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(写真:初マラソンで好走し、世界挑戦の権利を手にした安藤)

 17日、日本陸上競技連盟は8月の第16回世界陸上競技選手権大会(イギリス・ロンドン)の男女マラソン日本代表6名を発表した。女子の代表は2位に入った名古屋ウィメンズマラソンで日本歴代4位の2時間21分36秒を叩き出した安藤友香(スズキ浜松AC)、同レースで安藤に次ぐ3位の清田真央(スズキ浜松AC)、大阪国際女子マラソン優勝の重友梨佐(天満屋)。一方の男子は井上大仁(MHPS)、川内優輝(埼玉県庁)、中本健太郎(安川電機)が順当に選ばれた。

 

 東京五輪に向けて、女子長距離界にニューヒロインの誕生か――。23歳になったばかりの安藤が、そこに名乗りを上げた。初マラソンとなった名古屋ウィメンズマラソンで2時間21分36秒の快走。これは日本歴代4位の記録で、初マラソンとしては日本最高記録を更新するものだった。

 

 理事会で「満場一致」で決まった代表メンバーの中でも、唯一派遣設定記録(2時間22分30秒)をクリアした。瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの言葉を借りれば「文句なし」の選出である。

 

 両腕を下げた独特なランニングフォームも合わせて、センセーショナルな走りだったが、陣営としても驚きはなかったという。安藤を指導するスズキ浜松ACの里内正幸コーチはこう語る。

「力を出し切れれば『21分台も出せる』と本人も話していた。その力をちゃんとつけてきていたので、気持ちと身体が一致すればいけると思っていました」

 

 里内コーチが安藤の長所を「素直で負けん気の強い。常に前を向いてやれることだと思います。1回へこんでも目指すべきところに頑張れる子ですね」と口にすれば、彼女自身も「相手と勝負していく強気な面は強みです」と自負している。

 

 その強気な姿勢は名古屋のレースでも表れていた。序盤から先頭集団をリードするリオデジャネイロ五輪銀メダリストのユニス・ジェプキルイ・キルワ(バーレーン)に食らいついていった。「世界と戦うためにキルワ選手と走れるなんてラッキーなことはないので、『このチャンスを生かそう。しっかり勝負していこう』と話していました」と里内コーチは振り返る。

 

 惜しくもキルワには19秒差で敗れたものの、手応えは十分だ。「積極的に勝負していくことで自信がつきました。(初マラソンで)距離の不安もありましたが、フルマラソンで勝負していける実感を得ました」。名門の豊川高卒業後は実業団を転々とし、なかなか結果が残せなかった。14年に加入したスズキ浜松ACで里内コーチと出会った。「競技者としてだけでなく、人間としても成長できた。里内コーチがいなければ今の私はないです」。安藤はコーチとの試行錯誤の末、ようやく花開きつつある。

 

 8月の世界選手権は初出場。「積極的に勝負していくことが大切。その先のオリンピックを目指しているので、そこにつながるレースをしたい」と意気込む。世界との差は「まだまだ通用できる力はない」と口にするも、「出場するからにはメダルを意識して挑戦するつもりでやりたい」と強気な一面も覗かせた。

 

 以下代表選手は次の通り。

 

◇男子マラソン◇

井上大仁(MHPS) 初

川内優輝(埼玉県庁) 2大会ぶり3度目

中本健太郎(安川電機) 2大会ぶり3度目

※山本浩之(コニカミノルタ)

 

◇女子マラソン◇

安藤友香(スズキ浜松AC) 初

重友梨佐(天満屋) 2大会連続2回目

清田真央(スズキ浜松AC) 初

※堀江美里(ノーリツ)

 

※は補欠。所属の後の数字は世界選手権代表選出回数

 

(文・写真/杉浦泰介)