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(写真:V9を喜ぶJX-ENEOSの選手・スタッフ)

 12日、女子バスケットボールの「第18回Wリーグ・プレーオフ・ファイナル」第3戦が東京・代々木第二体育館で行われた。レギュラーシーズン1位のJX-ENEOSサンフラワーズが同2位のトヨタ自動車アンテロープスを75-51で下し、9連覇を達成した。レギュラーシーズンからプレーオフまで無敗のJX-ENEOSは第3戦も強さを発揮。第1クォーター(Q)でトヨタ自動車を5得点に抑え、17-5と12点差をつけた。第2Q、第3Qでその差をさらに広げる。終わってみれば24点差をつけての圧勝だった。

 

◇ファイナル第3戦(JX-ENEOS3勝)

 司令塔・吉田、2年連続プレーオフMVP

JX-ENEOSサンフラワーズ 75-51 トヨタ自動車アンテロープス

【第1Q】17-5【第2Q】21-14【第3Q】18-9【第4Q】19-23

 

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(写真:吉田<中央>の勝負所での決定力に加え、得意のパスも冴え渡った)

 “ひまわりの花”が逞しく代々木第二体育館に咲いた。9年連続20度目の優勝を果たした。全日本総合と合わせて2冠達成。それも無敗のまま駆け抜けた。

 

 佐賀、熊本で行われた第1戦、第2戦を連勝したJX-ENEOS。王手をかけて臨んだ第3戦はいつもと変わらないスターティングラインアップだ。ガード(G)には司令塔の吉田亜沙美とシューターのG岡本彩也花。センターフォワード(CF)の渡嘉敷来夢と間宮佑圭がツインタワーとしてインサイドにどっしりと構える。そして今季ブレイクしたフォワード(F)宮澤夕貴。5人中4人が昨夏のリオデジャネイロ五輪に出場したアカツキファイブ(日本代表の愛称)のメンバーだ。

 

 対するトヨタ自動車も4年ぶりのファイナルに燃えている。レギュラーシーズンはJX-ENEOSに次ぐ2位で通過。クォーターファイナル、セミファイナルと2勝1敗で勝ち上がってきた。元日本代表のG大神雄子に加え、F栗原三佳、ガードフォワード(GF)近藤楓というアカツキファイブのシューターを揃える。

 

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(写真:今季3Pを積極的に打つなどプレースタイルが変化した宮澤)

 ティップオフを制したのはトヨタ自動車だ。JX-ENEOSのトム・ホーバスHCが「今シーズン2回目だと思う」というほど、絶対的に自信を持っていた部分である。先手を取られ、チームに動揺が走るかとも思われたが、トヨタ自動車はスコアにつなげられなかったこともあって大事には至らなかった。

 

 そうなるとリズムに乗るのがJX-ENEOSだ。まずは吉田がジャンプシュートを沈め、先制する。吉田は岡本のスリーポイント(3P)をアシストするなど、スタートからエンジン全開といった模様。外の次は内とばかりに今度はインサイドの間宮にパスを送り、7-0とリードを広げた。嫌な流れになればそれを断ち切るようにスコアする。持ち味のチームディフェンスは冴え、相手の得点をわずか5に抑えた。第1Qは吉田の活躍もあって17-5と大きくリードを奪った。

 

 第2Qは宮澤が3Pを含め7得点。第2戦でも活躍した宮崎が3Pを2本沈める。JX-ENEOSは21得点を積み上げた。トヨタ自動車に14点は許したものの、前半のフィールドゴールパーセンテージは21.6%に封じた。38-19とダブルスコアで試合を折り返した。

 

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(写真:宮崎<32>と共に貴重なバックアップメンバーとしてチームを支える石原<25>)

 しかし、第3Qでアクシデントが起こる。渡嘉敷が栗原との接触でコートから退場。エースを欠くことを余儀なくされた。ここで渡嘉敷の穴を埋める活躍を見せたのが今季から加入したCF石原愛子だ。7得点3リバウンドとインサイドで仕事をした。第4Qは大神が3Pを4本も決める大当たりで差をつめられたが、それでも危なげなく逃げ切った。

 

 ホーバスHCは「40分間、いいバスケットができた」と胸を張り、選手たちを称えた。キャプテンの吉田も「勝ちたいという気持ちがプレーで表現できた。チーム全員が気持ちで上回った優勝」と喜んだ。14得点7アシストの吉田は2年連続3度目のプレーオフMVP受賞。今年も絶対女王の司令塔として君臨した。

 

 JX-ENEOSは昨シーズンのプレーオフファイナル第3戦から負けていない。向かうところ敵なしの印象がある。チームOGでもある大神はJX-ENEOSの強さを「誰もが点数を取れるので絞れない。1対1のディフェンスは完璧に守らないといけないし、全員が準備、判断、予測しないと戦えません」と評する。

 

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(写真:ボールに対するアグレッシブな姿勢が強固なディフェンスに繋がっている)

 今季スコアラー、シューターとして覚醒した観のある宮澤が「全員が向上心を持っている。誰が出ても強いというのはJXの強さだと思います」と口にすれば、ベンチメンバーとして全試合に途中出場した宮崎は「スタートの人たちもすごいですが、ベンチメンバーも日頃の5対5で勝ったり、負けたりと互角に戦ってきた。意識も変わって、“自分たちも出たい”“Aチームの人たちに勝ちたい”という気持ちがあったからだと思います」と語る。

 

 スターター以外にも代表候補がいるという層の厚さがあり、日頃の練習から緊張感を持ってポジションを奪い合う勢いで臨む。「もっといい選手、チームに育てたい」と話していたホーバスHCの指導の下、常に上を目指してやってきた。JX-ENEOSが頂点に立つことは必然だったのか。そう思わせるほど圧倒的なシーズンだった。

 

(文・写真/杉浦泰介)


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