね。青春ドラマで番長と新任の先生がケンカして、最後はお互いに肩を組むような。それを仲介したのが熱血派の級長の柱谷哲二(笑)
北澤: ラモスさんはそういう持っていき方がうまいですよ。まあ、(柱谷)哲さんが間に入って仲をとりもったことも大きかったと思いますね。そういえば先日、オフトがサッカー界からリタイアするというので、ドーハのメンバーで集まったんですよ。

二宮: いろいろ、つもる話もあったのでは?
北澤: 最後のイラク戦は、1点リードして迎えた終盤に、福田さんと武田さんが途中起用された。そこから追加点を狙いに行った結果、同点ゴールを決められました。僕はベンチにいて、ラモスさんが「北澤を出せ」と言ってくれていたんですけど、結局、出番はありませんでした。僕ならボールをキープして、時間を稼ぐ自信がありました。なんで僕を使ってくれなかったのか、ずっと考えていました。だから今回、オフトに「なんで使わなかったんだ。最後に聞かせてくれ」と言ったんです。

二宮: オフトの答えは?
北澤: 理由は言いませんでした。「聞くな」と。「それを聞いて、俺が答えたとしても、もう何もならないから、墓場まで持っていく」という感じでした。

二宮: いずれにしても、あれほど個性豊かなチームはなかったですね。おっと、気付けばグラスが空いていますね。2杯目の飲み方は?
北澤: 本当だ。話に盛り上がって、普通に飲んでしまいました(笑)。それだけ、そば焼酎が飲みやすいということなんでしょうね。ソーダ割りも合いますし、2杯目は……やっぱりソーダ割りでお願いします(笑)。

<北澤豪(きたざわ・つよし)プロフィール>
1968年8月10日、東京都生まれ。読売サッカークラブ(現東京V)ジュニアユース―修徳高―本田技研を経て、91年に読売クラブへ加入。三浦知良、ラモス瑠緯らとヴェルディの黄金時代を築き上げる。94年にはJリーグベストイレブンに輝いた。91年に初選出された日本代表でも主力として活躍。03年に現役引退。現役時代から社会貢献活動に積極的に取り組んでいる。FリーグのCOO補佐としてフットサルの普及に努める傍ら、この6月に日本サッカー協会理事に就任した。J1通算265試合出場、41得点。国際Aマッチ通算59試合出場、3得点。

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

日本初の本格そば焼酎「雲海」。時代とともに歩み続ける「雲海」は、厳選されたそばと九州山地の清冽な水で丁寧に仕込まれた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎の定番です。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
十割そば・地酒 蔵や
東京都新宿区四ツ谷1−4−2 綿半野原ビル1F
TEL:03-3356-7571
営業時間:
ランチ  11:30〜14:30(月〜日)
ディナー 17:00〜23:30(月〜金)、17:00〜22:30(土、日、祝日)

☆プレゼント☆
北澤豪さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「北澤豪さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、北澤豪さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:鈴木友多)
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