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(写真:従来の大会記録を33秒更新した鈴木)

 5日、8月の第29回ユニバーシアード競技大会(台湾・台北)日本代表選考を兼ねた第20回日本学生ハーフマラソン選手権大会が東京・陸上自衛隊立川駐屯地から国営昭和記念公園までの20.0975kmで行われた。昨年3位の鈴木健吾(神奈川大学3年)が大会新記録の1時間1分36秒で初優勝を果たした。2位に工藤有生(駒澤大学3年)が39秒差で、3位には片西景(駒澤大学2年)が58秒差で入った。鈴木、工藤、片西はユニバーシアード代表に内定した。

 

 新春の箱根駅伝で、学生ランナーのトップクラスに躍り出た鈴木が強さを発揮した。工藤をはじめ、青山学院大学の田村和希(3年)に圧勝し、世代トップの実力を証明。かねてより目標としていたユニバーシアードの切符も射止めてみせた。

 

 鈴木は昨年もこの大会に出場し3位に入った。箱根駅伝の予選会でも1年時から3度走っている立川の地。スタート地点の自衛隊駐屯地の滑走路での表情は落ち着いて見えた。台北への“離陸準備”は万端といったところか。

 

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(写真:鈴木<19>、工藤<12>ら箱根を沸かしたランナーたちが競い合った)

 号砲が鳴らされると、併催された立川シティハーフマラソンの出場者と並んで一斉に学生ランナーたちも駆け出した。鈴木は3番手に付け、工藤らと共に先頭集団でレースを引っ張った。

 

 昭和記念公園内へ入ると徐々に隊列は崩れ、鈴木が仕掛けたのは15kmを過ぎたあたりだ。スピードに自信がない分、早めの勝負をかけた。冷静な判断だった。このまま独走すると、後続に影をも踏ませぬ走りで1時間1分36秒で逃げ切った。山梨学院大学の山中秀仁(現Honda)が2014年にマークした大会記録(1時間2分9秒)を塗り替えた。

 

 目標タイムに設定した1時間1分50秒もクリア。神大の大後栄治監督も「早い段階で勝負を決めた」と評価する。「想定したレースプランと一緒だったのでタイムがついてきたのかなと思います」と鈴木。箱根駅伝の“花の2区”で区間賞を獲ったことで「追われる立場になった」と実感する。プレッシャーも少なくなかったが、その中でもきっちりと結果を残したことで彼への評価はさらに高まるだろう。

 

 8月の台北で行われるユニバーシアードに出場することは、国際大会ということ以外にも夏のレースを経験できる点でも大きい。鈴木が将来的な目標に掲げる東京五輪は夏開催だからだ。絶好のシミュレーションの場となるユニバーシアードに対して、「個人での金メダルを目標にして、責任感を持って走っていきたいです」と意気込む。

 

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(写真:ここ最近のレースでの安定感は抜群)

 今月下旬からはニュージーランドでの日本陸上競技連盟のマラソン強化合宿に臨む。若手有望株の神野大地(コニカミノルタ)、木滑良(MHPS)の実業団ランナーと共に参加。鈴木も「まさか自分が呼ばれるとは思っていませんでしたが、実業団の方からいろいろ吸収していきたい」と前向きだ。

 

 来年にはフルマラソンに挑戦する予定。東京五輪での活躍が期待されるホープが、強さを見せつけて成長の階段をまたひとつ上ってみせた。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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