24日、フットサルの国際親善試合が東京・国立代々木競技場第一体育館で、日本代表(世界ランク10位)がW杯(11月1日〜、タイ)でも当たるブラジル代表(同2位)と対戦した。日本は前半3分、FP逸見勝利ラファエルのゴールで先制。13分にはFP北原亘が追加点を決めてリードを広げた。しかし、前半15分、1点を返されると、後半4分に同点に追いつかれる。11分にはFPロドリゴに逆転ゴールを許した。それでも直後にFP小曽戸允哉がゴールを決め、3−3でタイムアップ。12戦全敗していたブラジルと初めて引き分けた。注目を集めた元サッカー日本代表・FP三浦知良(横浜FC)は、前半4分に途中出場でフットサル代表デビューを果たしている。日本は27日、旭川でウクライナ(同8位)との親善試合に臨む。

 GK川原、ファインセーブ連発(国立代々木競技場第一体育館)
日本代表 3−3 ブラジル代表
【得点】
[日] 逸見勝利ラファエル(3分)、北原亘(13分)、小曽戸允哉(31分)
[ブ] ネト(15分)、アリ(24分)、ロドリゴ(31分)
 キングが12年ぶりに日の丸をつけて君が代を斉唱した。「やっぱり、ジーンときたね」。カズは噛みしめるように振り返った。そして、相手がプロキャリアをスタートさせた国・ブラジルだったことには「両方の国歌を聞けて、幸せな時間でした」と笑顔で語った。プレーではベンチスタートだったものの、コートに立つとシュートやドリブルなど、キレのある動きを披露した。

 日本は前回のW杯王者相手に、立ち上がりから攻勢を仕掛け、3分、いきなり先取点を奪う。決めたのは逸見だ。左サイドでボールを受けると、奪いにきた相手を細かいボールタッチで抜き去る。ペナルティー・ボックス(PB)手前から右足を振り抜くと、シュートはゴール左下に突き刺さった。電光石火の先制劇に、8236人が詰めかけたスタンドからどよめきが起こった。だが、直後に先制ゴール以上の歓声が沸き起こる。背番号11がコートに登場したのだ。

 カズは交代直後から魅せた。コート中央左でパスを受けると、同じく交代で入ったFP森岡薫とのワンツーから縦へ抜け出す。返ってきたところをダイレクトシュート。ボールは枠を大きく外れたものの、貪欲にゴールを狙う姿勢を示した。7分にベンチへ下がる際には、称賛の拍手がカズに送られた。

 先制後はブラジルの速いパス回しと高い個人技に押し込まれる場面が多くなるが、GK川原永光を中心に、体を張った守りでゴールを割らせない。すると13分、北原がカウンターから追加点を奪う。PB手前でパスを受けると、飛び出してきた相手GKとぶつかりながらうまく体を入れ替え、無人のゴールに流し込んだ。16分に1点を返されたものの、2−1とリードして試合を折り返した。

 だが後半早々、ブラジルに同点ゴールを奪われた。FPシミにPB内中央でキープされて右にパスを出されると、走り込んできたFPアリにループシュートを打たれる。前に出てきた川原は頭上を抜かれ、ボールはゴール左に吸い込まれた。

 押し返したい日本は、5分、再びカズを投入。直後、背番号11はピッチ中央でボールを受けると、プレスをかけにきた相手をひとりかわす。さらにカバーに入ってきたブラジル選手に対しては左サイド前方へボールを蹴り出し、抜きにかかった。これはおしくもタッチラインを割ってしまったものの、前へ進むプレーでチームを鼓舞した。ところが、8分にカズがベンチに下がると、日本は再びブラジルに押し込まれる。そして11分、ロドリゴにピッチ中央付近からFKを叩き込まれ、ついに逆転を許した。

 しかし、日本は諦めなかった。このまま世界王者の圧力に屈するかと思われた矢先、セットプレーから同点弾を決める。北原が右CKをニアサイドに入れると、ここに小曽戸が走り込んでいた。右足ダイレクトで打ったシュートが豪快にゴールネットを揺らす。その瞬間、観客席も日本ベンチも総立ちに。アップゾーンで試合を見守っていたカズも、拍手で仲間の同点弾を祝福した。

 その後は、ブラジルの猛攻に耐える時間帯が続くも、守護神・川原が立ちふさがる。至近距離から放たれるシュートの雨あられに、驚異的な反射神経で反応。時には顔面で相手のシュートを防ぐシーンもあった。18分には、左サイドのキックインからシミにPB内中央でシュートを許すが、果敢に飛び出してブロックする。外したシミは思わず右手を振り上げ、悔しさをあらわにした。相手のシュートがポストに当たる幸運もあり、試合はそのまま終了。カズに再びプレーする機会は巡ってこず、出場時間は合計約7分だった。

「フットサルの難しいところで、(控え選手は)いつ(試合に)入るかわからない。アップの仕方がすごく難しい」
 カズは、試合で感じたことをこう明かした。前半4分の交代出場した直後のプレーを引き合いに出し、「(ウォームアップして体の調子が)上がっていたらいい感じでいくだろうけど、加速のところでアップしていないと大変だった」と選手交代が自由なフットサルにはまだ慣れていない様子だった。今後もベンチから試合に入っていくケースが予想される。常に万全な状態を保てるようになることが、W杯本大会へ向けてのポイントだ。

 ただ、ベンチから戦況を見つめることで収穫もあった。
「ベンチから(試合を)見るのも経験。それも世界王者のブラジルを見られる時間も貴重だと思う」
 ベンチでは仲間やスタッフと頻繁に話す姿が見られた。カズにとってブラジル戦はフットサル選手としての2試合目。45歳の代表新人は、急ピッチでフットサルを体に染み込ませようとしている。その姿はチームにも好影響を与えていた。川原は「カズさんが入ってきたことで精神的に強くなった」とカズ効果を語る。

 27日に対戦するウクライナは世界ランク8位で、ブラジルよりレベルは下がる。それだけにカズは「(ブラジルとの)引き分けを自信にするために、ウクライナとの親善試合もいい形でやりたい」と気を引き締めた。キング擁する「SAMURAI5(フットサル日本代表の愛称)」が、W杯へ総仕上げに取り掛かる。